トンネルを掘る機械に、発破の機能を組み込んだ——そんな一台が中国で完成しました。名前は「祥龍(シャンロン)」。直訳すると「幸運の龍」です。開発したのは、武漢にある中国鉄建重工集団(CRSIC)と清華大学のチームで、2026年8月1日に武漢の工場で完成披露が行われました。「掘削発破機(Boring and Blasting Machine、略してBBM)」という新しい呼び名がついていて、新華社は中国初、開発側や海外の報道では世界初とも紹介されています。

トンネルを掘る2つの方法
山や地下にトンネルを通す方法は、大きく分けて2つあります。
ひとつは発破です。岩盤に穴を開け、爆薬を詰めて砕く。硬い岩をまとめて壊せる力強い方法ですが、爆発を扱う以上どうしても危険が伴い、砕いたあとの断面も荒れます。壊れた岩を運び出し、崩れないよう補強してから次へ進む、という手間もかかります。
もうひとつがTBM(トンネルボーリングマシン)です。トンネルの断面いっぱいの巨大な円盤——カッターヘッドと呼ばれます——にたくさんの刃を並べ、回転させながら岩や土を削り取っていく機械です。人が爆薬を扱わないぶん安全で、断面もきれいに仕上がります。日本の地下鉄や上下水道のトンネルも、多くはこの仲間の機械で掘られています。
それなら全部TBMで掘ればよさそうなものですが、そうもいきません。TBMには苦手なものがあるからです。
硬い岩という壁
TBMの弱点は、花崗岩のような硬い岩盤です。刃を押し当てて削る方式なので、岩が硬いほど削れる量は減り、刃の消耗は激しくなります。掘るスピードは落ち、刃の交換で工事は止まり、費用はかさむ。極端に硬い岩や、砕けて不安定な岩盤にぶつかると、TBMはほとんど進めなくなることもあります。
やっかいなのは、長いトンネルでは地質がひとつではないことです。柔らかい土の区間もあれば、硬い岩の区間もある。土はTBMが得意で、硬い岩は発破が得意——なのに、工事の途中で機械を丸ごと入れ替えるわけにはいきません。柔らかい地盤と硬い岩が入り混じる場所は、どちらの方法にとっても中途半端で、トンネル工事の悩みどころであり続けてきました。
祥龍が狙うのは、まさにこの「地質が入り混じった場所」です。
カッターヘッドの中心に仕込まれた削孔装置
祥龍の見た目は、直径4.5メートルのTBMです。円盤状のカッターヘッドで削って進む、という基本は変わりません。
違うのは、カッターヘッドの中心です。ここが中空になっていて、専用の通路を通じて、岩に穴を開けるための削孔装置が顔を出せるようになっています。硬い岩にぶつかったら、この装置で切羽(きりは。掘り進む先端の岩の面のことです)に数メートルの深さの孔をいくつも開け、そこに専用の爆薬を装填して、砂や粘土でふさいでから起爆する。機械本体は防護シールドで守られていて、カッターヘッドを少し後退させた状態で爆発の力を受け止めます。
つまり、発破の設備一式を、TBMの「顔」の真ん中に組み込んでしまったわけです。

「砕く」から「ひびを入れる」への転換
ここまでなら「発破とTBMの合体マシン」で話は終わりです。でも、この機械の本当の発明は、そこではありません。爆薬の役割そのものを変えたことです。
ふつうの発破では、爆薬の仕事は岩を砕いて吹き飛ばすことです。ところが祥龍が使うのは、威力を抑えた特殊な爆薬で、狙いは岩を壊すことではありません。岩の内部に、目に見えないほど細かいひび——マイクロクラックと呼ばれます——を無数に走らせることです。
ひびだらけになった岩は、見た目は元のままでも、強度はがくんと落ちています。破片が飛び散らず、大きな衝撃波も出ないので、爆発が終わればカッターヘッドをすぐ元の位置に戻し、弱った岩を刃で削り取っていける。硬すぎて歯が立たなかった岩盤が、爆薬でひとひび入れるだけで「削れる岩」に変わるわけです。
発破で壊してから片付けるのでもなく、刃の力だけで硬い岩に挑むのでもない。爆薬を「岩を柔らかくする下ごしらえ」に使い、仕上げはTBMが受け持つ——2つの方法を並べたのではなく、役割を作り替えてかみ合わせたところに、この機械の新しさがあります。
開発側の発表によれば、この方式で掘削効率は従来のTBMより30%向上するとしています。ただしこの数字は、清華大学での試験などに基づく発表側の値で、実際の工事現場で確かめられたものではありません。
実力の検証はこれから
祥龍の最初の仕事は、河南省で建設中の揚水発電所のトンネルになる予定です。揚水発電は、電気が余っているときにポンプで水を上のダムへ汲み上げておき、電気が足りないときに落として発電する、いわば巨大な蓄電池のような仕組みで、山の中に長い水路トンネルを何本も通す必要があります。硬い岩と付き合う覚悟のいる現場で、まさに祥龍の腕の見せどころといえます。
とはいえ、現時点で分かっているのは「完成した」ということまでです。30%という数字も、地質の変化にどこまで対応できるのかも、これから現場でデータを集めて確かめる段階にあります。伝えているのが中国の国営メディアと開発側で、第三者による検証がまだない点も、頭に置いておきたいところです。
掘るのと発破するのを一台でこなす機械が、実際の岩盤を前にどんな成績を出すのか。河南省の山の中から届く続報を待ちたいと思います。
出典
China’s colossal tunneling machine bores AND blasts through raw ground(New Atlas)
Chinas erste Bohr- und Sprengmaschine rollt in Wuhan in Chinas Hubei vom Band(新華社)


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