卵から親まで、一生を野外で通して見届けられたことが、まだ一度もない魚がいます。スーパーの蒲焼きコーナーに並んでいる、あのニホンウナギです。
産卵している場所が特定されたのは2005年のこと。それでも、親ウナギがそこへどう向かうのか、産卵の瞬間に何が起きているのかは、いまだに誰も見ていません。日本人がこれだけ長く食べてきた魚の一生には、大きな空白がいくつも残っています。分かっていることと、分かっていないこと。その両方を順に追ってみます。
産卵場特定までの半世紀
ウナギがどこで生まれるのかという問いは、1930年代から本格的に追いかけられてきました。手がかりは、海で採れる仔魚(しぎょ、赤ちゃんの魚)の大きさです。小さい個体が採れる場所ほど、産卵場に近い。この理屈で、調査船は少しずつ南へ、西へと網を入れていきました。
1992年、塚本勝巳さんらが、マリアナ諸島の西方海域で孵化して間もない仔魚をまとまって採集し、産卵場がこの海域にあることをNatureに報告します。ただし、この時点で分かったのは「だいたいこのあたり」でした。
塚本さんのグループは、産卵場所を絞り込むために三つの仮説を立てます。海底からそびえる海山(かいざん)を目印にしているという海山仮説、新月の時期に産卵するという新月仮説、そして海水の塩分が急に変わる境目(塩分フロント)が関係しているという塩分フロント仮説です。この三つが重なる場所を狙って調査する、という作戦でした。
2005年6月、学術研究船「白鳳丸」がマリアナ諸島西方で、孵化して数日のプレレプトケファルスを大量に採集します。まだ目も口もない、孵化後2日の個体まで含まれていました。産卵後の経過日数と海流から逆算すると、産卵が行われたのはスルガ海山のすぐ近く。ここで、産卵場は西マリアナ海嶺の南部だと確定します。
それでも卵そのものは見つかっていませんでした。2008年、水産庁の調査船「開洋丸」がマリアナ海域のトロール調査で、産卵を終えた親ウナギ5尾の捕獲に成功します。そして2009年5月22日の未明、新月の2日前に、白鳳丸が西マリアナ海嶺南端部の海山域でニホンウナギの受精卵31個を採集しました。天然のウナギの卵が人の目に触れたのは、これが世界で初めてのことです。
マリアナ沖の海山で始まる一生
産卵場は、日本の沿岸からおよそ3,000キロ離れた海です。北緯14〜16度、東経142度あたり。東京からマニラまでとほぼ同じ距離を、太平洋のまん中に向かって進んだ先にあります。
産卵の時期は4月から8月にかけてで、新月を中心に行われる可能性が高いとされています。2011年の調査では、新月の2〜4日前の日没から深夜にかけて、親ウナギが集団で産卵していることが示されました。卵の直径は約1.6ミリ。水深150〜200メートル、水温25度前後で孵化します。

ただし、産卵そのものの現場は、まだ誰も見ていません。卵や仔魚が採れた場所と時刻から逆算した推定です。産卵場で採集されたプレレプトケファルスの遺伝子を調べた研究からは、ウナギが数日にわたって相手を変えながら複数回交尾している可能性が間接的に示されていますが、これも直接の観察ではありません。
柳の葉に似た仔魚の漂流
孵化したウナギの子は、親とは似ても似つかない姿をしています。レプトケファルスと呼ばれる、透明で平べったい、柳の葉のような形の仔魚です。あまりに姿が違うため、かつては別の生き物として分類されていた時期もありました。
この透明な葉っぱは、自分では大した距離を泳げません。北赤道海流に乗って西へ運ばれ、フィリピン沖まで来たところで進路が二手に分かれます。北上する黒潮に乗れば東アジアの沿岸へ、南下するミンダナオ海流に乗ってしまえば生息地にはたどり着けません。ウナギの子は、この分岐でどちらに入るかによって運命が決まります。
まったく受け身というわけでもありません。レプトケファルスは昼は深く、夜は浅い層へと毎日上下する日周鉛直移動を行っており、夜に浮かぶ深さは成長とともに浅くなります。体長40ミリほどになると、夜間は水深50メートル付近に分布する。海面近くの層は貿易風によって北向きの流れが生じているので、この深さまで浮上できるかどうかが、北へ運ばれるかどうかを左右します。
何を食べているのかは長らく分かっていませんでした。現在は、プランクトンの死骸などが海中を漂う「マリンスノー」を食べているという説が広く支持されています。
川と海を行き来する成長期
