頭・あご・まばたきでパソコンを操作する自作ハンズフリーマウス

テクノロジー
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パソコンのマウスは、手が自由に動くことを前提に作られた道具です。では、けがや病気で手をうまく動かせない人はどうすればいいのか——その答えのひとつになりそうな自作プロジェクトが、海外のDIYコミュニティで公開されました。頭の向きでカーソルを動かし、あごをぐっと噛みしめると左クリック、まばたきの回数で右クリックやドラッグまでこなす、「手をいっさい使わないマウス」です。

製作したのはVarun Adinath Patil氏。作り方はDIYレシピ共有サイトのInstructablesで全手順が公開されていて、電子工作の定番ニュースサイトHackadayでも紹介されました。

操作の割り当て

このデバイスでできることを先に並べると、こうなります。

  1. 頭を動かす → カーソルが画面上を移動する
  2. あごを噛みしめる → 左クリック
  3. 3回続けてまばたき → 右クリック
  4. 2回続けてまばたき → クリックしたまま動かす「ドラッグ」

ふだんマウスでやっている基本操作が、頭・あご・まぶたの動きにひととおり置き換わっています。ファイルを開く、メニューを出す、アイコンを移動する——といった日常的な操作を、手に触れずにこなせる構成です。

3種類の信号の読み取り方

仕組みの中心にあるのは、体から拾える3種類の信号です。

まずカーソル移動を担当するのが、頭に取り付けたIMUセンサー(傾きや動きを検知する慣性センサー)。スマホの画面が縦横に切り替わるときに使われているのと同じ種類の部品で、この製作例ではMPU6050またはBMI270という、電子工作でよく使われる数百円〜千円台のセンサーがそのまま使えます。頭を右に向ければカーソルも右へ、という素直な対応です。

左クリックを担当するのはEMG(筋電)。筋肉に力が入るときに出る微弱な電気信号のことで、あごを噛みしめたときの咬筋(こうきん=あごの筋肉)の信号を、肌に貼ったジェル電極で拾います。心電図の検査で胸に貼る、あのシールのような電極です。

そしてまばたきの検出にはEOG(眼電位)を使います。目のまわりでは、まぶたや眼球が動くたびに小さな電位の変化が起きていて、これも肌の電極から読み取れます。カメラで目を撮影するのではなく、電気信号としてまばたきを数えているわけです。面白いのは、EMGとEOGを同じ電極の貼り付け位置から拾っている点で、配線を増やさずに2種類の信号を使い分けています。

これらの信号処理を引き受けているのが、Neuro-PlayGround Liteという生体信号の計測用に作られた小型ボードです。切手より少し大きいくらいの「Feather」という規格サイズの基板で、拾った信号をマウス操作としてパソコンに送ります。

自作プロジェクトとしての意義

実は、視線や頭の動きでパソコンを操作する支援機器そのものは、すでに市販品が存在します。Hackadayの記事もその点にきちんと触れていて、このプロジェクトの価値は「世界初」であることではなく、市販品と同じ方向のものを、手に入りやすい部品でゼロから組み立てられると示したことにあります。

専用の支援機器は高価になりがちで、使う人の体の状態に合わせた細かい調整も、メーカー任せになりやすいのが実情です。一方、作り方が公開された自作デバイスなら、「まばたき2回の判定をもう少しゆるくしたい」「クリックはあごではなく別の筋肉にしたい」といった調整を、使う本人や周囲の人が自分たちの手で試せます。操作の割り当てを体の状態に合わせて組み替えられる柔軟さは、レシピが開かれているからこそです。

電子工作の世界では、こうしたアクセシビリティ(体の状態にかかわらず機器を使えるようにする工夫)を題材にしたプロジェクトが継続的に生まれていて、今回の製作例もその流れに連なる一本といえます。

留意点

このデバイスはあくまで個人が製作・公開したDIYプロジェクトで、医療機器として認証・審査を受けたものではありません。実際に体の不自由な方の支援目的で使うことを検討する場合は、市販の支援機器や専門家への相談と並べて考えるのが安全です。また、ジェル電極を肌に貼って使う仕組みなので、長時間の使用や肌との相性は人によって差が出る点も、試すなら頭に入れておきたいところです。

出典

製作手順の全文はInstructablesで公開されています。使用部品のリストから信号処理の中身まで、写真付きで追える構成です。

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