安さで広がる中国製AI、米企業のトークン利用の3〜4割超を占める

AI・テクノロジー
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米企業が使うAIのうち、中国製モデルが処理するトークンの割合が3〜4割台まで上がっている——。経済メディアのCNBCが7月7日に公開した調査報道で、そんな数字が示された。開発者向けにさまざまなAIモデルへの窓口を提供するプラットフォーム「OpenRouter」の集計をもとにしたもので、過去1年の平均が1割ほどだったのに対し、直近は継続して3割を超え、週によっては最大で46%に達したという。中身は難しくない。米国の主要モデルより大幅に安い中国製が、価格を理由に選ばれ始めた、という話だ。

利用比率の急な立ち上がり

まず前提として、トークンとはAIが文章を読み書きするときに処理する細かい単位のことで、最近はこの量がそのまま利用料の基準になる。「たくさん使う=お金がかかる」という関係だ。CNBCがよりどころにしたOpenRouterは、400以上のモデルへのアクセスを仲介しており、そこを流れるトークンのうちどこの国のモデルが使われたかを追える。

その集計によると、中国発のモデルが占める割合は、2026年2月8日を境に毎週3割を超えるようになった。1年前の平均は約1割、2025年前半にさかのぼるとわずか4.5%だったというから、半年ほどで一気に立ち上がった格好だ。2月9日から15日の週には、中国製モデルが処理したトークン量が米国製を初めて上回った、とも報じられている。OpenRouter全体を流れるトークンの量自体も、この1年で数倍に膨らんでいる。

選ばれる最大の理由は価格

なぜ切り替えが進むのか。CNBCの取材でOpenRouter側の担当者が挙げているのは、はっきりと価格だ。オープンソースで公開されている中国製モデルは、AnthropicやOpenAIの主力モデルより「6〜9割安い」水準にあるという。1トークンあたりの単価で比べると、用途によっては数倍から桁違いの差になる場面もある。大量にAIを回す企業ほど、この差は無視しづらい。

安さだけでなく、性能も詰まってきている。中国のZ.aiが6月に公開した「GLM 5.2」は、コード生成などの実力を測るベンチマークで米国の先端モデルに1ポイント差程度まで迫りつつ、価格はその数分の一とされる。開発プラットフォームのVercelでは、このGLM 5.2が2026年に登場したモデルのなかで最も速いペースで使われ始めたといい、公開後の最初の1週間で1日あたりのトークン量が約27倍、利用する顧客数が約80倍に伸びたと担当者が明かしている。

「安いモデルを既定、必要なときだけ高性能」という使い分け

この動きは、必ずしも「中国製への全面的な乗り換え」を意味しない。CNBCの取材に応じた関係者が語っているのは、もっと現実的な使い分けだ。ふだんの処理は安くて“十分よい”モデルに任せ、本当に難しい場面だけ高性能なモデルに回す——そういう振り分けが広がっている、という。

とくにAIに一連の作業を自動でこなさせる「エージェント型」の使い方では、一つの仕事のなかでモデルを何十回、何百回と呼び出すことがある。呼び出すたびに料金が積み上がるので、単価の差がそのまま効いてくる。だからこそ、量をこなす地味な処理は安いモデルへ、人の目に触れる最終的な出力や機微なデータを扱う部分は信頼できるモデルへ、と割り振る運用が理にかなう。実際に、業務トラフィックの多くを中国製モデルへ移したと公言する企業も出てきている。

数字の読み方への注意

ここで一つ、冷静に押さえておきたい点がある。「3〜4割」「ピークで46%」という数字は、どう数えるかで見え方が変わる。CNBCが示した46%は、あくまで米企業由来のトークンに絞った、ある1週間のピーク値だ。全モデルを1年通してならせば1割強にとどまる、という別の集計もある。同じ傾向を指していても、分母の取り方しだいで複数の数字が並ぶわけで、どれか一つだけを取り出すと実態より派手に聞こえやすい。

もう一つ、「利用量(トークン)のシェア」と「売上のシェア」は別物だという点も大事だ。処理されるトークンの量で見れば中国製が伸びていても、支払われる金額でみればアメリカの大手がなお大きな比重を占める、という見方もある。安いモデルに大量のトークンを流しても、単価が低ければ金額は膨らみにくいからだ。伸びていることは確かだが、「米国勢が置き換えられた」と単純化するのは早い。

両にらみで進む規制と地政学リスク

この乗り換えには、コスト以外の側面もついて回る。中国製モデルを業務に組み込むと、データの扱いや、モデルの振る舞いに学習時の判断がにじむ可能性など、企業にとって新たな検討事項が増える。米議会では、中国製AIを使う企業への調査が進んでいると報じられており、AirbnbやCursorの開発元などが名指しで取り上げられている。

一方で、供給が突然止まるリスクは中国製に限った話ではない。6月には、Anthropicが最上位モデル「Fable 5」「Mythos 5」へのアクセスを米商務省の輸出規制に対応するため一時停止し、7月1日に再開する、という出来事があった(規制自体も6月末に解除されている)。移行の猶予がないまま止まった影響で、米企業のあいだで中国製モデルの利用がさらに増えた、とする報道もある。加えて中国側でも、高度なモデルの海外向け提供を絞る枠組みが検討されていると伝えられており、どちらの政府の判断でも供給が揺れうる状況になりつつある。安さという足元の利点と、この不安定さをどう天秤にかけるかが、各社の判断どころになっている。

まとめると、価格を軸に「安いモデルを既定にして、必要なときだけ高性能へ」という運用が広がり、その受け皿として中国製モデルの利用が急速に伸びた、というのが今回の調査が映した構図だ。ただし数字は数え方で幅が出るうえ、規制や地政学の事情でいつ流れが変わってもおかしくない。しばらくは、性能・価格・供給の安定性を見比べながら使い分けを探る動きが続きそうだ。

参考:CNBC「Chinese AI models are gaining ground with U.S. companies as OpenAI, Anthropic costs surge」(2026年7月7日)

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