自動運転タクシーが、騒いだ10代を警察に“通報”した話

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「保護者のみなさん、お子さんの居場所を知っていますか? Waymoは知っていますよ」。米カリフォルニア州のサンマテオ市警が、そんな一文をSNSに投稿した。自動運転タクシーに乗っていた10代2人が、車から報告を受けた警察に取り押さえられた——という一件だ。走る車が、車内の様子を見て警察に電話をかけた、という部分に、多くの人が引っかかったらしい。

車内で起きていたこと

サンマテオ市警の投稿によれば、月曜の午後、15歳の2人がWaymoの車内で酒を飲みながら「発砲」していた、とWaymo側が通報してきた。警官が車を止めて2人を車外に出したところ、彼らが撃っていたのはオービーズ(水を吸って膨らむ樹脂のビーズ)で、黒く塗られたおもちゃの銃から発射していたことが分かった、という。404 Mediaが報じている。市警が公開した写真には、黒塗りされた水ビーズ用の玩具銃と、オレンジ色のビーズを詰めた飲料ボトルが写っていた。

市警はこう書き添えている。飛んでくる物を高速でぶつければ実害が出うるし、未成年の飲酒も問題だ。ただ「Waymoを選んだのは、今日いちばん賢い判断だったかもしれない。酔って自分で運転していたら、事態はもっと悪くなっていた」——皮肉まじりの物言いだが、言い分そのものは筋が通っている。2人は逮捕されず保護者に引き渡され、開栓済み容器(飲酒)に関する扱いを検察が検討している、と地元局のNBC Bay Areaは伝えている。

遠隔で見張られていた車内

気になるのは、Waymoがどうやって「発砲」に気づいたのか、という点だ。地元局の報道をまとめると、車内カメラの映像を遠隔で見ていた係員が、黒い銃のようなものが撃たれていると判断し、本物の銃器の可能性があるとして911に通報した。そのうえで係員は、乗っている10代に「車に不具合が出たので止まる必要がある」と伝え、実際には車を遠隔で停止させて、警察が到着するまで2人を車内にとどめておいた、という流れだ。到着した警官は本物の銃を想定した高リスクの対応を取り、銃を構えて車に近づいた。

Waymoを運営するのはグーグルで、同社のサポートページには、サポートチームが「一定の状況下で映像を確認することがある」「より緊急性の高い状況では、走行中のライブ映像にアクセスすることがある」と書かれている。つまり車内には常時カメラとマイクがあり、必要と判断されれば、いま走っている車の中の様子を遠くから見られる仕組みになっている。今回はその機能が、そのまま使われた。

走る監視カメラという側面

自動運転タクシーは、乗客を運ぶ乗り物であると同時に、常に車内外を記録し続けるセンサーの塊でもある。カメラ、マイク、位置情報がまとまっていて、遠隔で映像を見て、車を止めて、その場所を警察に伝えて、乗員を降りられなくすることまでできる。今回の件は、その一連の能力が実際に動くとどうなるかを、分かりやすく見せた例だと言える。

もちろん、記録があること自体はタクシーやバスの車内カメラと変わらない。違うのは、運転席に人がいない代わりに、遠くにいる係員がいつでも中を覗け、車そのものを操作できるところだ。乗客からは、いま誰かが見ているのかどうかが分からない。この「見られているかもしれない」状態が常に続くことを、監視社会の論点として気にする人は少なくない。

今回は役に立った、その先の問い

この一件が扱いにくいのは、監視が悪い方向にだけ働いたわけではない、という点だ。おもちゃの銃でも、黒く塗られていれば、撃たれた側は本物と区別がつかない。走る車から何かを撃たれれば、周りは一瞬で身構える。酔ったまま自分で運転するより、はるかにましだったのも確かだ。今回に限れば、車が中を見ていたことで、より悪い結末が避けられた側面はある。

ただ、同じ能力は、良い場面だけで発動するわけではない。何を「通報に値する」と見なすか、どこまでの映像を、誰が、どんなときに見るのか。その線引きは、乗る側ではなく運営会社と当局の側にある。サンタクララ大学マルクラ応用倫理センターでインターネット倫理を担当するイリーナ・ライク氏も、地元局の番組でこの点を論じている。サービスを使う以上、規約に同意し、カメラやセンサーの利用を受け入れているのは事実だが、その事実と、実際にどう運用されるかは別の問題だ。

自動運転タクシーは、これからさらに街に増えていく。便利さと、常に記録され遠隔で見られうること——その両方を同じ乗り物が抱えている。今回の騒ぎは笑い話のように広まったが、その裏で「走る車が中の人を見て警察を呼ぶ」という状況が、もう普通に起こりうるところまで来ている。そのことを、頭の片隅に置いておいてもいいのだと思う。

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