惑星は、若い星のまわりに広がるガスと塵(ちり)の円盤の中で育つ。これは天文学の教科書なら必ず載っている話で、円盤に穴をあけて、まわりのガスをかき回しながら太っていく惑星の絵を、見たことがある人も多いと思う。ただ、その絵は長いあいだ、計算機の中のシミュレーションでしか描けなかった。
2026年9月、ドイツのマックス・プランク天文学研究所(MPIA)のチームが、この絵をそのまま観測画像にしたと発表した。舞台は地球から約430光年の若い星 WISPIT 2。チリのアルマ望遠鏡で撮った画像に、木星の約5倍の質量を持つ生まれかけの惑星 WISPIT 2b が、まわりのガスを渦のように巻き込んでいるようすが写っていた。

上の画像は想像図で、実際のアルマ望遠鏡の画像は、記事の最後に置いた MPIA のプレスリリースのページで見られる。
生まれかけの惑星が2つある星系
WISPIT 2 は、ここ1年ほどで急に注目を集めるようになった星系だ。名前は、若い星のまわりで遠くを回る惑星を探す観測プログラム「WIde Separation Planets In Time」の頭文字から取られている。
最初の惑星 WISPIT 2b が見つかったのは2025年8月。ヨーロッパ南天天文台の VLT と、同じチリのマゼラン・クレイ望遠鏡の両方で、円盤の中にぽつんと光る点として直接写った。このときすでに、水素が高温で光るときに出る特有の光(Hα線)が検出されていて、2b がまわりからガスを吸い込んで、いまも成長を続けていることがわかっていた。中心の星からの距離は約57天文単位。太陽から海王星までのほぼ2倍にあたる。
続いて2026年3月、もっと内側の約15天文単位に2つめの惑星 WISPIT 2c が見つかった。こちらは木星の8〜12倍と、2b よりさらに重い。さらに2026年8月には、中心にあるのが1つの星ではなく、ごく近くを回り合う2つの星だという研究も出ている。まだ生まれて間もない星のまわりに、巨大な惑星が少なくとも2つ。それだけでもにぎやかな星系だ。
円盤の中で成長中の惑星がはっきり見えている星系は、これが2例目になる。1例目は2018年に見つかった PDS 70b で、こちらも MPIA のチームが撮った。ただ PDS 70 の惑星たちは、自分のまわりのガスをきれいに掃除してしまっていて、惑星とガスがぶつかり合う現場そのものは見づらい。WISPIT 2b は、まだガスが濃く残っている場所にいる。惑星がガスをどう動かすかを見るには、こちらのほうが向いていた。
アルマ望遠鏡でガスの動きを撮る
2b の発見が発表されてすぐ、次はアルマ望遠鏡で見ようという流れになった。アルマは、チリのアンデス山中にある66台の電波アンテナを組み合わせて、1台の巨大な望遠鏡のように使う施設だ。アンテナを広く配置すると、直径16kmの望遠鏡に相当する細かさで像を結べる。ガスや塵が出す電波を細かく写すことにかけては、いまのところこれに並ぶものがない。
それでも、見ようとしているものは小さい。430光年先の星系で、地球と太陽の距離(1天文単位)に相当する構造を見分けるのは、5km先にある本の文字を読むのと同じくらい難しい、と MPIA のプレスリリースは説明している。
観測は2025年9月、アルマがとくに細かい像を結べる配置になっていたタイミングで始まり、同年11月と2026年3月にも追加で行われた。観測を提案したのはミラノ大学のステファノ・ファッキーニ氏のチーム。ガスの画像の解析を率いたのが、MPIA の惑星形成・系外惑星部門の所長を務めるミリアム・ベニスティ氏で、今回の論文の筆頭著者だ。ベニスティ氏は 2b の発見チームにも加わっていた。
できあがった画像には、2つの惑星がそれぞれ円盤を作り変えているようすが写っていた。内側の 2c は、自分の軌道の内側のガスを完全に掃き出して、ぽっかりと空洞を作っている。外側の 2b は、ガスを全部なくすまではいかないが、自分の軌道に沿ってすき間を掘っている。そして2つの軌道のあいだには、ガスと薄い塵でできたリングが残っていた。
いちばんの見どころは、2b の周辺を拡大した部分だ。この画像では、ガスの動きを色で表している。こちらに近づいてくるガスは青、遠ざかるガスは赤。2b の位置を見ると、片側のガスが近づき、反対側が遠ざかっている。つまり、ガスが惑星を中心にして回り込んでいる。惑星が自分の重力でまわりのガスを引き回している現場が、色の分布として写っていた。

