1980年代にウルグアイ川のほとりで見つかり、そのまま博物館の収蔵庫で眠っていた2個の尾の骨。それが40年ほどの時を経て、新種の巨大恐竜として学名を与えられた。記載したのはウルグアイの研究チームで、名前は Mesetasaurus protector(メセタサウルス・プロテクトル)。ティタノサウルスの一員で、白亜紀後期の南米に暮らしていた竜脚類(りゅうきゃくるい)だ。
断片的な標本なので、話としてはずいぶん地味に聞こえる。ただ、この恐竜はウルグアイという国から見つかった2例目の固有種にあたる。尾の骨だけからでも、南米の恐竜たちがどこで暮らし、どう行き来していたのかの手がかりが引き出せる。そこがこの記載のいちばん面白いところだ。

ティタノサウルスとアエオロサウルス類
ティタノサウルスは、長い首と尾を持つ大型の草食恐竜「竜脚類」のなかの一大グループだ。白亜紀後期(およそ1億年前から6600万年前)にもっとも栄えた竜脚類で、とくに南米で数十もの属が見つかっている。恐竜時代の最後まで生き残った竜脚類は、事実上このティタノサウルスだけだった。
そのなかで、今回の新種が属するのがアエオロサウルス類(Aeolosaurini)というグループ。白亜紀後期の南米に固有のまとまりで、尾の骨(尾椎=びつい)の形に独特のクセがある。尾が前のほうへ傾く特殊な形をしていて、この特徴のおかげで尾の骨だけでも「アエオロサウルス類だ」と見分けやすい。骨の形が時代や地層の目印として使えるほど、はっきりしているという。今回の記載も、まさにその尾の骨が決め手になった。
尾の骨2個から見つかった新種
標本になったのは、ウルグアイ北部パイサンドゥ県にある「メセタ・デ・アルティガス」という場所で1980年代に採集された2個の尾椎。赤みを帯びた砂岩の小さな露出に、寄り添うように並んで埋まっていたことから、同じ1頭の個体のものと考えられている。FC-DPV 3740A・3740B という番号がつけられ、ウルグアイで見つかった竜脚類の骨としては保存状態が飛び抜けてよいほうだそうだ。
研究チームは、この骨を数十種のティタノサウルスと細かく比べる系統解析(けいとうかいせき=どの仲間に近いかを樹形図の上で調べる作業)を行った。その結果、アルゼンチンやブラジルのアエオロサウルス類の近縁種と並ぶ位置に落ち着いた。新種と判断する決め手になったのは、尾椎の後ろ側にある行き止まりのくぼみ(奥がふさがった小さなへこみ)という、ほかでは見られない特徴だった。比較解剖から推定される全長は9〜10メートルほど。竜脚類としては中くらいのサイズだ。生きていた時期は8600万年前から7200万年前、白亜紀後期にあたる。
名前に込められた意味
学名にはウルグアイらしい由来がある。「メセタサウルス」は、化石が出た「メセタ・デ・アルティガス」(アルティガスの台地)という地名にちなんだもの。種名の「プロテクトル(protector=守る者)」は、ウルグアイ建国の英雄ホセ・アルティガスへの献名だ。この台地には、アルティガスを称えてウルグアイで2番目に建てられた記念碑があり、彼が「自由な人々の守護者(プロテクトル)」と呼ばれたことにかけている。地名と歴史を一度に背負った名前になっている。
ウルグアイの恐竜相にとっての意義
尾の骨2個からの記載にしては、この発見はいくつもの意味を持っている。
ひとつは、これがウルグアイで確認されたアエオロサウルス類の2例目にあたること。もうひとつは、ウルグアイから記載された竜脚類の種としても2例目で、しかも先に見つかっていた Udelartitan celeste(ウデラルティタン・ケレステ)とは別の系統だという点だ。系統の異なる巨大な草食恐竜が、当時のウルグアイに複数暮らしていた——ぽつんと孤立した1グループだけがいたのではない、ということになる。
さらに、統計的な比較を通じて、当時のウルグアイの生態系がアルゼンチン・パタゴニアの地層(アジェン層やロス・アラミトス層)とつながっていた可能性が示された。南米の南部で、恐竜をふくむ動物たちがどう移動し、どう行き来していたのか。その研究に、新しい取っかかりを与えてくれる発見だ。
解釈上の留意点
面白い発見ではあるものの、標本が尾椎2個だけという点は押さえておきたい。頭や胴、脚の骨は見つかっておらず、全長9〜10メートルという数字も、近縁種との比較から割り出した推定値だ。本文中の復元図も、あくまで近い仲間の姿をもとに描いた「たぶんこうだったろう」という想像図で、細かい体つきや色まで分かっているわけではない。断片からでも新種と判断できるだけの特徴(例の行き止まりのくぼみ)があったのは確かだが、今後もっと骨が見つかれば、姿の理解が変わっていく余地はある。
出典
記載論文は、アルゼンチン古生物学会の学術誌 Ameghiniana に2026年7月8日付でオンライン公開された。Matías Soto Núñez ほか「A new Aeolosaurini (Sauropoda, Titanosauria) from the Upper Cretaceous of Uruguay」DOI: 10.5710/amgh.19.06.2026.3689。
あわせて、発見の概要は Sci.News の記事 にもまとまっている。


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