脳科学

脳科学

0.1秒の「さざなみ」が脳の離れた場所をつなぐ——人の脳内で直接とらえた同期の瞬間

脳の中を、1秒間におよそ90回のリズムで震える、ごく短い電気の振動が走っています。「リップル」と呼ばれるもので、続く時間は0.1秒足らず。名前のとおり、水面のさざなみのような小さな揺れです。このリップルが、離れた脳の領域どうしをつなぐ「合図...
生物・動物

犬が見分けた感情、見分けられなかった感情——MRIが映した脳の反応

オーストリアのウィーン大学のチームが、起きたままの飼い犬をMRIに入れて、人の顔写真を見せるという実験をおこないました。麻酔もなし、押さえつけもなし。犬は自分でスキャナーに入り、あご置きに頭をのせて、10分ほどじっと伏せています。その状態で...
脳科学

マジックマッシュルームの成分で脳はばらばらにならない?5年がかりのNature論文が見つけた隠れた秩序

マジックマッシュルームの成分「シロシビン」を摂った脳は、活動がばらばらになって無秩序に陥る——これが、この分野で長く共有されてきた理解でした。ところが、オーストラリアのモナシュ大学のチームが5年をかけて集めた大規模な脳画像データから、その「...
脳科学

「ミニ脳」を5年育てたら、細胞が時間を記録していた

人のiPS細胞などから作る、脳に似た小さな組織——脳オルガノイド、通称「ミニ脳」。これを5年以上にわたって育て続けることに、ハーバード大学のパオラ・アルロッタ氏らのチームが成功しました。これまで公表されていた最長記録は2年弱で、通常は数か月...
医学・健康

果糖の「満腹信号」はなぜ弱いのか——脳は糖の種類を聞き分けていた

果糖とブドウ糖。どちらも身近な糖で、カロリーはまったく同じです。ところが、脳はこの2つをまるで別物として扱っていた——そんな研究結果を、米フィラデルフィアのモネル化学感覚センターのチームが報告しました。マウスの脳で空腹を駆り立てる神経細胞の...
医学・健康

症状ではなく「原因」に効く——武田のナルコレプシー治療薬、米国で承認

2026年8月5日、武田薬品工業は、ナルコレプシーの治療薬「オーゼイフル」(一般名:オベポレキストン)が米国のFDA(食品医薬品局)に承認されたと発表しました。ナルコレプシーの薬はこれまでもありました。それでもこの承認が大きなニュースとして...
医学・健康

アルツハイマー病を脳に広げていたのは、記憶のためのタンパク質だった

アルツハイマー病は、脳の一か所でとどまってはくれません。「タウ」という有害なタンパク質が神経細胞を傷めながら、隣へ、また隣へと領域を広げていく。広がるにつれて記憶の障害は重くなり、やがて命に関わります。ではタウは、どうやって細胞から細胞へ移...
脳科学

シナプスの半分が消えても記憶は残った——人工冬眠マウスが揺さぶる「記憶=つながりの強さ」説

脳のシナプス(神経細胞どうしのつなぎ目)が半分以上消えたのに、記憶はまるごと残っていた——そんな実験結果が報告されました。沖縄科学技術大学院大学(OIST)と筑波大学などの研究チームが、マウスを人工的に「冬眠」させる実験で確かめたもので、論...
脳科学

2か国語を話す脳には、文法のエンジンがひとつしかなかった

英語とスペイン語をどちらも不自由なく使える人に、脳の活動をミリ秒単位で追える装置をつけてもらう。そのうえで、画面に出た名詞を単数形にしたり複数形にしたりして、声に出してもらう。すると、どちらの言語を話しているときも、脳の同じ場所が、ほとんど...
医学・健康

てんかんの発作が脳に広がる様子を、毎秒4立体で撮る顕微鏡

てんかんの発作は、数秒のうちに脳を走り抜けていく。その広がり方を、平べったい断面ではなく立体のまま、途切れさせずに撮ることに成功したという研究が出た。米ジョージア大学のチームが作った顕微鏡で、実験魚の稚魚の脳に起きた発作を毎秒4回の立体撮影...
医学・健康

狙いにくい「タウ」を減らして進行を遅らせた、アルツハイマーの実験薬

アルツハイマー病の薬というと、この数年で承認されたものはどれも「アミロイドβ」というタンパク質を狙うものでした。もうひとつの犯人とされながら、これまで薬で減らすのがとても難しかった「タウ」を標的にした実験薬が、早期のアルツハイマー病で認知機...
医学・健康

利き手が器用なのは生まれつきではなかった——技量は練習で育つという研究

右利きの人は右手で字を書くのがうまく、左利きの人は左手でうまく書ける。この「利き手のほうが器用」という感覚は、生まれつき備わっているものだと思われがちです。ところが最近発表された研究は、その器用さのほうは生まれつきではなく、使い込んだ結果と...
科学

「指でリズムをトントン」してから聞くと、騒がしい場所で話が聞き取りやすくなる

騒がしいカフェで、向かいの人の声がどうにも聞き取れない——そんな経験は誰にでもあります。フランスの研究チームによると、話を聞く前に指でトントンとリズムを刻んでおくと、そのあとの聞き取りが良くなることがあるそうです。しかも、どんな速さでもいい...
医学・健康

練習は脳の配線を組み替える——前頭前野をバイパスして本当のマルチタスクへ

車の運転を習いはじめたころは、ハンドルもミラーも足元も、全部に気を配るだけで精いっぱいだったはずです。ところが何年か乗ると、同じ運転をしながら会話をしたり、ラジオを聞いたり、頭の中で別の考えごとをしたりできるようになる。慣れとは何が起きるこ...
医学・健康

MRIが苦手だった「眼」を撮る、人工微細構造のアンテナ

MRIは、体を切らずに中をのぞける装置として、いまの医療に欠かせない。それでも、どうしてもきれいに写せない場所が残っている。眼球とそのまわりの眼窩(がんか=眼が収まっている骨のくぼみ)、そして脳の奥のほうだ。ドイツのマックス・デルブリュック...
医学・健康

コカイン“一度きり”で、脳細胞のゲノムに残る変化

コカインをたった一度使っただけで、脳の細胞のゲノムに二週間以上残る変化が刻まれる——マウスでそんな結果が出た、という報告が出ています。ふだん依存の研究では「くり返し使ううちに脳が変わっていく」という流れが語られますが、今回わかったのは、初回...
医学・健康

星形の脳細胞が出す分子で、加齢とアルツハイマーの認知低下がやわらぐ

脳の中で神経細胞(ニューロン)を陰から支えている「アストロサイト」という星の形をした細胞があります。この細胞が出す「hevin(ヘビン)」という分子を増やしてやると、加齢で衰えたマウスと、アルツハイマー病モデルのマウスの両方で、認知テストの...
医学・健康

アルツハイマーに「抵抗する」脳がある——未成熟な神経細胞が鍵か

脳の中にアルツハイマー病の変化がしっかり出ているのに、記憶もはっきりしていて、生前は認知症の症状がほとんど出なかった——そんな人が、実は少なくないことが知られています。アルツハイマー病になった高齢者のおよそ3割が、症状を経験しないまま過ごす...
医学・健康

なぜ眠ると頭がすっきりするのか――徹夜で増える「脳のつながり」をPETで捉えた

ひと晩しっかり眠ると、なんとなく頭がすっきりする。その理由のひとつが、脳の中で起きている「配線の整理」にあるのかもしれません。起きている間に伸びて増えたシナプス(神経細胞どうしのつなぎ目)を、眠っている間に刈り込んで整える——そんな仮説が長...