アルテミスII、有人で月をフライバイ――半世紀ぶりに人類が月へ

科学・宇宙
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2026年4月、4人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船が、月を回って地球へ帰ってきました。NASAのアルテミスIIです。人が月まで飛んだのは、1972年のアポロ17号以来、半世紀ぶりのこと。今回は月に着陸したわけではありませんが、月の裏側をぐるりと回り込み、その途中で「人類が地球から最も遠くまで到達した」記録も塗り替えました。

打ち上げから帰還までの10日間

アルテミスIIは、2026年4月1日の夕方、フロリダのケネディ宇宙センターからSLS(スペース・ローンチ・システム)ロケットで打ち上げられました。乗り込んだのは、リード・ワイズマン船長、ビクター・グローバー操縦士、クリスティーナ・コック飛行士のNASAの3人と、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン飛行士の計4人です。

まず1日ほど地球を回りながら機体の点検を進め、問題がないことを確かめてから、エンジンを噴かして月へ向かうコースに入りました。4月6日には月に最も近づき、月面から約6,545km(約4,067マイル)のところを通過。月の裏側を回り込み、そのまま自由帰還軌道と呼ばれる、月の重力を使って地球へ戻る経路をたどりました。着水は4月10日、サンディエゴ沖の太平洋。打ち上げから帰還まで、およそ10日間の飛行でした。

今回のアルテミスIIは、有人での月着陸をめざす計画の一歩手前にあたる試験飛行です。オリオン宇宙船に人を乗せて生命維持装置を実際に動かしたり、月の近くまで行って戻ってくる航法や大気圏再突入を確かめたりと、次の有人月着陸に向けた「本番前の確認」という位置づけでした。

アポロ17号以来、半世紀ぶりの有人月ミッション

人を乗せた宇宙船が月の近くまで飛んだのは、1972年12月のアポロ17号が最後でした。それから50年以上、人類は地球のまわり(低軌道)から先へは出ていません。アルテミスIIは、その空白を初めて越えた飛行ということになります。

アポロ計画との大きな違いは、使っている機材が現代のものだという点です。SLSロケットとオリオン宇宙船はこのミッションで初めて人を乗せて飛びました。NASAはアルテミス計画を、短い訪問で終わったアポロと違って、月に長く滞在できる拠点づくりや、その先の火星への足がかりにしようとしています。

地球から最も遠くへ――アポロ13号の記録を更新

アルテミスIIは月の裏側を大きく回り込んだため、その途中で地球からかなり離れました。最も遠ざかったのは4月6日で、地球から約40万6,771km(約25万2,756マイル)。これは、人を乗せた宇宙船が地球から離れた距離としては史上最長です。

それまでの記録は、1970年のアポロ13号が持っていました。アポロ13号は月着陸を予定していましたが、途中で酸素タンクの事故が起き、着陸を断念。月の重力を利用して地球へ引き返す軌道をとった結果、約40万171km(約24万8,655マイル)まで到達していました。トラブルの末に生まれた記録が56年ぶりに更新されたことになります。ちなみにアルテミスIIが飛んだ総距離は約69万マイルにのぼります。

裏側から見た月と、遠ざかる地球

アルテミスIIは月に着陸も周回もせず、裏側を一度だけ回り込む飛び方(フライバイ)でした。それでも、地上からは決して見えない月の裏側を、人の目で直接見て写真に収める機会になりました。月はいつも同じ面を地球に向けているため、裏側は探査機の画像でしか見られない領域です。

飛行士たちはアポロ時代よりずっと遠いところから月を眺めたため、裏側の全体を一度に見渡せたといいます。月面のライナー・ガンマやグルシュコ・クレーターといった地形を観測し、これまで気づかなかった茶色や青みがかった色合いに触れたことも報告されています。裏側を回っている間、月の陰から地球が沈んでいく「アースセット」の写真も撮影されました。1968年のアポロ8号が撮った有名な「アースライズ(地球の出)」を思い起こさせる一枚です。

留意点

今回のアルテミスIIは、あくまで月に着陸も周回もしない試験飛行(フライバイ)です。人を月面に降ろすのはこの先のミッションの役割で、その時期や手順は計画段階のものであり、今後変わる可能性があります。「月に人が戻った」というより、「月に人を送り届けるための最終確認を、実機で一通り済ませた」段階と受け止めておくと実態に近いです。

また、再突入時に機体を高温から守る耐熱シールドについては、事前から設計上の課題が指摘されていました。今回の飛行はその挙動を確かめる意味も持っており、無事に帰還したこと自体が一つの成果でもあります。

出典

この記事は、NASAの公式発表やミッション記録、およびBBC Sky at Night Magazineの報道をもとにまとめました。

NASAの帰還発表はこちら、ミッションの画像・記録のまとめはこちらから読めます。最遠到達記録の更新については、BBC Sky at Night Magazineの記事も参考にしました。

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