「エイリアン巨大構造物」で騒がれたタビー星に、巨大惑星の証拠が見つかった

科学・宇宙
スポンサーリンク

「エイリアンの巨大構造物があるかもしれない星」として、10年以上も語られてきた星があります。はくちょう座の方向、約1500光年先にある「タビー星」(KIC 8462852)。この星のまわりに、木星の10倍近い重さの巨大な天体が回っているらしい、という証拠が見つかりました。イギリス・ウォーリック大学のクリスティーナ・マドゥルガ=ファビエレスさんたちの研究で、英国王立天文学会の学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に7月6日付で掲載されています。

海外メディアの見出しには「謎がついに解けた」と踊っているものもあります。ただ、論文そのものを読むと、話はもう少し慎重です。惑星が見つかったことと、あの奇妙な減光の説明がついたことは、実はイコールではありません。

「エイリアン巨大構造物」騒動の発端

話は2015年にさかのぼります。NASAのケプラー宇宙望遠鏡が集めた大量の観測データを、市民参加型のプロジェクト「Planet Hunters(プラネット・ハンターズ)」のボランティアたちが目で確かめていたところ、とんでもない光り方をする星が見つかりました。それがKIC 8462852。発見をまとめた論文の筆頭著者タベサ・ボヤジャンさんの名から、「タビー星」と呼ばれるようになります。

何がとんでもなかったのか。星の明るさが、最大で20%も落ち込んでいたのです。

惑星が恒星の前を横切ると、そのぶん星の光がわずかに欠けます。これがトランジット法という系外惑星の探し方で、木星ほどの大きな惑星でも、太陽のような星を隠せるのはせいぜい1%程度。20%というのは、けたが2つ近く違う世界です。しかも減光は不規則で、周期性が見当たらない。惑星なら公転周期ごとに同じ形の減光がくり返されるはずなのに、タビー星のそれは深さも形もばらばらで、いつ起きるかも読めませんでした。

「これは惑星ではありえない」という点だけがはっきりしていて、では何なのかがわからない。その空白に、天文学者ジェイソン・ライトさんらが「恒星をぐるりと囲ってエネルギーを集める人工の巨大構造物(ダイソン球)が横切っているとしても、観測とは矛盾しない」という論文を出したことで、話は一気に燃え上がりました。SETI研究所が電波望遠鏡をこの星に向けて人工信号を探し(見つかりませんでした)、「宇宙人の建造物の星」として世界中のニュースになった、というのがこれまでの経緯です。

減光の正体として残った「塵」

その後の観測で、巨大構造物説はかなり分が悪くなりました。決め手になったのは、色による違いです。

もし固い板のような構造物が星の前を通っているなら、それは光を波長によらず等しく遮ります。赤い光も青い光も、同じ割合で暗くなるはずです。ところが実際に減光を複数の波長で追いかけてみると、青い光のほうがより強く減っていました。これは細かい塵(ちり)の特徴です。塵の粒は、粒径に近い短い波長の光ほどよく散乱するので、青が余計に削られる。つまり星の前を通っているのは「固いもの」ではなく「細かい塵の雲」だった、というわけです。

そこまでは絞り込めました。問題は、その塵がどこから来るのか。有力なのは、系外彗星(星のまわりを回る彗星)や、微惑星のかけらが群れをなして星に近づき、熱で壊れて塵の尾を引いている、という筋書きです。壊れかけた氷と岩の集団が、星のすぐそばをばらばらに通過していく——それなら、不規則で形もばらばらな減光を説明できます。

ただ、この説にはずっと引っかかる点がありました。彗星たちを、いったい何が星のほうへ送り込んでいるのか。

TESSが捉えた1回きりの通過

今回の研究チームは、NASAのTESS(トランジット系外惑星探索衛星)がタビー星を観測したデータを見直していました。そして、これまで誰も報告していなかった減光を1つ見つけます。2019年9月3日、約21時間にわたる減光。

この減光は、これまでのタビー星のものとは明らかに毛色が違いました。左右対称で、なめらかで、教科書に載っている「惑星が星の前を横切ったときの光の落ち方」そのものだったのです。奇妙な塵の減光ではなく、ふつうの天体が1つ、きれいに横切った跡でした。

チームは念のため、この減光を彗星のモデル(塵の尾を引いた天体が通過したとする計算)でも再現できないか試しています。結果は、うまく合わないか、合わせようとすると物理的にありえない数値が必要になるかのどちらか。素直に「大きな天体が1つ通った」と読むほうが、はるかに自然でした。

木星10個分という重さの推定

減光の形からは、天体の大きさがわかります。半径は木星の1.7倍±0.1。ずんぐりとした、木星よりひとまわり大きい球です。

重さのほうは、星のふらつきから探ります。惑星が回れば、その重力に引かれて中心の星もわずかに揺れ、星の光の波長がドップラー効果で伸び縮みする。これを測るのが視線速度法です。チームは過去に取られた観測データに加えて、新しく観測もおこない、この揺れを探しました。

