恐竜を滅ぼした小惑星は、太陽系でも珍しい「変わり者」の石だった

古生物学
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恐竜を滅ぼしたのは巨大な小惑星だった——ここまではよく知られています。では、その小惑星が「どんな石だったのか」までは、意外とはっきりしていませんでした。今回、地層に残ったわずかな痕跡から、その正体が太陽系でもかなり珍しいタイプの石だった可能性が高い、という研究がまとまりました。しかも、その特殊な中身が「なぜ地球があれほど寒くなったのか」という長年の疑問にもつながってくる、という話です。

衝突の概要

いまから約6600万年前、直径10〜15キロほどの小惑星が、現在のメキシコ・ユカタン半島の沖合に落ちました。時速にしておよそ6万4000キロ。差し渡し約200キロの巨大なクレーター(チクシュルーブ・クレーター)を残し、鳥をのぞく恐竜をはじめ、地球上の生物種のおよそ75%が姿を消したとされています。

この「巨大な石がぶつかって絶滅が起きた」という筋書きは、もう定説と言っていいものです。ただ、ぶつかった石そのものが太陽系のどこから来た、どんな種類の石だったのかは、長らく決め手を欠いていました。衝突の瞬間に小惑星はほぼ丸ごと蒸発してしまい、直接調べられる破片が残っていないからです。

地層の粘土から正体を探る手法

手がかりになったのは、世界中の地層にうっすら残る一枚の粘土の層です。衝突の年代(白亜紀と古第三紀の境目、K-Pg境界と呼ばれます)にあたる薄い層には、蒸発した小惑星のごくわずかな成分が、地球じゅうに降り積もった形で混じっています。

研究チーム(カナダのブリティッシュコロンビア大学、パリ、ブリュッセル、ウィーンの研究者ら)は、デンマーク・スペイン・イタリアで長年かけて集めたこの境界粘土を使い、ニッケルという金属の「同位体」を高い精度で測りました。同位体=同じ元素でも重さがわずかに違う仲間のことで、その混じり具合は石の生まれた場所や種類によって少しずつ変わります。いわば石ごとの「指紋」のようなものです。

この指紋を、地球にこれまで落ちてきた11種類の炭素質隕石(炭素を多く含むタイプの隕石)と照らし合わせました。すると、いちばんよく一致したのが「COコンドライト(オルナンス型炭素質コンドライト)」と呼ばれる、かなり珍しいタイプだったのです。

COコンドライトという珍しい石

コンドライトは、太陽系ができたころの物質をほとんど溶かさずに残している、古い石のグループです。その中でも炭素質コンドライトは、地球で見つかる隕石全体の5%ほどしかありません。COコンドライトはさらにそのごく一部。太陽系の初期の姿をほぼそのまま留めている、いわば「手つかず」の石と言われています。

研究に加わったフィリップ・クレイス氏は、博物館でよく見かける普通の隕石とはまるで違うタイプだ、と説明しています。「これほど珍しく、遠くから来た石にぶつかられたこと自体が、恐竜たちの不運を物語っている」というわけです。

寒冷化の主犯は硫黄より塵

今回の結果は、絶滅後に地球が寒くなった仕組みについての見方にも関わってきます。

これまでは、小惑星そのものに含まれる硫黄が大気に大量に放出され、それが太陽の光をさえぎって地球を冷やした、という説が有力でした。ところがCOコンドライトは、炭素・亜鉛・水、そして硫黄といった「揮発しやすい成分」が、ほかのタイプの隕石よりずっと少ないのが特徴です。

つまり、ぶつかった石にはそもそも硫黄があまり含まれていなかった可能性が高い。だとすると、地球を暗く冷たくした主な原因は、小惑星の硫黄ではなく、衝突で砕けて舞い上がった地球側の岩石の細かい塵のほうだった——という見立てになります。硫黄が「決め手」だったという従来の考えは、少し後退することになります。

どこから来たのか

石の種類はかなり絞り込めた一方で、「どこから来たのか」はまだ大きな謎のままです。有力な候補として挙がっているのは、太陽系の外縁側にある岩の破片が多い領域や、木星に近い小惑星帯の外側あたり。いずれも地球から見ればかなり遠い場所です。

研究チームは、この小惑星がもともと大きな天体の一部が砕けてできた破片だったのではないか、とも考えています。直径10〜15キロという大きさは、内部が金属の核と外側に分かれる(分化する)ほどの熱を保つには小さすぎるため、より大きな母天体のかけらだった、と見るほうが自然だからです。

解釈上の留意点

ここは冷静に押さえておきたいところです。今回の「COコンドライトらしい」という結論は、蒸発した小惑星そのものを手に取って調べたわけではなく、地層に残ったニッケル同位体という間接的な証拠から推定したものです。研究チーム自身も「likely(可能性が高い)」という慎重な言い方をしています。石の生まれ故郷が特定できていないことも含め、これで話がすべて決着したわけではありません。

とはいえ、「巨大な石がぶつかった」で止まっていた話が、「その石はこういう種類で、だから寒冷化はこう起きたらしい」というところまで一歩踏み込めたのは確かです。恐竜が滅んだあの日の空を、もう少し解像度高く思い描けるようになった、と言えそうです。

出典・もっと知りたい人へ

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