「ダイソン球」の探し方に新しい手がかり——狙うべきは赤色矮星と白色矮星

科学・宇宙
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もし宇宙のどこかに、恒星をまるごと囲って光を残らず集める「ダイソン球」を築いた文明がいたとして、私たちはそれをどこの、どんな星のまわりで探せばいいのか。この問いに具体的な狙い目を示した研究が、査読を経て学術誌『Universe』に載りました。答えは、赤色矮星(せきしょくわいせい)と白色矮星(はくしょくわいせい)。銀河のなかでも暗くて小さい、この2種類の星がもっとも有望だといいます。しかも、そこにダイソン球があれば望遠鏡にどう映るかまで見積もっています。

ダイソン球という仮説

ダイソン球は、物理学者フリーマン・ダイソンが1960年に提案したアイデアです。高度に進んだ文明はエネルギーをどんどん欲しがるはずで、いずれは自分たちの恒星の出す光をまるごと受け止める巨大な構造物を作るのではないか——という発想でした。あくまで仮説上の構造物で、実在が確かめられたものではありません。

ただ、当初イメージされた「星をすっぽり包む一枚の固い殻」は、現代の計算では現実味がありません。小さい星のまわりでさえ、それだけの材料をそろえるのは無理があるためです。そこで今は、独立した無数の集光パネルが星のまわりを群れになって回る「ダイソン球群(ダイソン・スウォーム)」の姿で考えるのが主流になっています。

こうした人工の巨大構造物は、宇宙人が残す「技術の痕跡(テクノシグネチャー)」の一種として、地球外知的生命の探索でくり返し取り上げられてきました。今回の研究は、その探索を実際の観測につなげるための道しるべを示そうとしたものです。

有望な標的は赤色矮星と白色矮星

研究では、ダイソン球を築く相手として2種類の星に注目しています。ひとつは赤色矮星。太陽より小さくて温度が低い、赤っぽく暗い星です。もうひとつは白色矮星。太陽くらいの星が燃料を使いきったあとに残す、小さく高密度の「燃えかす」の芯です。

この2つが選ばれた理由は、大きく「たくさんある・長生きする・小さい・暗い」の4点に整理できます。順番に見ていきます。

標的に選ばれた理由

まず数の多さ。赤色矮星は天の川銀河でもっともありふれた星で、全恒星のおよそ7割を占めるとされます。探す対象が多いほど、当たりにたどり着ける見込みも上がります。

次に寿命の長さ。赤色矮星は燃料を非常にゆっくり使うため、寿命は兆年(1兆年=1万億年)の単位になります。宇宙が生まれてからまだ約138億年しか経っていないことを思えば、けた違いに長い。白色矮星も、冷えていく過程で何十億年ものあいだ安定して光を出し続けます。文明が長くエネルギーを取り出す相手としては、途切れない電源のような存在です。

三つめは小ささ。星が小さいほど、それを囲う構造物も小さくてすみ、必要な材料が減ります。赤色矮星の場合、生命が液体の水を保てるような距離(およそ0.05〜0.3天文単位。1天文単位は地球と太陽の間の距離)はかなり星の近くにあり、そこにコンパクトに構造物を築けます。白色矮星はさらに極端で、太陽の100分の1ほど(地球くらいの大きさ)まで縮んでいるため、表面から数百万kmという至近距離に球を作れます。太陽系でいえば惑星の軌道よりずっと内側で、その分だけ建造のハードルが下がる計算です。

四つめは暗さ。これは観測する側の都合です。星そのものが暗いほど、構造物が出す「余った熱」との明るさの差がはっきりし、痕跡を見つけやすくなります。とくに白色矮星は素の光がとても単純で、余計な赤外線をほとんど出しません。だから何か余分な赤外線が見えたら、それだけで「怪しい」と気づける——というわけです。

