Pentium 4時代のレトロPCを組もうとパーツを探していると、思わぬ落とし穴があるようです。ASRock製マザーボード「P4i45GV」を装った無刻印のクローン品が中古市場に紛れ込んでいて、しかも本物そっくりの「偽AGPスロット」まで備えている――そんな事例をテクノロジー系メディアのHackadayが2026年7月21日に紹介しました。見た目はAGPスロットなのに、配線の先はPCIバス。知らずにグラフィックカードを挿すと、動かないだけでなく、カードを壊してしまう恐れもあります。

何が起きたのか
発端は、YouTuberのComputer Retro Bus氏の検証動画です。同氏はPentium 4マシンを組むため、Facebookマーケットプレイスで「ASRock P4i45GV」としてSocket 478のマザーボードを購入しました。ところが組んでみると、AGPスロットに挿したグラフィックカードの動作が不安定で、動いているように見えるカードでもドライバーが入らない。サウンドカードにも不調が出る。OSがWindows MEだったことを差し引いても、様子がおかしすぎる――ということで、ボードそのものを調べ始めます。
すると、基板にメーカーや型番のちゃんとした刻印がないことに気づきました。画像検索で照合した結果、このボードはASRock P4i45GVを複製したクローン品だと判明します。本物のP4i45GVが使っているのと同じ、AGPに対応しない当時のIntel製チップセットを積んでいるため、ぱっと見では本物と区別がつきにくいわけです。
「偽AGPスロット」の正体
このボードの一番厄介な点が、AGPスロットに見えて実はそうではないスロットです。配線をたどると、スロットは内部でPCIバスにつながっているだけでした。つまり、形だけAGPで、中身は普通のPCIスロットです。
興味深いのは、これがクローン品側の手抜きではなく、本物のASRock P4i45GVに元からある仕様だという点です。ASRockはこの「PCIバスにつながったAGP形状のスロット」をAGIスロットと呼んでいて、クローン品はその仕様ごと忠実に複製していました。レトロPC情報サイトのThe Retro Webにある本物のP4i45GVのページにも、「このAGPスロットは偽物(fake)」という警告がわざわざ載っているほどです。
この作りのせいで、使えるグラフィックカードは大きく制限されます。AGP規格にはPCIとしても通信できるカードがあり、そうしたカードだけがこのスロットで動きます。Computer Retro Bus氏の環境でカードの対応がまばらだったのは、これが原因でした。
カードが壊れる恐れもある
速度や互換性の問題だけなら「安物だった」で済みますが、もう一段深刻なのが電圧の問題です。
AGPスロットには、挿せるカードを物理的に区別するための切り欠き(キー)があり、3.3V用・1.5V用・両対応(キーなし)に分かれています。ところがこのAGIスロットは、切り欠きの形は1.5V用のカードが挿さるようになっているのに、電気的には3.3Vのみの対応です。つまり、1.5V専用のAGPカードが物理的にはすんなり挿さってしまい、そこに3.3Vがかかって、最悪の場合カードが壊れます。本来なら切り欠きが防いでくれるはずの事故を、スロット側の作りが招いてしまう形です。
なぜ見分けにくいのか
このクローン品が厄介なのは、最近作られた偽物ではないという点です。Hackadayによれば、これらは当時(2000年代前半)に、事情を知らない買い手向けに作られて売られていた本当に古いボードで、部品も基板も年代相応に古びています。「新品なのに妙に安い」「部品が新しすぎる」といった、偽物によくある手がかりが使えません。それが20年以上たったいま、中古市場に再び流れてきているわけです。
中古でこの時代のボードを探すときに確認できるポイントを、今回の事例から拾うと次のようになります。
まず、基板上の刻印です。メーカー名・型番・リビジョンがシルク印刷でしっかり入っているかを、出品写真の段階で確認します。今回のクローン品は、まともな刻印がないことが発覚のきっかけでした。
次に、型番そのものの仕様確認です。今回のケースでは、そもそも本物のP4i45GVからしてAGPスロットが「偽物」でした。クローンかどうか以前に、その型番のスロットが本当にAGPなのかを、The Retro Webのようなデータベースで調べておくと安心です。チップセットがAGPに対応していない型番なのにAGPらしきスロットが付いていたら、それはPCI接続の可能性が高いと考えられます。
そして、手持ちの1.5V専用AGPカードをいきなり挿さないことです。素性のわからないボードに大事なカードを挿すのは、動作確認が済むまで待ったほうがよさそうです。
留意点
今回の話は、Computer Retro Bus氏が購入した1枚の検証と、それを紹介したHackadayの記事に基づくものです。同型のクローン品がどの程度の規模で流通しているのか、他の型番でも同様の事例があるのかといった全体像は、この報告だけではわかりません。また、AGP形状でPCI接続というスロット自体は、当時のASRock純正品にも存在した正規の仕様であり、「AGP風スロット=偽造品」というわけではない点にも注意が必要です。問題は、無刻印のクローン品が本物として売られていることと、仕様を知らずに1.5V専用カードを挿すと破損の恐れがあることの2点です。
まとめ
レトロPCパーツの中古売買は、動作確認もあいまいなまま個人間でやり取りされることが多く、こうした古いクローン品が今も普通に紛れ込んでいます。悪意のある出品とは限らず、売る側も本物だと思い込んでいるケースは十分ありえます。だからこそ、買う側で刻印と型番仕様を一度確認しておくだけで、カードを壊すような事故はかなり避けられそうです。
参考リンク
Counterfeit Retro Mainboards With Fake AGP Slots Are A Thing(Hackaday)
ASRock P4i45GV R5.0(The Retro Web)
Computer Retro Bus氏の検証動画(YouTube)


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