アンドロメダ銀河の周りに、これまで見つかった中でも指折りに暗い矮小銀河が見つかった。どれくらい暗いかというと、今回の観測で星として数えられたのは、わずか46個。ふつうの銀河が数百億から数千億の星を抱えることを思えば、桁がまるで違う。名前は「Andromeda XXXVI(アンドロメダ36番目、And XXXVI)」。宇宙のごく初期に生まれ、それきりほとんど変わらずに残ってきた「生き残り」だと考えられている。
超微光矮小銀河という存在
矮小銀河は、その名のとおり小さくて暗い銀河のことだ。中でもとりわけ暗いものは「超微光矮小銀河(UFD=ultra-faint dwarf galaxy)」と呼ばれる。宇宙で知られている銀河の中では、いちばん小さく、いちばん暗く、含まれる重い元素もいちばん少ない部類に入る。
UFDが天文学者に注目されるのには理由がある。ひとつは、これらの銀河にある星の大半が、宇宙の歴史のかなり早い時期にまとめて生まれ、その後はほとんど新しい星を作らずに来たとみられること。いわば、生まれたての宇宙の姿をそのまま冷凍保存したような天体で、初期の銀河がどう形づくられたかを調べる手がかりになる。もうひとつは、星の重力だけでは説明がつかないほど、正体不明の物質「ダークマター(暗黒物質)」に強く支配されていること。UFDがどこにどれだけあるかを数えることは、ダークマターの分布を調べる手立てにもなる。

星46個という極端な暗さ
今回のAnd XXXVIは、その中でもかなり極端な部類にあたる。研究チームがアンドロメダ銀河(M31)の距離を仮定して見積もったところ、明るさは絶対等級でおよそマイナス5.9等。太陽の約1万9千倍ほどの光しか出しておらず、これはアンドロメダの周りでこれまでに見つかった矮小銀河の中でも、最も暗い部類に入る。半径(星がその内側に半分収まる大きさ=半光度半径)は約64パーセク、光の年数に直すとおよそ200光年ほどで、天体としてもこぢんまりしている。形はほぼ真円に近い。
星の集団としての年齢はおよそ125億年、含まれる重い元素の量(金属量)も非常に少ないと見積もられた。宇宙が生まれてまだ間もない頃にできた、古くて素朴な星の集まり——という描像とよく合う。
アマチュア天文家の目から始まった発見
この銀河が見つかった経緯も面白い。最初の手がかりを見つけたのは、イタリアのアマチュア天文家ジュゼッペ・ドナティエッロさんだ。アンドロメダ周辺をくまなく撮影した公開サーベイ「PAndAS(パンドロメダ考古学サーベイ)」の画像を、一枚一枚じっくり目で確かめていく中で、星がわずかに集まって濃くなっている場所に気づいた。こうして11個の候補が挙がり、そのうち特に見込みのある2つが、大型望遠鏡での追観測に回された。今回の論文は、その片方についての結果だ。
追観測に使われたのは、スペイン・カナリア諸島にある口径10.4メートルのグラン・テレスコピオ・カナリアス(GTC)。世界最大級の光学望遠鏡のひとつだ。この銀河はあまりに淡いため、SDSSやPan-STARRSといった従来の広域サーベイの画像にはほとんど写っておらず、PAndASの深い画像でようやく気配が見え、GTCの観測で初めて個々の星として分解できた。裏を返せば、これだけの大望遠鏡を向けてやっと星の集まりだと確認できるほど、うっすらとした天体だということでもある。
投影上の位置を見ると、And XXXVIはアンドロメダから約119キロパーセク(約39万光年)離れたところにある。アンドロメダの重力が及ぶ範囲(ビリアル半径、およそ260キロパーセク)の内側にあたるため、アンドロメダにつなぎ留められた伴銀河(衛星銀河)である可能性が高い。
「氷山の一角」を数える意味
暗くて数えるのも一苦労な銀河を、なぜそこまでして探すのか。鍵になるのが、標準的な宇宙論のモデル「ラムダCDM(ΛCDM)」の予測だ。このモデルに従えば、アンドロメダのような大きな銀河のまわりには、こうした小さな伴銀河が数百個も付き従っているはずだとされる。ところが、そのほとんどはあまりに暗くて、これまで見つけられずにいた。
研究では、アンドロメダは最大でおよそ92個の矮小銀河を抱えていると予測されるのに対し、現在確認できているのは43個ほどにとどまる、と見積もられている。つまり、半分近くがまだ見つかっていない計算になる。And XXXVIのような一例を地道に積み上げていくことは、この「予測と実測の差」を埋め、宇宙論のモデルが本当に正しいかを確かめる作業そのものになる。発見をリードしたホアンナ・サコフスカさんは、こうした極端に暗い銀河は、はるかに大きな集団の“氷山の一角”を見ているにすぎないのかもしれない、と述べている。
もうひとつ、時期的な事情もある。これから稼働する大型の広域サーベイ望遠鏡は、天球上の位置の都合でアンドロメダを観測しない見込みだ。そのため、すでに撮りためられた画像を大型の地上望遠鏡や宇宙望遠鏡で丁寧に追観測していくやり方が、当面はアンドロメダ周辺を深掘りする有力な手段であり続ける。そして今回のように、人の目による地道な見直しが、自動処理や機械学習による探索を補ってなお効くことも示された。
解釈上の留意点
いくつか、慎重に受け取っておきたい点がある。まず距離については、この銀河までの正確な距離を決める手がかりとなる特定の種類の星(水平分枝星)が今回は見つかっておらず、アンドロメダと同じ距離にあると仮定したうえでの見積もりになっている。年齢や金属量も、星の分布を古い星の集団のモデルに当てはめて求めた推定値で、確定した測定値ではない。明るさや大きさといった値も、距離の仮定に依存して動く。伴銀河であることや、初期宇宙の化石と呼べるかどうかをはっきりさせるには、今後さらに深い分光観測や、ハッブルのような宇宙望遠鏡による追加のデータが必要になる。とはいえ、この成果は査読を経てAstronomy & Astrophysics誌に正式に掲載されており、アンドロメダの暗い伴銀河の一覧に、確かな一例を書き加えたことは間違いない。
出典
研究論文(Sakowska et al., 2026, Astronomy & Astrophysics, 710, A342):https://doi.org/10.1051/0004-6361/202660151
Universe Today:Andromeda’s Newest Dwarf Galaxy is Extremely Dim
Phys.org:Ultra-faint galaxy discovered near Andromeda may be 12.5 billion years old


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