災害への備えといえば、これまでは地面に埋めるシェルターや、自分でこつこつ組み上げる防災設備が中心でした。フランスのスタートアップ、Momentum Technologiesが公開した「LifePods(ライフポッド)」は、その発想を少し変えて、コンテナで届いて置くだけ、という「注文できる避難カプセル」を目指しています。銃撃や爆風、火災、そして洪水や津波にも耐える設計をうたっていて、災害の多い日本から見ても気になる一台です。
ただ、後で触れるように「耐える」の中身にはまだ検証の途中の部分があります。そこも含めて見ていきます。
展示会でお披露目された避難カプセル
LifePodsは2026年6月、パリで開かれた技術見本市「VivaTech」と、防衛・安全保障の展示会「Eurosatory」でお披露目されました。開発元のMomentum Technologiesは、大規模なリスクに対する防護・生存ソリューションを手がけるフランスのディープテック企業で、精密金属加工を25年以上手がけてきたセドリック・ショファ氏が率いています。
用意されているのは性格の違う2モデルです。陸上での脅威に備える「B-01」と、水害に備えて水に浮く「W-01」。用途をきっぱり分けているのが特徴です。

陸の脅威に備えるB-01
B-01は2人用の陸上型で、銃弾・爆風・火災への耐性をうたうモデルです。高強度の技術用スチールと専用の断熱材を何層にも重ねた構造で、装甲板・気候シェルター・生存ユニットを一つの殻にまとめた、という位置づけになっています。
防弾性能については、パネル単位の試験で国際基準「VPAM PM7」を満たしたとしています。これは秒速950メートルで飛ぶ5.56×45mm弾や、秒速830メートルの7.62×51mm弾に耐えることを求める規格です。ただしこれはあくまでパネル(材料)の試験結果で、カプセル全体としての検証試験はこの先に予定されている段階。つまり「防弾」の看板は、いまのところ完成品ではなく素材について語られたもの、という点は押さえておきたいところです。B-01は量産化の段階に入ったとされています。
水害に備えて浮くW-01
もう一方のW-01は、洪水・津波・海への水没、堤防やダムの決壊といったシーンを想定した水上型です。大人4人に加えて子ども4人(子どもは大人の膝の上に座る想定)まで入れるとされ、家族での避難を意識した造りになっています。VivaTech 2026では、この実物大モデルが初めて世界に公開されました。
設計思想はシンプルで、モーターや複雑な機械仕掛けに頼らず、船体の浮力とかたちだけで安定させる「受動的な流体力学」の考え方を採っています。開発は欧州のパートナーと組んで進めており、初期の浮力試験は「非常に有望」だとしています。ただし、それを裏づける独立した第三者のデータはまだ公表されていません。
持ち運べる設計と想定ユーザー
LifePods最大の売りは、地面に埋め込む従来のシェルターと違って「動かせる」ことです。標準的なコンテナで輸送でき、保管時は積み重ねられ、場合によってはヘリコプターで空輸もできるとしています。都市部でも産業施設でも、あるいは人里離れた場所でも、すばやく展開できるという設計です。
もっとも、価格や性格づけを見ると、狙いは個人よりも組織や社会インフラ側の買い手にありそうです。B-01は重要インフラや治安部隊向け、W-01は家族向けの水害対策と、それぞれ用途をはっきりさせています。
価格の目安
両モデルとも目安の価格が公表されています。W-01は工場渡し(配送・設置は別料金)で3万5000〜4万ユーロ、日本円にすると600万円前後から。B-01はフランス国内での推奨価格が2万9000ユーロ(税込・配送設置別)で、こちらも500万円前後といったところです。
比較の材料として、津波・ハリケーン・地震を想定した球形の避難シェルターがすでに2人用で2万ドル台後半から売られており、陸上向けの持ち運べるシェルターはおおむね1万5000〜4万ドルの幅にあります。LifePodsはその中でも、多層構造で複数の脅威に一台で対応しようとするぶん、やや高めの位置づけです。
「耐える」の現在地
ここまでの華やかな見せ方に対して、Momentum Technologies自身も認めているように、本当の関門はこれからです。展示会での注目そのものではなく、B-01とW-01が正式な認証をクリアし、立派なパネルや期待を込めた浮力試験ではなく完成した一台のシステムとして機能すると証明できるか——そこが問われます。
会社としてもプレシード段階で、本格的な資金調達(シード〜シリーズA)は2026年後半から2027年前半に予定しているところ。製品としてはまだこれから育てていく途中です。防弾・耐水の看板が完成品でどこまで通用するのか、独立した検証データが出そろうのを待ちたいところです。展示会で強い印象を残しながら実物が伴わなかった製品は過去にいくつもあるので、続報を冷静に見ていくのがよさそうです。
出典
Go-anywhere survival pod fends off bullets, bombings and worse(New Atlas)


コメント