【原生代の生物】カルニオディスクス – 光の届かない海底に立っていた「葉」

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名前カルニオディスクス(学名:Charniodiscus、「チャーンウッドの円盤」の意)
分類ペタロナマエ・アルボレオモルフ類(初期の動物の系統と考えられているが、詳しい位置は未確定)
時代エディアカラ紀(約5億6500万〜5億5500万年前ごろ)
発見地イギリス(チャーンウッドの森)、カナダ(ニューファンドランド島)など
全長約20〜50センチ(円盤から葉の先端まで。種と標本による)

カルニオディスクスは、エディアカラ紀の海底に固着して暮らした、葉のような形の生き物です。球根のような円盤を海底に埋めて体を支え、柄の先に付いた葉状の体を水中に立てていました。姿は海藻を思わせますが、光の届かない深い海底に立っていたため、光合成に頼る生き物ではありません。そして「チャーンウッドの円盤」という学名は、葉でも柄でもなく、根元の円盤に付けられた名前です。

光のない海底に立つ「葉」

体は3つの部分からできています。海底に体をつなぎとめる円盤、そこから伸びる柄、そして水中に広がる葉状体です。葉状体には細かい枝が規則正しく並び、先端はとがっています。イギリスの基準標本は円盤の中心から先端まで約20センチで、ニューファンドランド島からは、長い柄で葉を海底から50センチほど持ち上げていたとみられる種も見つかっています。

骨も殻もない軟らかい体だったため、化石はすべて、海底の面に残された押し跡です。ニューファンドランド島のミステイクン・ポイントでは、火山灰に一気に埋まった当時の海底面がそのまま残っており、同じ面の葉状体の化石が同じ向きに倒れてそろっています。海底の流れを受けて風見のようになびいていた集団が、立っていた向きのまま倒れて埋まったと解釈されています。

この海底は、光合成ができる深さよりずっと深い場所でした。植物や藻のように光で生きる道はなく、水中を流れてくる有機物の粒や、水に溶けた有機物をこし取る・吸収するかたちで栄養を取り込んでいたと考えられています。葉のような形は光を受けるためではなく、水と触れる面積をかせぐための形だったことになります。まわりにはチャルニアをはじめとする葉状の生き物たちが同じように立ち並んでおり、泳ぎ回る動物の姿はほとんどなく、目や口を持つ生き物もまだ現れていない、静かな海底でした。

現在の海に暮らすウミエラ(サンゴの仲間)とよく似た見た目ですが、ウミエラが現れるのはずっと後の時代で、体の成長の仕方も異なります。似ているのは偶然の一致で、直接のつながりはないとする見方が有力です。カルニオディスクス自体は初期の動物の系統に置く説が有力なものの、現生のどのグループにつながるのかは決まっていません。

図鑑の「顔」が、別属に移された

この生き物の記載は、体の一部だけから始まりました。1958年、イギリスのチャーンウッドの森で見つかった化石をもとに、トレヴァー・フォードさんが同時に2つの名前を発表します。葉状の化石にはチャルニア、同心円の円盤の化石にはカルニオディスクス。このとき円盤は、チャルニアの根元の部分ではないかと考えられており、カルニオディスクスという属名は、いわば「いかり」の部分だけを指す名前として生まれました。円盤に葉状体がつながった1つの生き物だと記載し直されたのは、1963年になってからです。

その後、オーストラリアのエディアカラの丘などから保存のよい標本が次々に見つかり、この属の種として記載されていきました。柄の先に整った葉を広げる復元図の多くはこれらの標本にもとづいており、長いあいだ、図鑑や教科書に載る「カルニオディスクスの姿」を担ってきました。

ところが2018年、立体的に保存されたオーストラリアの標本を調べ直した研究が、これらをカルニオディスクスから切り離し、いったん統合されて消えていた属名アルボレアを復活させて移しました。さらに2022年には、出発点であるチャーンウッドの森の基準標本そのものが再検討され、この属の葉状体は平らではなく円錐状に広がっていたこと、アルボレア類にある背側のシート状の構造を持たないことが示されます。この結果、カルニオディスクスに残ったのは基準種を含むごく少数の種だけになりました。長く図鑑の顔を務めてきた姿の多くは、現在の区分ではアルボレアのものです。

円盤だけの名前として生まれ、体を得て、世界中に種を増やし、その大半を手放した属ということになります。軟らかい体の押し跡しか残らないエディアカラ紀の生き物では、どの化石とどの化石が同じ生き物なのかを決めること自体が難しく、カルニオディスクスの60年余りは、その難しさがそのまま形になった歴史でもあります。

出典

チャーンウッドの森の化石を最初に記載し、チャルニアとカルニオディスクスを命名した論文:Ford, “Pre-Cambrian fossils from Charnwood Forest”(Proceedings of the Yorkshire Geological Society, 1958)

ミステイクン・ポイントの標本を計測し、この属の種を整理した研究:Laflamme, Narbonne & Anderson, “Morphometric analysis of the Ediacaran frond Charniodiscus from the Mistaken Point Formation, Newfoundland”(Journal of Paleontology, 2004)

オーストラリアの立体標本をもとに属アルボレアを復活させた研究:Laflamme, Gehling & Droser, “Deconstructing an Ediacaran frond: three-dimensional preservation of Arborea from Ediacara, South Australia”(Journal of Paleontology, 2018)

基準標本を再検討し、カルニオディスクスとアルボレアを別属と結論づけた研究:Pérez-Pinedo et al., “Charniodiscus and Arborea Are Separate Genera Within the Arboreomorpha”(Frontiers in Earth Science, 2022)

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