東アジアの沿岸にたどり着いたレプトケファルスは、透明な細長い姿へと変態します。これがシラスウナギです。重さにして0.2グラムほど。一円玉の5分の1くらいしかありません。
河口や沿岸に入ったシラスウナギは、体に色素が出て黒ずんでいき、クロコと呼ばれる稚魚になります。さらに成長して腹側が黄色みを帯びてくると、黄ウナギ。ウナギの一生のほとんどは、この黄ウナギの期間です。
ここで、他の魚ではあまり見ない性質が二つ出てきます。
ひとつは性別の決まり方です。ニホンウナギの雌雄は、生まれつき遺伝子で決まっているわけではありません。シラスウナギから黄ウナギの初期にかけて経験した環境によって決まります。同じ卵から生まれた子が、育った場所しだいで雄にも雌にもなるということです。
もうひとつは、暮らし方の幅の広さです。「ウナギは川の魚」というのは半分しか合っていません。河川に定着する個体もいれば、湾内や河口にとどまったまま一生を終える個体、一度川をのぼってまた海に戻る個体、海と川を何度も行き来する個体もいます。耳石(じせき、魚の耳の中にある小さな石)に刻まれた成分を調べると、その個体がどこで育ったかが読み取れる。そこから、生息環境がかなりばらついていることが分かってきました。汽水域で育った個体のほうが、淡水域より成長が速いことも報告されています。
黄ウナギは泥や岩のすき間、水草などを隠れ家に使い、干潟の砂泥には自分で巣穴を掘ることも観察されています。岸に近い浅い場所を好み、流れの速い中央部は避ける。もとの場所から離されても、においを手がかりに戻ってこられることが2025年の研究で示されました。
捕食魚の胃からの脱出
小さいうちのウナギは、当然ながらよく食べられます。利根川水系の調査では、河口にたどり着いたシラスウナギがチャネルキャットフィッシュやヒラスズキに捕食されることが報告されています。
ところが、食べられて終わりではないことが分かってきました。長崎大学の長谷川悠波さんと河端雄毅さんらのグループが、ニホンウナギの稚魚とドンコ(河川に多いハゼの仲間で、ウナギを食べる魚)を同じ水槽に入れて観察していたときのことです。食べられたはずのウナギが、水槽の中を泳いでいた。
撮影を続けたところ、捕獲されたウナギの半数以上が、ドンコのえらのすき間から抜け出していました。しかも全個体が尾のほうから出てくる。2021年に発表されたこの結果を受けて、研究グループは次に「どういう経路で出ているのか」を調べにかかります。
手法が変わっていました。造影剤である硫酸バリウムの水溶液をウナギに注入し、X線映像撮影装置の中でドンコに食べさせて、体内の動きを直接映す。針の太さ、バリウムの濃度と量、ウナギの大きさを半年以上かけて詰めた末に、映像が撮れました。

映っていたのは、予想とは違う光景でした。研究グループは当初、口の中からえらへ向かって出ているのだろうと考えていました。実際には、ウナギはいったん体の一部が胃まで達したあと、尾を食道へ差し込み、消化管をバックで遡ってえらまでたどり着いていたのです。32匹中9匹が脱出に成功しました。体全体が胃に飲み込まれてしまった個体では、出口を探すように胃の中でぐるぐる回る動きも観察されています。
捕食者に食べられたあとに生き延びる動物は珍しくありませんが、その多くは硬い殻で消化を免れて排泄されるといった受け身のものです。自分から消化管を遡って出てくる例は、魚類以外を含めてもほとんど知られていません。細長くぬめる体だけでなく、強い酸性で酸素のない胃の中に耐える力と、素早く動く筋力の両方が要る行動だと考えられています。脱出できなかった個体は、平均200秒ほどで動かなくなりました。
続く研究では、この技をいつ身につけるのかも調べられました。着底期の発達が進むにつれて脱出できるようになる、というのが結果です。浮かんで暮らす段階から川底で暮らす段階へ移るタイミングと、脱出能力を獲得するタイミングが重なっていました。
銀ウナギへの変態と無給餌の回遊
川や沿岸で数年から十数年を過ごしたウナギは、あるとき体つきを変えます。目が大きくなり、体が金属光沢を帯びて銀色になる。これが銀ウナギで、産卵回遊の始まりの合図です。
耳石から推定された銀ウナギの年齢は4歳から17歳と幅があり、雌の平均は8歳。22歳で成熟した例もあるので、寿命は22年以上と見られています。最大で全長1.1メートル、体重2.4キロに達します。