この図も想像図で、実際の観測画像のレイアウトを参考にしたものだ。
渦だけなら前から見えていた
ここで少し意外な話になる。実は、円盤のガスがこういうふうにねじれている場所は、これまでも別の星系で何度か見つかっていた。惑星の重力でガスの流れがゆがむと、ガスの速度の地図にはっきりした「ずれ」が出る。研究者はこれを惑星の運動学的な痕跡と呼んでいて、これを手がかりに「ここに見えない惑星がいるはずだ」という研究がいくつも出ている。
ただ、どの星系でも肝心の惑星そのものは写っていなかった。だから、こうした「ずれ」が本当に惑星の仕業なのかは、はっきりしていなかった。円盤のガスは乱れやすいので、惑星がいなくても似た模様が出るのではないか、という反論もあった。
今回の WISPIT 2b は、その議論に初めて実物を持ち込んだことになる。惑星が直接写っていて、その同じ場所に、シミュレーションが予言していた形のガスの渦がある。惑星とガスの渦がセットで見えたのはこれが初めてだ。ベニスティ氏は、惑星と円盤の相互作用のシミュレーションで予言されてはいたが実際には見えていなかった渦が、ついに画像になった、と述べている。
これで、2b については「円盤がある」「惑星がいる」「惑星がガスを吸い込んで成長している」「惑星がまわりのガスをかき回している」という、惑星形成を語るときの要素が全部そろった。チームはこれを、惑星形成の最初の完全な一枚と呼んでいる。
渦は思ったより大きかった
ただし、写ったものがシミュレーションとぴったり同じだったわけではない。
論文では、2b のまわりのガスの渦は稲妻のような形をしていて、そこからの電波が、予想よりずっと広い範囲に広がっていたと報告している。惑星のすぐそばには、惑星自身を取り巻く小さな円盤(周惑星円盤)ができていると考えられていて、そこから電波が出るのは想定内だった。ところが実際には、惑星の重力が中心星の重力に勝つ範囲(ヒル圏)の全体に、電波を出すガスが広がっていた。周惑星円盤だけでは説明できない大きさだ。
チームの解釈は、いくつかの現象が重なって見えている、というものだ。惑星が円盤を進むときに後ろへ伸びる渦巻き状の波、惑星がまわりのガスを温めている効果、そして周惑星円盤。この3つが混ざり合って、ひとつの大きな光るかたまりに見えているのではないかという。どれがどれだけ効いているかを切り分けるには、ガスの速度をもっと細かく測る観測が要る、と論文は正直に書いている。
これから何がわかるのか
今回の結果がひとつあるだけでは、まだ「ガスの渦があれば惑星がいる」とは言えない。ただ、惑星つきの渦の実物が1つできたことで、惑星なしで見つかっている渦と見比べられるようになった。観測提案を率いたファッキーニ氏は、こうした観測を積み重ねることで、惑星がいる印と、そうでない模様を見分けられるようになるだろうと話している。
もうひとつ、今回の惑星はかなり遠い場所にいる。57天文単位という距離は、私たちの太陽系でいえば海王星のさらに外側で、これまでに見つかった系外惑星のほとんどは、これよりずっと星に近い。木星や土星のような、星からそこそこの距離にある巨大惑星が生まれる現場を見るには、もう一段細かい観測が必要になる。チームは、建設中の口径39mの超大型望遠鏡や、計画されているアルマの感度向上が実現すれば、10年ちょっとでそれが見られるかもしれないとしている。
太陽系の惑星がどう生まれたかは、46億年前のことなので直接は見られない。でも、いままさに惑星ができつつある星系なら、宇宙のあちこちにある。そのひとつで、教科書の絵が本物の画像に置き換わった。地味だけれど、こういう一歩のほうが、あとから効いてくる気がする。
出典
論文:M. Benisty et al., “Mapping the WISPIT 2 Planet-Hosting Cavity at Sub-Hill-Radius scales,” The Astrophysical Journal Letters, 1009, L32 (2026) DOI: 10.3847/2041-8213/aea214/arXiv:2609.04946(無料で読める版)
プレスリリース:Astronomers produce the first complete picture of (gas) planet formation in action(マックス・プランク天文学研究所、2026年9月24日。実際の観測画像はこちら)
解説記事:First Direct Image of Protoplanet Swirling Surrounding Gas(Universe Today、2026年10月1日)


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