望遠鏡に映る姿と見分け方

この研究のいちばん面白いところは、ダイソン球があれば星がどう「見え方を変える」かを具体的に示した点です。

星を囲う構造物は、恒星の光をほぼ全部吸い込みます。そのエネルギーを文明が使ったあと、余った分は熱として宇宙へ捨てられます。このとき出てくるのが赤外線です。エネルギーの総量そのものは変わらないので、星が本来出すはずだった可視光は消え、代わりに冷たい赤外線でぼうっと光る天体に化けます。

星の性質を「表面温度」と「明るさ(全波長を合わせた総量)」で整理したものに、HR図(ヘルツシュプルング・ラッセル図)という散布図があります。ダイソン球でおおわれた星は、この図の上で明るさはそのままに、温度だけがぐっと低い側へ移動します。どのくらい低いかというと、たとえば表面温度が約3000K(Kはケルビン。絶対温度の単位で、0Kは約−273℃。目盛りの幅は℃と同じ)の赤色矮星なら、囲う構造物の見かけの温度は50Kほど、およそ−220℃まで下がりうるといいます。もとの星の数十分の一という冷たさです。

ここが決め手になります。自然にできた本物の星で、HR図のこんな「低温すぎる」場所に居座るものは知られていません。だからそこに何かが見つかれば、それだけで調べる価値のある候補になります。

見分ける手がかりは温度だけではありません。ふつうの星のまわりには塵(ちり)の円盤があり、そこから特有の赤外線(10マイクロメートルあたりのケイ酸塩の信号)が出ます。ところが人工の集光パネルには塵がないので、この信号が抜け落ち、スペクトルが不自然なほど「きれい」になります。さらに、パネルが群れとしてすき間を空けながら回っていれば、星の明るさが自然界ではありえない不規則な形でちらつく可能性もある。温度・塵の有無・明るさの揺れ方——この3点セットが、天然の現象と技術の痕跡を切り分けるものさしになります。

今後の探索と既知の候補

こうした冷たい赤外線をとらえるのは、赤外線観測を得意とするジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の得意分野です。古株のWISEのような赤外線望遠鏡も探索に使われています。研究では、ガイア(Gaia)やTESSといった星のカタログ、2MASSやWISEの赤外線データから近くの赤色矮星・白色矮星を洗い出し、あやしい赤外線超過を絞り込んでJWSTで確かめる、という現実的な段取りも示されています。

実際、候補とされた星がないわけではありません。2024年5月には、約500万個の星を調べた「プロジェクト・ヘファイストス」が、赤色矮星を中心に7個の有望なダイソン球候補を報告しました。うち1つは、背景にたまたま重なった超大質量ブラックホールが原因だとわかって外れましたが、残る5つは今も追加観測に値する候補として残っています。もちろん、どれもダイソン球だと確認されたわけではありません。

解釈上の留意点

くり返しになりますが、ダイソン球はまだ仮説上の構造物で、見つかった実例はひとつもありません。今回の研究も、実物を発見したわけではなく、「もしあれば、どんな星のまわりで、どう見えるはずか」を計算で見積もった理論的な短報です。探索の指針としては有用ですが、それ自体が存在の証拠になるものではありません。

候補とされる赤外線の異常も、実際にはたいてい自然な理由で説明がつきます。星のまわりの塵の円盤や、背景の別天体との重なりなどです。過去の候補も、そうやってひとつずつ吟味されてきました。何か変わった赤外線が見えても、まずは自然現象を疑うのが天文学のふつうの手順です。

もうひとつ、この研究は「ダイソン球を建てるのに都合がよい星」を論じたもので、「そこに生命が住みやすい」という話ではない点にも注意が必要です。論文自身も、生命の居住可能性は別の条件(星の重力など)で決まるもので、今回は評価していないと断っています。エネルギーの取り出しやすさと観測での見つけやすさ、あくまでその2点についての「有望さ」だと受け止めるのがよさそうです。

出典・参考リンク

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