100年探された「ベテルギウスの相棒」、これまででいちばん鮮明に写る

科学・宇宙
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オリオン座の肩で赤く光るベテルギウスに、寄り添うもう一つの星が写りました。100年ほど前から「いるはずだ」と言われ続けながら、母星が明るすぎて誰も捉えられずにいた相手です。ヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリに持つ超大型望遠鏡VLTによる観測で、これまででいちばん鮮明な姿が得られました。2026年7月28日、天文学の専門誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』に論文が掲載されています。

ただし研究チームは、この天体をいまも「候補」と呼んでいます。論文のタイトルにも candidate(候補)の一語が入っています。それだけの証拠が出ていながら、なぜまだ言い切らないのか。そこも含めて順に見ていきます。

100年続いた伴星探しの経緯

ベテルギウスは赤色超巨星(せきしょくちょうきょせい)と呼ばれる段階の星です。太陽の18〜21倍ほどの重さで生まれ、いまは一生の終盤にさしかかって大きくふくらんでいます。地球から近い赤色超巨星のひとつで、この種類の星のなかでは群を抜いて詳しく調べられてきました。

その明るさは一定ではありません。大きく変わるのは2200日、420日、230日、180日というリズムで、短いほうの3つは星そのものが膨らんだり縮んだりする脈動(みゃくどう)で説明がつきます。厄介なのがいちばん長い2200日、およそ6年の周期のほうです。この長い周期の正体をめぐって、「連れの星が回っているせいではないか」という説が20世紀を通じて何度も出ては消えてきました。1980年代にも連星だという報告があり、連星カタログに名前が載ったこともありますが、いずれも独立した確認は取れずじまいでした。

見つからなかった理由ははっきりしています。母星が明るすぎるのです。赤色超巨星は表面が激しく波打っていて、そのまわりには自分が吐き出した塵(ちり)の雲が濃くまとわりついています。まぶしい光と乱れた表面のすぐ脇にある、はるかに暗い点を見分けるのは、望遠鏡の性能というより「明るさの差」との戦いになります。

明るさの長い周期の再解釈

流れが変わったのは2024年でした。2つの研究チームが、ベテルギウスの光の変化に加えて視線速度(星が近づいたり遠ざかったりする速さ)と位置のわずかな揺れを組み合わせて解析し、2200日の長い周期は伴星の公転そのものだ、という筋書きを示しました。約6年に一度、伴星が母星の手前を横切るときに、視線上の塵をかき乱して明るさを変えている、という見立てです。

この解釈が効いたのは、伴星が「いつ」「どこに」見えるはずかまで計算できる点でした。両チームの見積もりが指し示したのが、2024年12月。地球から見て伴星が母星からいちばん離れて見えるタイミング、天文学でいう最大離角(さいだいりかく)です。狙うならここしかない、という日付が初めて具体的に決まったわけです。

付け加えると、こうした長い周期を示す赤色超巨星は珍しくありません。全体の25〜30%ほどで報告されています。もしこの周期が本当に連星の公転を映しているなら、話はベテルギウス1つにとどまらなくなります。

最大離角を狙った観測

パリ天文台のミゲル・モンタルジェス氏らのチームは、この予測どおりの日付にVLTを向けました。使ったのはSPHEREという観測装置のなかのZIMPOL(ジンポル)で、可視光を担当する部分です。もともと系外惑星、つまり別の星をめぐる惑星を直接写すために開発された、明るい光のすぐ脇にある暗い天体を拾うための装置です。

観測は2024年12月3日と6日。母星の光をさえぎる遮光板(コロナグラフ)は使わず、そのかわり望遠鏡を特殊なモードで動かして、装置由来の光のにじみと本物の天体の光が別々の動き方をするように撮りました。得られた数千枚のデータから、統計的な手法でにじみだけを取り除いていきます。この処理に数か月かかっています。

モンタルジェス氏は、処理を終えた画像を見て椅子から飛び上がったと振り返っています。同氏いわく、正直なところ予測どおりの明るさなら検出できる感度はないと思っていた。写ったのは、伴星が予想より重くて明るかったからだ、と。

検出された天体の位置と明るさ

12月6日のデータに現れた点は、母星の中心から52.32ミリ秒角(ミリびょうかく)離れた位置にありました。ミリ秒角は角度の単位で、1ミリ秒角は1度の360万分の1です。52ミリ秒角というのは、1円玉を80キロ先から眺めたときの見かけの大きさに相当します。

検出の確からしさは、主に使った解析手法で6.1σ(シグマ)。もうひとつ別の手法でも約5σで同じ位置に出ました。ノイズの偶然でこうなる確率はきわめて低い水準です。2025年にジェミニ北望遠鏡(ハワイ)のスペックル観測装置で同じ位置に報告されていた暫定的な検出は1.5σでしたから、確度が大きく上がったことになります。研究チームはこの点光源をベテルギウスBと呼んでいます。

明るさは、この波長で母星のおよそ1200分の1しかありませんでした。距離を168パーセク(約550光年)とすると、投影された距離で8.8天文単位。太陽から土星までの距離より少し内側です。ベテルギウス本体の半径がおよそ3.6天文単位ありますから、伴星は星の半径の2.5倍ほどのところを回っている計算になります。恒星どうしとしては、ほとんど表面に貼りついているような近さです。