出てきた値は、木星の9.4倍(誤差は+4.9/−4.1)。ただし、この検出の確からしさは2.3σにとどまります。天文学では、3σでようやく「兆候がある」、5σで「検出した」と呼ぶのが通例なので、2.3σはその手前。「たしかにありそうだが、まだ言い切れない」という段階です。論文自身も、さらに視線速度の観測が必要だと明記しています。

重さの上限のほうも見ておく必要があります。3σでの上限は木星の28倍。惑星と褐色矮星(星になりそこねた天体)の境目は、およそ木星の13倍あたりに引かれるので、9.4倍という中心値は惑星側です。ただ誤差を広くとれば、褐色矮星の可能性も消えていません。論文が「巨大惑星」と断定せず「巨大な伴天体(コンパニオン)」という言い方をしているのは、そのためです。

公転周期も、まだ絞りきれていません。トランジットが1回しか見つかっていないので、「何日ごとに回っているか」を減光の間隔から求めることができないのです。視線速度のデータからは、少なくとも約1030日(約2.8年)はかかるとわかりました。そこにケプラーや他の観測でこれまで減光が見つからなかったという情報を重ねると、ありうる周期は5つの窓に絞られます。チームは手前の2つを追加観測でつぶし、範囲をさらに狭めました。

惑星と減光をつなぐ筋書き

ここがこの記事のいちばん大事なところです。

見つかった巨大天体は、あの20%の減光を起こしている犯人ではありません。それどころか、この天体が星の前を通ったときの減光は、ごく小さくてなめらかな、ふつうのトランジットでした。20%も星を隠せるほどの大きさはありませんし、そもそも減光の形が違います。

研究チームが言っているのは、こういうことです。塵の雲が星の前を通っているという説明は、以前からある。足りなかったのは、その塵のもとになる彗星や微惑星のかけらを、内側へ内側へと送り込む「押し出し役」でした。外側を回る重い天体が1つあれば、その重力が周囲の小天体の軌道をかき乱し、星のすぐそばまで放り込むことができます。近づいた氷の塊は熱で崩れ、塵をまき散らし、不規則な減光になる。つまり今回見つかった天体は、減光そのものの原因ではなく、減光を生む仕組みを動かしている黒幕の候補だ、というわけです。

この星のまわりに「大きな天体を1つ置ける」とわかったことが、絡まった話をほどく手がかりになる——研究チームの主張はそこにあります。

解釈上の留意点

となると、「謎は解けたのか」という問いへの答えは、いまのところ「まだ」です。理由を3つ挙げておきます。

1つめ。伴天体の存在自体が、まだ確定していません。トランジットは1回、質量の検出は2.3σ。有望な候補ではありますが、確定した発見として扱うには早すぎます。

2つめ。仮にこの天体が実在したとしても、それが本当に彗星たちを星のほうへ送り込んでいるかどうかは、別に確かめる必要があります。軌道の詳細(どのくらい離れて、どんな形の軌道を回っているのか)が決まらないと、小天体をどれだけかき乱せるかも計算できません。

3つめ。タビー星をめぐる謎は、20%の突発的な減光だけではありません。数年から数十年の単位でじわじわ暗くなっているように見える、という長期的な変化も報告されていて、こちらの解釈は今も定まっていません。今回の研究は、その部分に答えを出すものではありません。

海外メディアの一部が「科学者が謎を解いた」と打っていますが、論文が言っているのは「もっとも有力な塵の説を支える、欠けていた部品の候補が見つかった」というところまでです。

決着をつける観測

研究チームは、はっきりした見通しも書いています。決め手になるのはESA(欧州宇宙機関)の位置天文衛星ガイアの次のデータ公開、Gaia DR4です。

ガイアは星の位置を極端に精密に測り続けてきた衛星で、星が伴天体に引かれてわずかに描く「揺れ」を、位置の変化として直接とらえることができます。視線速度法が星の「近づき・遠ざかり」を見るのに対して、こちらは天球上での「ふらつき」そのものを見る方法です。重い天体が回っていれば、その揺れは隠せません。

Gaia DR4は2026年12月2日に公開が予定されています。タビー星のまわりを回っているのが巨大惑星なのか、褐色矮星なのか、それとも何もいないのか。10年越しの騒ぎに一区切りがつくかもしれない答えは、案外すぐそこまで来ています。

出典

Cristina Madurga-Favieres et al., “Evidence for a giant companion orbiting Tabby’s star,” Monthly Notices of the Royal Astronomical Society, 2026(2026年7月6日オンライン公開)
https://doi.org/10.1093/mnras/stag1273

Becky Ferreira, “Scientists Solve Mystery of Bizarre ‘Alien Megastructure’ Star,” 404 Media, 2026年7月11日
https://www.404media.co/scientists-solve-mystery-of-bizarre-alien-megastructure-star/

Gaia Data Release 4(ESA)
https://www.cosmos.esa.int/web/gaia/data-release-4

コメント

タイトルとURLをコピーしました