初期の銀河というと、生まれたばかりの星や、ぶつかり合って形も定まらない、ぐちゃぐちゃの姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが最近の観測から、宇宙がまだ若かったころの銀河が、思っていたよりずっと「整った」形をしていて、その整った形こそが猛烈な星づくりを支えていたらしい、という話が出てきました。
コズミック・ヌーンという謎
宇宙の歴史のなかで、星がいちばん盛んに作られた時期があります。ビッグバンからおよそ20億〜30億年後のこのころは「コズミック・ヌーン(宇宙の正午)」と呼ばれ、星がつくられるペースは今の宇宙の最大100倍にもなっていました。
星は、冷たいガスが自分の重みで縮んで生まれます。ガスが銀河の合体などでかき乱されたり、中心のブラックホールに温められたりすると、星はうまく作れません。しかも、星ができるのは主に銀河の中心寄りなので、外側にある冷たいガスが、効率よく中心へと流れ込む必要があります。
ここが長らくの引っかかりでした。初期の銀河は、合体や乱流でぐちゃぐちゃに乱れていると考えられてきたからです。乱れた銀河でそんなにスムーズにガスが運ばれ、あれほど活発に星が作られたのはなぜか——その説明がうまくつかなかったのです。
予想外に整っていた初期銀河
今回の研究が示したのは、コズミック・ヌーンの大質量銀河の多くが、乱れた塊ではなく、はっきりした渦巻き腕を持つ整った円盤だった、ということです。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とNOEMAという電波望遠鏡で詳しく調べた10個の銀河は、どれも活発に星を作っていて、くっきりした渦巻き腕を持っていました。そのうち4個には、中心を横切るまっすぐな「棒(バー)」——天の川銀河の中心にもある構造——まで備わっていたのです。この時代の銀河にこうした整った形はめったにないだろう、というのがそれまでの見立てでした。予想は、いい方向に裏切られたことになります。

ガスを運ぶ腕と棒
研究チームは、この整った形が星づくりにどう効いているのかを、冷たいガスの動きから確かめました。目印にしたのは、冷たいガスに混じっている一酸化炭素(CO)が出す電波です。COをたどれば、目には見えない冷たいガスがどこにどれだけあり、どちらへ動いているかが分かります。
ガスの速度を測ってみると、多くは銀河がぐるぐる回るのに合わせた動きでした。ところが、ほぼすべての銀河で、その回転だけでは説明しきれない「余分な動き」が残ったのです。そして、その余分な動きが起きている場所は、渦巻き腕や棒の位置ときれいに重なっていました。
つまり、腕や棒が、外側にある冷たいガスを中心へと引き込むレールのような役目を果たしている、ということです。しかも、そうやって流れ込むガスの量は、その銀河が星を作るペースに見合うほど。腕と棒が運び込むガスが、そのまま星の材料をまかなっていた——ここが今回のいちばんの芯です。中心の巨大なブラックホールを育てることにもつながっているかもしれません。
「秩序だった形」と「活発な星づくり」は、無関係な偶然ではなく、〈整った腕と棒がガスをスムーズに中心へ運ぶ〉という一本の筋でつながっていた、という描像です。
観測を支えたJWSTとNOEMA
この結果は、2種類の望遠鏡を組み合わせて初めて見えてきたものです。JWSTは赤外線でとらえた鮮明な画像から、銀河の形——腕や棒があるかどうか——を読み取る役割。フランス・アルプスにあるNOEMA(北方拡張ミリ波干渉計)は、冷たいガスが出す電波を高い解像度でとらえ、ガスがどちらへどれくらいの速さで動いているかを描き出す役割です。
形の情報と、ガスの動きの情報。この二つを同じ銀河について重ね合わせたことで、「腕や棒の場所で、ガスが余分に動いている」という対応関係が見えてきました。かつてハッブル宇宙望遠鏡の時代には、初期銀河は乱れた塊に見えていました。より深く、より細かく見られるようになって、その下に隠れていた秩序が浮かび上がってきた、という流れです。
天の川銀河に似た若い銀河たち
こうして見えてきたのは、腕と棒をそなえた、私たちの天の川銀河にどこか似た若い銀河の姿です。まだ宇宙が若かったころから、銀河はこうした「大人びた」構造を使ってガスを回し、星を量産していた——初期銀河のイメージが、ずいぶん更新されることになります。
ただし、そっくり同じというわけでもありません。これらの銀河のなかをガスが動く速さは、近くの銀河よりもずっと速かったといいます。同じような形をしていても、内側では今よりはるかに勢いよくガスが循環し、星を作り続けていたようです。
解釈上の留意点
いくつか、受け取り方に注意したい点があります。
まず、2本の論文で立ち位置が違います。銀河の形を扱った論文(Espejo Salcedoほか)は、Astronomy & Astrophysics 誌に査読を経て掲載済みです。一方、ガスの流れを扱った論文(Jollyほか)は、いまのところarXivで公開されているプレプリント(査読前の段階)で、これから専門家の査読を受けます。
また、冷たいガスの動きまで詳しく調べられた銀河は10個ほどと、まだ数は多くありません。形の分類には目視での判断も含まれます。「腕や棒がガスを流している」という結論も、ガスの余分な動きが腕や棒の位置と重なる、という強い状況証拠にもとづく解釈で、流れそのものを直接見届けたわけではない点は押さえておきたいところです。
そして、これは「初期の銀河はぜんぶ整っていた」という話ではありません。合体や乱れが起きていたことは変わりません。深い赤外線観測によって、これまで見えていなかった秩序も確かにあった、と描像が一段くわしくなった——そう受け取るのがちょうどよさそうです。
出典
この記事は、Universe Today の記事(Evan Gough、2026年7月15日)をきっかけに、元になった2本の論文を確認して書きました。
- Universe Today「Spiral Arms and Bars are Galactic Fuel Pumps for Star Formation」:記事を読む
- 形態の論文:J. M. Espejo Salcedo et al., “Galaxy morphologies at cosmic noon with JWST: A foundation for exploring gas transport with bars and spiral arms”, Astronomy & Astrophysics 700, A42 (2025):論文を読む
- ガスの流れの論文(プレプリント/査読前):JB. Jolly et al., “NOEMA3D: Resolving radial gas flows in disk galaxies at z~1.1–1.6 with high-resolution CO observations”, arXiv:2604.18503 (2026):論文を読む


コメント