この位置関係から逆算すると、公転周期は少なくとも5.5〜5.9年。2024年の2チームが予測した5.78年・5.94年、そして明るさの長い周期である2200日(約6.02年)と、誤差の範囲でぴたりと重なりました。

ベテルギウスBの正体

では相棒はどんな星なのか。チームは、2つの星が同時に生まれたと仮定して見積もりました。ベテルギウス本体が主系列(星が安定して燃えている時期)に入ってから800万〜1050万年ほど経っていると考えられているので、伴星も同じ年齢のはずです。その年齢の星が、観測された明るさになるには何が必要か。答えは、太陽の2.6〜3.1倍の重さを持つ、表面温度1万1200〜1万2000度の青白い星でした。スペクトル型でいうとB8.5VからB9.5V、主系列に着いたばかりの若い星です。

この見積もりを裏づけたのは、むしろ「写らなかったもの」のほうです。今回の観測は2つの波長で同時に行われていて、水素が出すHα(エイチアルファ)という赤い光の波長では、伴星は検出されませんでした。生まれたての星なら、まわりに残ったガス円盤から物質を吸い込む際にこの光を強く出します。ハッブル宇宙望遠鏡の遠紫外線でも、チャンドラ望遠鏡のX線でも、伴星は見えていません。どれも「まだ生まれかけの星」なら見えるはずのサインです。つまり相棒は、生まれかけを卒業して安定期に入ったばかりの、太陽より重くて熱い星だということになります。

もともと予想されていたのは太陽と同じくらいの重さでした。実際はそれより重く、明るかった。だから見えた——皮肉なようですが、100年間見つからなかった星が今回にかぎって捉えられたのは、予想が外れていたおかげでもあります。

赤色超巨星研究への波及

この結果が効いてくるのは、ベテルギウス1つの話にとどまりません。

重い星は、そのほとんどが2つ以上の組になって生まれると考えられています。ところが赤色超巨星まで進化した段階で連星が確認できるのは20〜40%ほどしかありません。差が生じるのは、近い距離で回っていた相手とは、赤色超巨星になる前にぶつかったり合体したりしてしまうからだと見られています。とはいえ、単に見つけにくいだけという可能性もずっと残っていました。母星が明るく、表面が荒れているという、まさにベテルギウスで起きていた事情です。

今回、明るさの長い周期から予測された位置に本当に星が写ったことで、「長い周期を示す赤色超巨星は連星かもしれない」という手がかりに現実味が出ました。長い周期を示す赤色超巨星は多数見つかっていますから、これが伴星探しの新しい入り口になるかもしれません。研究チームも、視線速度の揺れや紫外線の余分な放射といった別の連星のサインと突き合わせて検証していく必要がある、と書いています。

超新星爆発との関係

ベテルギウスといえば、2019年から2020年にかけて肉眼でわかるほど暗くなり、「爆発が近いのでは」と話題になった一件を思い出す方もいるかもしれません。あのときも調べたのはモンタルジェス氏のチームで、原因は星が放出した塵の雲が視線をさえぎったことだった、という結論が2021年に『ネイチャー』で発表されています。

今回の伴星の検出は、爆発の時期とは別の話です。伴星が見つかったからといって、爆発が近づいたとか、時期が計算できるようになったということにはなりません。

そのうえで、研究者が新しく気にしはじめたことがあります。ベテルギウスはいずれ超新星爆発を起こして一生を終える星ですが、そのすぐそばを別の星が回っているなら、最期に向かう過程や爆発のしかたに何か影響を与えている可能性がある。モンタルジェス氏は、伴星が赤色超巨星の進化に影響するかどうかは本当に開かれた問いになった、と述べています。答えが出ているわけではなく、これから調べる課題が一つ増えた、という段階です。

解釈上の留意点

いくつか、慎重に受け取っておきたい点があります。

まず、研究チーム自身が「候補」という言葉を外していません。検出は6.1σと強い一方、この点光源が本当にベテルギウスの重力に捕まって回っている相手だと確定させるには、公転の半周ぶん先、つまり星の反対側に回ったところをもう一度撮る必要があります。それが済むまでは、たまたま同じ方向に見えている別の星である可能性を完全には排除できない、という立場です。先行研究では、無関係な星がこの位置にたまたま重なる確率は無視できるほど小さいと見積もられていますが、それでも実際に反対側で確認するまでは、という慎重さです。モンタルジェス氏の言葉を借りれば、疑いの余地はほとんど残っていないが、確実にするには1年後に反対側で観測する必要がある、ということになります。

次に、距離の問題があります。この記事で使った8.8天文単位という距離も、5.5〜5.9年という周期も、ベテルギウスまでの距離を168パーセクとした場合の値です。ベテルギウスの距離は昔から測りにくいことで知られていて、電波を使った測定では222パーセク(約720光年)という値も出ています。もし本当にそれだけ遠いなら、公転周期の下限は8年を超えることになり、明るさの長い周期とはうまく合わなくなります。今回の結果は「長い周期=公転」という筋書きと整合する距離のほうを支持していますが、距離そのものが確定したわけではありません。

もうひとつ、伴星の質量である2.6〜3.1太陽質量という数字は、2つの星が同時に生まれたという仮定のうえで、観測された明るさから逆算したものです。母星のまわりの塵の濃さは場所によってまちまちで、伴星の光がどれだけ減光されているかは今回のデータでは決められません。実際の幅はもう少し広い可能性がある、と論文にも書かれています。

出典

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