カシオが「チープカシオ」に歩数計とBluetoothを載せた——それでも電池は2年もつ

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カシオ計算機が2026年8月7日に発売した腕時計「F-B100W」が、海外のテクノロジーメディアで取り上げられています。英国のThe Registerが8月22日に記事を掲載し、Hacker NewsやRedditでも話題になりました。黒い樹脂バンドに小さな液晶という、いわゆる「チープカシオ」の見た目そのままに、Bluetoothと歩数計を積んだモデルです。価格は8,800円(カシオオンラインストア価格・税込)。日本ではカラー3色が発売直後から品薄になるほどの人気で、海外では55ポンドで売られています。

37年売れ続ける「チープカシオ」の系譜

F-B100Wの顔は、1989年発売の「F-91W」を受け継いでいます。F-91Wは今も新品が2,000円前後で買える定番中の定番で、世界で最も売れた腕時計のひとつとも言われるロングセラーです。日本では「チープカシオ」「チプカシ」の愛称で親しまれてきました。

この時計の身上は、安さだけではありません。電池寿命が約7年(公称値)。一度買えば、電池交換を数回はさみながら十年単位で使い続けられます。軽くて、薄くて、壊れにくくて、電池が切れない。機能は時刻表示とアラームとストップウォッチくらいですが、腕時計として必要なことは全部できる——そういう道具です。

一方、世の中の腕時計の主流は、この10年でスマートウォッチに大きく傾きました。通知が届き、心拍を測り、アプリが動く。その代わり、多くの機種は毎日か数日おきの充電が前提です。充電を忘れれば、ただの文字盤のない板になります。

Bluetoothと歩数計を足して、電池は2年

F-B100Wは、この定番デザインに現代的な機能を2つ足しました。ひとつは3軸加速度センサーによる歩数計測。その日の歩数や目標達成率を液晶画面で確認でき、1時間ごとの歩数グラフも見られます。もうひとつはBluetoothによるスマートフォン連携で、専用アプリ「CASIO WATCHES」と組み合わせると、時刻の自動修正、各種設定の変更、歩数データの記録ができます。

ここで気になるのが電池です。無線通信は電力を食うはずなのに、公称の電池寿命は約2年。使うのはCR2016という、どこでも手に入るコイン形のボタン電池1個です。充電式ではないので、毎晩ケーブルにつなぐ必要はありません。切れたら電池を入れ替えれば、また動きます(カシオはメーカーによる電池交換サービスも用意しています)。本体は厚さ8.8ミリ、重さ26グラム。歩数計とBluetoothを積んだ時計としては、拍子抜けするほど薄くて軽い仕様です。

秘密は「1日1回しか通信しない」割り切り

なぜ通信機能を積んで2年もつのか。The Registerの解説によると、答えは通信のやり方にあります。この時計は、1日の終わりに1回だけ、Bluetooth Low Energy(省電力に特化したBluetoothの方式)でスマートフォンにデータを送る。基本はそれだけだというのです。

カシオの上位モデル、たとえばG-SHOCKのG-SQUADシリーズには、スマートフォンと双方向でつながり、画面に通知を表示したり振動で知らせたりできる機種があります。便利ですが、常時つながるぶん電力を使います。F-B100Wにはそれがありません。通知は来ない。タッチパネルもない。アプリストアもない。できるのは、歩いた記録を残して、時刻を合わせて、設定を変えることだけ。

つまりこの時計の設計は、「何を足すか」ではなく「何を足さないか」で決まっています。通信を1日1回に絞ったから、電池が2年もつ。電池が2年もつから、充電の習慣そのものが要らない。機能を削った結果として成立している便利さです。The Registerはカシオの既存のBluetooth搭載モデルABL-100と比べて、F-B100Wのほうが安く、重さは半分以下だと指摘しています。同じ方向の製品を、より小さく安く作り直してきたわけです。

「スマートウォッチ疲れ」の受け皿に

日本での売れ行きを見ると、この割り切りは狙いどおり刺さっているようです。ネット上では「スマートウォッチをやめてこれにする」という声も見られます。毎日の充電、届き続ける通知、数年で交換が前提のバッテリー。スマートウォッチの便利さと引き換えに背負い込んだものを、いったん降ろしたい人は少なくないのでしょう。

もっとも、注意点もあります。約2年という電池寿命はあくまで公称値で、使い方によって変わります。歩数の計測精度や、アプリ連携の使い勝手は、これから使った人の評価が積み上がっていくところです。それでも、「賢くする」ことと「複雑にする」ことは別だ、という設計の考え方を、8,800円の腕時計がはっきり形にして見せたのは面白いところです。The Registerの筆者も、安価で、限られた仕事を確実にこなす道具への愛着を隠していません。37年前の顔をした時計が、いま改めて海外で注目されているのは、その割り切りが今の気分に合っているからかもしれません。

出典

The Register: Casio decides it’s about time the simple digital watch got a little smarter(2026年8月22日、Liam Proven)

カシオ計算機: F-B100W 製品ページ

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