オレンジ色の口もとをした新種のサル、コンゴの森で見つかる

スポンサーリンク

コンゴの熱帯雨林の奥で、口のまわりだけがオレンジ色に染まった黒いサルが、新しい種として記載されました。学名は Colobus congoensis、現地の言葉では「リクウェリ(likweli)」と呼ばれています。アフリカで新種のサルが見つかるのは過去75年でわずか5例目という、霊長類の研究では珍しい発見です。

オレンジの口もとと黒い体毛

まず目を引くのが、その見た目です。体はつややかな黒い毛でおおわれ、肩のあたりの毛は少し長くマントのように広がっています。しっぽも長い。そのなかで、口と鼻のまわりだけがオレンジがかったクリーム色の肌になっていて、真っ黒な顔にくっきりと浮かびます。頬骨のあたりは灰色の肌、目のまわりは黒く縁取られ、耳は折りたたまれたような形をしています。

体重は約7キロと、近い仲間のコロブス類より小ぶりです。おしり側には白い毛のかたまりがあり、後ろから見ても見分けがつきます。現地には「kasaba nkoni(枝を揺らすもの)」という呼び名もあり、木の上での動きから来た名前のようです。

声にも特徴があります。低くよく響く、うなるような鳴き声を出すのですが、その音の組み立て方が、近い仲間の鳴き声とは違っていました。

発見までの経緯

最初の手がかりは2008年でした。調査隊が、見慣れない黒いサルの姿を1枚だけ写真におさめたのですが、それは不鮮明で、正体は分からないままでした。

状況が動いたのは、そこから約10年後の2018年。同じ地域で活動していた研究チームが、この動物にふたたび出会い、今度ははっきりした画像を得ます。これをきっかけに本格的な調査が始まりました。舞台になったのは、コンゴ民主共和国(DRC)の東中部、ロマミ川とコンゴ川(ルアラバ川)にはさまれた地域です。周辺のロマミ国立公園を含む一帯は、生き物の種類がとても豊かな場所として知られています。

研究チームは地元の人たちからの聞き取りも重ねました。ただ、このサルを知っている、あるいは正確に説明できた村は8つだけ。それだけ、人目につきにくい存在だったということです。2018年から2022年のあいだに記録された目撃は114回。生息域はおよそ1,700平方キロメートルと見積もられ、コロブス類としては異例なほど狭い範囲に限られていました。

新種と判断した根拠

見た目が変わっているというだけでは、新種だとは言えません。研究チームは、性質の違う3方向の証拠をそろえました。

ひとつめは遺伝子。DNAを調べた結果、既知のどの種とも異なる、独立した系統だと分かりました。ふたつめは形態です。頭骨や毛皮を博物館の標本と細かく見比べ、歯や顔の骨のつくりから、ほかのアフリカのコロブス類とはっきり区別できることを示しました。みっつめが、さきほどの鳴き声。音の構造がやはり独自のものでした。

遺伝子・骨や毛皮・声という別々の角度からの結果が、いずれも「これは知られていない種だ」という同じ方向を指した。それが、新種として記載する決め手になりました。

近縁種との意外な関係

遺伝子の解析からは、予想外のつながりも見えてきました。このサルにいちばん近い親戚は、約1,200キロメートルも離れたアフリカ中西部にすむ Colobus satanas(クロコロブス)だったのです。

しかも両者が枝分かれしたのは、およそ400万〜500万年前と推定されました。これはコロブスの仲間のなかでも、かなり古い時期の分岐にあたります。遠く離れた場所に近い親戚がいて、その別れは何百万年も前——という組み合わせは、アフリカのサルがどう進化してきたのかを考えるうえで、新しい材料になりそうです。

じつはこの研究チームは、同じロマミ国立公園の周辺で、2012年にも別の新種ザル「レスラ(Cercopithecus lomamiensis)」を報告しています。同じ一帯から、10年あまりのあいだに2種の新しい霊長類が見つかったことになります。

保全上の位置づけ

発見の喜びと同時に、研究チームは厳しい現実も指摘しています。生息域がごく狭く、個体数も少ないうえに、狩猟の圧力や生息地の減少が進んでいるためです。そこでチームは、この種を国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧(Endangered)」に分類するよう提案しています。

知られている生息地の大半はロマミ国立公園の中にあり、この地域を守れるかどうかが、そのまま種の生き残りに直結します。学術的な記録に加わったばかりの動物が、その時点ですでに絶滅の危機に近い——という、少し重たい発見でもあります。

命名にも意味が込められています。種小名の「congoensis」はコンゴ盆地にちなんだもので、研究チームは、コンゴ民主共和国そのものにちなんで名づけられた霊長類はこれが初めてとみています。名づけに関わったのは、この地を故郷とする研究者でした。

解釈上の留意点

この研究は査読を経て、オープンアクセスの学術誌 PLOS ONE に掲載されています。誰でも本文を確認できるので、気になる人は原典にあたれます。

いくつか、押さえておきたい点があります。「絶滅危惧」という位置づけは、あくまで研究チームによる提案の段階で、IUCNの正式な指定が済んだわけではありません。生息域や個体数の数字も、限られた期間の調査にもとづく推定で、今後の調査で更新される可能性があります。また「アフリカで75年ぶり5例目」「DRCにちなんだ初の霊長類」といった言い方は、あくまで現在の記録や研究チームの認識にもとづくものです。断定というより「今わかっている範囲での話」として受け取るのがよさそうです。

出典

研究論文(PLOS ONE、オープンアクセス):Colobus congoensis の記載論文

フロリダ・アトランティック大学(FAU)プレスリリース:New Species of African Monkey Discovered in the Congo Rainforest

コメント

タイトルとURLをコピーしました