スマホの録音を超音波でかき消す自作マイクジャマー

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スマホのマイクは、少し離れた場所のひそひそ話でもきれいに拾ってしまう。ノイズを取り除いて声だけを浮かび上がらせる処理も年々賢くなっている。その性能を逆手に取って、「近くのスマホにまともな音声を録音させない」ための自作装置が公開された。しかも人の耳にはほとんど聞こえない超音波で妨害する、という仕掛けだ。

作ったのは mcore1976 というエンジニアで、設計データやプログラムはGitHubで誰でも見られる形になっている。Hackadayが2026年7月23日に取り上げて話題になった。

装置の概要

中身はシンプルで、超音波を出す小さな部品(超音波トランスデューサー)を20〜80個ならべ、それをマイコンで一斉に鳴らす、という構成になっている。マイコンには RP2040(ラズベリーパイのマイコンとして知られるチップ)が使われ、MOSFETという半導体スイッチを介して大きな電力でトランスデューサーを駆動する。RP2040が内蔵するPWMという機能で信号の波形そのものを作り出しているのが最新版の特徴で、以前の版で使っていた専用の信号発生チップが要らなくなっている。

出てくるのは25kHz前後の超音波だ。人が聞き取れる音は上限がだいたい20kHzあたりまでなので、この装置が動いていても、そばにいる人にはほとんど何も聞こえない。それでいてスマホのマイクにははっきり作用する、というのがこの工作の面白いところになっている。

超音波で録音がつぶれる仕組み

人に聞こえない超音波が、どうしてスマホの録音を妨害できるのか。ここがこの装置のいちばんの肝になる。

マイクは本来、聞こえる範囲の音だけを拾う設計になっている。ところが強い超音波を浴びせると、マイクの部品がその高い周波数をきれいに処理しきれず、音のひずみが生じる。このひずみが、本来は聞こえないはずの超音波を「聞こえる範囲のノイズ」に変えてしまう。人の耳では起きないことが、マイクの中では起きる、というわけだ。

さらにこの装置は、超音波の周波数を一定に保たず、ランダムに小刻みに揺らしながら出している。狙いをずらし続けることで、スマホ側が「これはノイズだ」と判断して取り除くのを難しくしている。結果として、録音された音声は正体不明のガサガサした雑音に埋もれ、何をしゃべっているのか聞き取れなくなる。製作者はiPhone 17で試した動画を公開していて、装置を動かしている間は自分の声がまったく判別できないノイズにかき消されている。

製作者はスマホの自動音量調整(AGC=小さい音は持ち上げ、大きい音は抑える機能)を混乱させることも狙いに挙げている。つまり、マイクのひずみでノイズを送り込み、そこにスマホ側の音量調整が振り回されることで、声がいっそう埋もれる。ねらいどおりに効かせるには複数の要素がかみ合う必要があり、その調整の積み重ねがこのプロジェクトの本体と言っていい。

作り込みの積み重ね

このプロジェクトは一発で完成したものではなく、製作者が何年もかけて何度も作り直してきた履歴が残っている。もとになっているのはシカゴ大学の研究グループが発表した「装着型のマイク妨害装置」のアイデアで、そこから部品や回路を入れ替えながら、新しいスマホにも効くように改良を重ねてきた。

試行錯誤のなかで分かってきたことも公開されている。たとえば超音波トランスデューサーは25kHzのものがいちばん幅広い機種に効き、40kHzのものはほとんど効かない。iPhoneのような高性能な機種を相手にするには、コイルを足して電力を稼いだり、変調のかけ方を変えたりといった工夫がいる。こうした細かな知見がREADMEに書き連ねられているところに、地道な作り込みの跡が見える。

効き目の限界と扱い方

面白い装置ではあるが、万能ではない。製作者自身が、機種によって効き方が違うと繰り返し書いている。ある変調のかけ方はAndroid向き、別のやり方はiPhone向き、といった具合に、相手によって最適な設定が変わる。今回Hackadayで紹介された最新版のデモはiPhone 17で確認されたもので、あらゆるスマホで同じように効くと保証されているわけではない。

そしてこの装置は、その性質上「録音を妨げる」方向に働く。使う場所や相手によっては、盗聴対策として正当な場面もあれば、他人の正当な記録を邪魔してしまう場面もありうる。強い超音波を至近距離で長時間浴びることの影響もはっきりとは分かっていない。設計が公開されているとはいえ、どこで誰に向けて動かすのかは、作る側・使う側が慎重に考える必要がある。

とはいえ、「音を音で消す」でも「電波を止める」でもなく、聞こえない超音波でマイクだけをだますという発想は、ものづくりのネタとしてやはり刺激的だ。マイクの弱点をつく、という視点そのものが面白い一台と言える。

出典・もっと知りたい人へ

Hackaday の紹介記事:Mic Jammer Relies On Ultrasound(2026年7月23日)

製作者 mcore1976 のプロジェクト(設計データ・プログラム一式):antispy-jammer(GitHub)

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