オープンソースのコード共有サイト「Codeberg(コードバーグ)」が、大規模言語モデル(LLM)でほぼ丸ごと生成されたコードのプロジェクトを受け入れない、という方針を決めました。運営団体の会員による投票で、賛成358・反対144。AIコーディングが当たり前になりつつあるいま、それに「うちでは受け入れない」とはっきり線を引くプラットフォームが現れた、という話です。

Codebergの概要
Codebergは、GitHubと同じようにコードを置いて共同開発できるサイトです。大きな違いは運営のかたちで、GitHubがMicrosoft傘下の企業サービスなのに対し、Codebergはドイツの非営利団体「Codeberg e.V.」が寄付で運営しています。広告も出資企業もなく、フリー・オープンソースソフトウェアのための場所として、コミュニティ主導で続けられてきました。
今回の決定は、この団体の年次総会で提案された動議を、アクティブな会員が14日間かけて投票するという手続きで決まったものです。投票率は約50%だったと公式ブログで報告されています。
可決された2つの動議
投票にかけられたのは、AIに関する2つの動議でした。
1つ目は「Codebergに置かれたコードやユーザーデータを、LLMの学習に使わない・使わせない」という宣言です。生成AIは学習データを手本に出力を作る仕組みなので、ホスティング先が学習利用を明確に拒否するのは、コードを預ける側にとって意味のある約束になります。こちらは大差で可決されました。
2つ目が、より議論を呼んだ「LLMで大部分が生成されたプロジェクト(いわゆるバイブコーディングで作られたプロジェクト)を利用規約で禁止する」という動議です。ClaudeやOpenAI Codexのようなツールにコードをほぼ任せて作られたプロジェクトが対象で、こちらは賛成358・反対144・棄権14で可決。反対も3割近くあり、会員の中でも意見が割れていたことがうかがえます。
禁止に至った理由
公式ブログでは、決定の背景がかなり率直に説明されています。大きく3つに整理できます。
1つ目はコストの問題です。AI企業のクローラー(ウェブページを自動で読み集めるプログラム)が、学習データ集めのためにCodebergのページを片っ端から読みに来ることで、サーバーに重い負荷がかかり続けているといいます。さらにAIデータセンターの建設ラッシュでSSDやメモリの価格が高騰しており、数年前に700ユーロで買えたタイプのドライブが、いまは3,700ユーロ——5倍以上に跳ね上がったという具体例も挙げられています。寄付で運営する非営利団体にとって、この値上がりは直撃です。
2つ目はライセンスの問題です。オープンソースのコードには「改変したら同じ条件で公開する」といった条件付きのライセンスが付いていることがあります。ところがLLMがそうしたコードを学習し、似たコードを「生成」として出力すると、元の条件が消えたきれいなコードに見えてしまう。公式ブログはこれを「ライセンスロンダリング」と呼び、オープンソースの前提を壊しかねない問題だとしています。
3つ目はコラボレーション文化への影響です。LLMで作られた低品質な貢献の確認に開発者(メンテナー)の時間が奪われる、どのプロジェクトが人の手で保守されているのか分からなくなる、真面目に書いた人まで「AIで書いただろう」と疑われる——といった形で、開発者どうしの信頼が損なわれつつある、という問題意識です。誰にも保守されない使い捨てのコードが増えるだけなら、コードの共有地は豊かにならない、というのがCodebergの立場です。
実際の運用方針
規約が変わったからといって、該当しそうなプロジェクトが一斉削除されるわけではありません。公式ブログは「数日以内に大量削除が起きることはない」「自動スキャンで洗い出すこともしない」と明言し、おおまかな線引きを示しています。
まず、活発なコミュニティに保守されているプロジェクトや、LLM普及前からの長い歴史があるプロジェクトは、途中でAI生成の貢献を受け入れていたとしても、影響を受けない見込みです。リソースをあまり使わない実験的なプロジェクトや個人用スクリプトも、推奨はされないものの実際には黙認されそうだ、としています。
一方ではっきり「もう歓迎しない」とされたのは、AIエージェントが自律的に作ったプロジェクト、LLMを多用して書かれ保守されているプロジェクト、関わっている人数では作れないはずの規模のリソースを消費しているプロジェクトなどです。該当する場合もすぐ退去を求められるわけではなく、より合う移転先の案内が添えられています。
割れる賛否
この決定を報じたHackadayのコメント欄でも、意見はきれいに割れています。
擁護する側からは、ライセンスの不透明さや、機械が生成したコードの著作権があいまいになる問題は本当に深刻だ、という声が上がっています。使われもしないAI生成プロジェクトが増えるだけなら禁止にも一理ある、という受け止めです。
一方で慎重論もあります。現役の開発者からは、足場づくりや定型的な部分をAIに任せ、人間は問題解決に集中するという使い方には実益がある、すべてを一括りにするのは乱暴だ、という反論が出ています。AIコーディングを責任を持って活用している人たちもいるのに、反AIの空気に乗って規制しすぎるのは怖い、という声もありました。
どちらの言い分にも根拠があり、「AIが書いたコードをどう扱うか」がいままさに現場で答えの出ていない論点であることが、コメント欄からも伝わってきます。
解釈上の留意点
今回の決定は、あくまでCodebergという一つのプラットフォームの方針です。GitHubをはじめ多くのサービスはむしろAIコーディング支援を推進しており、業界全体がこの方向に動いているわけではありません。また、禁止の対象は「LLMで大部分が生成されたプロジェクト」であって、開発の一部にAIを使うこと自体を締め出すものではない点も、公式のガイドラインから読み取れます。
それでも、コードを預かる側が「学習に使わせない」「ほぼAI製のプロジェクトは置けない」と規約で線を引いた例として、今回の決定は一つの参照点になりそうです。AIでコードを書くことが日常になった先で、共有の場をどう保つのか。Codebergの選択がどう転ぶかは、これから見えてくることになります。
出典
この記事は、以下の情報をもとに書きました。
・Codeberg公式ブログ(2026年7月23日):Protecting our FLOSS commons from LLMs
・Hackadayの報道(2026年7月24日):Codeberg Bans Cryptocurrency And LLM-Generated Code Projects


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