私たちが毎日ネットで目にしている文章のうち、けっこうな割合がAIに書かれたものらしい——。AI文章の検出を手がける米Pangram(パングラム)が、そんなデータを公開した。テクノロジーメディアの404 Mediaが2026年7月9日に報じている。目新しいのは「ネット全体にAI文章がどれだけあるか」ではなく、「人が実際にスクロールして目にした投稿のうち、どれだけがAIだったか」を測っている点だ。

「実際に見ている量」を測った調査
調べ方はこうだ。Pangramが配布しているChrome拡張機能は、ユーザーがSNSを見ている裏側で、表示された投稿がAI生成か人間の手によるものかを判定する。今回のデータは、その判定結果を研究用に共有することへ同意したユーザーぶんを集計したもの。対象はLinkedIn、Medium、Substack、X、Redditの5つで、2か月ほど(拡張機能を出した4月24日以降)で100万件(1,002,627件)を超える投稿を分析している。50語より短い投稿は最初から対象外だ。
これまでの「ネットの新規サイトの3割がAI生成」といった調査は、ネット上にAI文章がどれだけ存在するかを見積もるものだった。ただ、いくら大量にあっても、質が低くて誰の目にも触れていなければ実害は薄い。今回のように「人が実際に見た投稿」だけを数える方法だと、AIの粗製乱造コンテンツ(スロップ)がどこまで日常の閲覧に入り込んでいるかを、より直接的に映し出せる。
プラットフォームごとに割れた数字
スキャンした投稿全体の平均で見ると、AI生成と判定されたのは13.8%だった。ただし内訳は投稿の長さやサービスによって大きく違う。5つのうち4つで、長い投稿ほどAI率が高い傾向が出ており、250語を超える長文にかぎると、約4分の1(25.7%)が完全なAI生成と判定された。
もっともAI率が高かったのはLinkedInで、長文投稿の40%超が完全なAI生成だった。一方、「完全AI」と「AI補助(人の手が入った混在)」を合わせると、いちばん割合が高かったのはXの記事フォーマットで、完全に人間が書いたと判定されたのはわずか53.2%。残りの半分近くは、完全AI(23.9%)かAI補助(22.9%)のどちらかだった。長文プラットフォームのなかでAI率が最も低かったSubstackでも、AI生成・AI補助を合わせると21.9%に達している。
Redditは少し事情が違う。全体のAI率は4.4%と低いが、これはスキャンされたRedditの投稿の72%を占める「返信」の98.1%が人間の手によるものだったためだ。トップレベルの投稿だけを取り出すと11.6%がAIで、これはXの10.0%とほぼ同じ水準になる。数だけこなす自動投稿の取り締まりでは、量の少ないトップ投稿に混じったAIが網をすり抜けやすい、という指摘も出ている。
LinkedInに集中するAIコンテンツ
とくに目立つのがLinkedInだ。スキャン対象に占めるLinkedInの割合は3分の1ほどなのに、AIと判定された投稿全体で見ると、その62%——およそ3分の2——がLinkedIn由来だった。実名と結びつく仕事の場でこそ、人はAIに代弁させることをためらわない、という傾向が読み取れる。匿名で気楽な場のほうがAIは少ない、という直感とは逆の結果だ。
LinkedInは投稿画面にAIの文章作成機能を組み込むなど、以前からAIでの投稿がしやすい設計だった。同社は最近、AI生成の投稿を検出して表示順位を下げると表明したが、Pangramによれば、その表明の文章自体がAI生成と判定されたという。
数字を割り引いて読むための注意点
景気のいい数字が並ぶが、そのまま鵜呑みにはできない。まず、これはAI検出を売り物にする企業自身の集計だ。Pangramはかつてこのニュースをまとめた媒体404 Mediaに広告を出していたことがあり、その点は媒体側も明記している。
データの取り方にも偏りがある。集計対象は、AI検出の拡張機能をわざわざ入れてデータ共有に同意した人たちだ。PangramのCEOは「AIコンテンツを避けたい人ほど拡張機能を入れ、AI投稿をブロックしがちなので、平均的な利用者より目にするAIはむしろ少ないはず。だから今回の数字は下限だろう」と説明している。ただ、裏を返せば、この人たちが一般の利用者を代表しているとは限らない、という留保もつく。
加えて、AI検出そのものが万能ではない。人が書いた文章をAIと誤って判定することも、その逆もありうる。Pangramは今回使ったモデルの誤検出率を1万件に1件(0.01%)としているが、ゼロではない。「AI補助」に分類されたぶんは、下書きや編集に人の手が入った混在で、丸ごと機械が書いたものとは区別されている点も、読むときに押さえておきたい。
それでも、「ネット全体にどれだけAIがあるか」ではなく「自分が実際に見ているフィードのどれだけがAIか」という角度から数字を出した調査は、これまであまりなかった。精度や偏りの限界を踏まえたうえでも、SNSを開いて流れてくる文章のかなりの部分が、もう人の手を離れているのかもしれない——という現実の一端は見えてくる。


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