地球から25光年先に、赤色矮星(小さくて暗い、低温の星)をまわる岩石の惑星があります。GJ 3378bと呼ばれるこの星は、2024年に見つかったときには「重すぎて生命には向かなそう」という扱いでした。ところが最新の再解析で質量と公転周期が見直され、水が液体でいられる領域にちょうど収まる可能性が出てきました。近くにある“地球に似ているかもしれない惑星”のリストに、また一つ名前が加わったという話です。

25光年先の赤色矮星をまわる惑星
母星のGJ 3378は、きりん座(カメロパルダリス)の方向、およそ25光年先にある赤色矮星です。太陽よりずっと小さくて暗く、大きさは太陽の3分の1ほど。こういう小さくて冷たい星は宇宙でいちばん数が多く、天の川銀河の星のおよそ7割を占めます。数が多いぶん、「生命がいるとしたらまずこういう星のまわりだろう」と、探査の主役になっています。
その星をまわるGJ 3378bは「スーパーアース」に分類されます。スーパーアースというのは、地球より大きく海王星より小さいサイズの惑星をまとめた呼び方で、名前に「アース(地球)」が入っていても「地球に似ている」「住める」という意味ではありません。あくまで大きさの目安です。ちなみに私たちの太陽系にはこのサイズの惑星が一つもなく、系外惑星(太陽系の外の惑星)でしか見られないタイプです。
見直された質量と公転周期
この惑星が最初に報告されたのは2024年で、そのときは重さが地球の5倍ほど(最小で約5.26倍)と見積もられていました。これくらい重いと、分厚い大気を抱え込んで、地表があったとしても生命には過酷になりがちです。
今回、ポール・ロバートソン氏(カリフォルニア大学アーバイン校)らのチームが観測データを増やして解析し直したところ、最小質量は地球の約2.3倍、公転周期は約25日から約21日へと、いずれも小さく見直されました。軽くなったことで「分厚い大気に覆われたガスがちな星ではなく、岩石でできた星」である見込みが上がり、周期が短くなったことで、母星のハビタブルゾーン(水が液体で保てる領域)の中に収まる計算になりました。星が太陽の3分の1ほどしかない小さな星なので、公転周期が地球の365日よりずっと短くても、ちょうどいい暖かさの位置に入るわけです。この惑星が母星から受ける光の量は、地球が太陽から受ける量とほぼ同じと見積もられています。
ここで一つ、数字の読み方に注意があります。今回の「地球の約2.3倍」は最小質量で、「少なくとも2.3倍、実際はもう少し重いかもしれない」という下限の値です。後で触れる観測手法の都合で、視線速度法では重さの最小値しか出ないためです。つまり「軽くなって岩石惑星らしくなった」というのは、あくまで下限が下がったという意味だと押さえておくと正確です。
星のわずかな“ふらつき”を測る手法
惑星そのものは暗すぎて直接は見えません。かわりに使うのが視線速度法という手法です。惑星が公転すると、その重力で母星がごくわずかに引っぱられ、star側が小さく前後にふらつきます。そのふらつきを光の色の変化として捉え、惑星の重さや軌道を逆算します。
今回の観測には、マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡に載る「Habitable-zone Planet Finder(HPF)」という赤外線の分光器が使われました。赤色矮星は低温で、出す光の多くが赤外線に寄っているため、赤外線を細かく測れる装置が向いています。これにキットピーク天文台のNEIDという別の高精度な装置のデータや、過去の観測を組み合わせることで、以前より精度の高い軌道モデルが得られました。研究成果は天文学の専門誌 The Astrophysical Journal に2026年6月30日付で掲載されています(査読済み)。
近いからこそ広がる観測の可能性
この発見がうれしいのは、なんといっても「近い」ことです。25光年は日常の感覚では遠いですが、天の川銀河の差し渡しが約10万光年あることを思えば、宇宙のスケールではほぼお隣です。近ければ近いほど、将来の望遠鏡で惑星をくわしく調べやすくなります。
いま建設・計画が進むジャイアント・マゼラン望遠鏡や超大型望遠鏡(ELT)、ハビタブル・ワールズ・オブザーバトリーといった次世代の望遠鏡は、巨大な鏡と強力な観測装置で、こうした惑星を直接とらえ、大気の成分まで読み取ることを狙っています。目指すのはバイオシグネチャー、つまり大気に残る生命活動の痕跡を見つけることです。GJ 3378bは、その「まず狙ってみる価値のあるご近所候補」の一つに加わった、という位置づけになります。
「宇宙の渚」に立つ惑星
ただし、ハビタブルゾーンに入ったからといって「住める」と決まったわけではありません。研究チーム自身、この惑星が宇宙の渚(cosmic shoreline)のあたりに立っていると表現しています。これは、赤色矮星のハビタブルゾーンにある惑星が、星からの強い放射で大気をはぎ取られてしまうかどうかの、ちょうど境目にあたる領域です。軌道が近いぶん、せっかくの大気が飛ばされてしまう可能性も残ります。
大気が本当にあるのか、その中身は何か、地表はどうなっているのか——こうした肝心なところは、まだ分かっていません。今回はっきりしたのは、この惑星が「調べる価値のある位置にいる」ということまでで、そこから先は次世代望遠鏡による観測を待つことになります。近いけれど、まだ結論を急がない。そういう段階の話です。
出典・参考
Paul Robertson et al., “A Revised Mass and Period for the Habitable Zone super-Earth GJ 3378b: A Planet Straddling the Cosmic Shoreline,” The Astrophysical Journal, 2026年6月30日, DOI: 10.3847/1538-4357/ae732b(論文ページ/arXiv版)
マクドナルド天文台 プレスリリース:Nearby “Super Earth” May Be a Better Candidate for Life Than Previously Thought
Universe Today:Nearby “Super Earth” Could Host Life After All


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