秋から冬にかけて川を下った銀ウナギは、3,000キロ先のマリアナ沖を目指します。回遊にはおよそ6か月。この間、ウナギは餌をとりません。安定同位体を使った分析から、産卵回遊中は栄養を取り込んでいないことが確かめられています。川で蓄えた分だけで泳ぎきり、産卵する。
回遊中の行動として確かめられているのが、日周鉛直移動です。人工衛星や音波を使った追跡によると、昼間は光の届かない水深500〜800メートルを泳ぎ、夜になると300メートルより浅い層まで上がってくる。月が明るい夜ほど、夜間の遊泳深度は深くなります。餌をとらないのですから、この上下運動は食事のためではありません。マグロ類やサメといった、目で獲物を探す捕食者を避けるための行動だと解釈されています。実際、追跡中の銀ウナギが捕食された例も記録されています。

いまも残る空白
ここまでが、分かっている部分です。では何が分かっていないのか。
最大の空白は、産卵回遊のルートそのものです。衛星タグや音波タグによる追跡で断片的な情報は得られているものの、日本沿岸からマリアナ沖までを通して追いきれた例はありません。ウナギの体は比較的小さく、既存のタグを付けると泳ぎが目に見えて鈍るという問題もあります。
そこで、実測の代わりに理論から迫る試みも出てきました。海洋研究開発機構(JAMSTEC)と米カリフォルニア州立大学フレズノ校の共同チームは、流れの中での最適な進路を求める数学(ゼルメロの航法理論)と海流予測モデルを組み合わせて、時間とエネルギーが最も少なくて済むルートを計算しています。表層の海流を利用する戦略と、強い流れを避けて深く潜り産卵場へまっすぐ向かう戦略の二つが出てきましたが、実際のウナギが海流の正確な情報を持っているとは考えにくいため、採っているのは後者だろうと推定されました。体長の0.4〜0.6倍を毎秒進む速さなら、繁殖に足りるエネルギーを残せる計算になるといいます。
この推定に従うと、ウナギは東アジア各地の生息地から産卵場へ向かって、逆放射状に集まってくることになります。渡り鳥のように決まった通路を群れで通るのではなく、それぞれの出発地から直接向かう。だからサケの遡上のような、群れで進む光景は見られないだろうと研究チームは述べています。ただしこれも計算による推定であって、実際にそう泳いでいるかを確かめたわけではありません。
産卵行動の直接観察も、まだ実現していません。シラスウナギからクロコにかけて何を食べているのかも、分かっていない部分です。ウナギは魚の中でもよく調べられているほうですが、それでもこれだけの空白が残っています。
地域の個体群を持たない魚
一方で、はっきりしていることもあります。日本海側の川で獲れたウナギも、九州の川のウナギも、中国や台湾の川のウナギも、生まれた場所は同じだということです。
根拠は遺伝子です。東アジアの各地からウナギを集めて遺伝的な違いを比べても、地域による分かれ方がほとんど見つかりません。全員が同じ産卵場に集まって、相手を選ばずに交配していると考えるのが自然になります。専門的には、単一の任意交配集団と呼ばれる状態です。
この結論に落ち着くまでには、それなりの議論がありました。2006年には北と南の集団に分かれているという報告が出ていますし、2018年には84個体のゲノムを解読した研究が、球磨川河口のウナギは別の系統ではないかと指摘しています。一方で分かれ方は限定的だとする研究も相次ぎ、2025年に過去66件の解析をまとめたメタ解析が出たことで、いまは「ウナギ属のほとんどの種は単一の任意交配集団」という見方が大勢になっています。
サケとちょうど逆の性質だと言えます。サケは生まれた川に戻ってくる母川回帰(ぼせんかいき)で知られますが、ウナギにそういう仕組みはありません。マリアナ沖で生まれた仔魚は海流に運ばれるだけなので、どこに流れ着くかは成り行きしだいです。静岡の川で獲れた1匹は、海流の具合が少し違えば台湾の川にいたかもしれない。しかも流れ着いた先の環境によって、性別まで決まる。生まれた場所だけが全員に共通していて、その先はほとんど成り行きに委ねられている、という構造になっています。
ただし、どこにでも流れ着けるわけではありません。全国265河川を環境DNAで調べた研究では、太平洋側の河川で高い濃度が検出された一方、日本海側は低く、北海道ではほとんど確認されませんでした。仔魚を運んでくるのは黒潮なので、その流れが届きにくい海域は分布の外側にあたります。ニホンウナギの分布は北海道の西南部より南とされていて、北海道にまとまった個体群があるわけではありません。
この「地域ごとの個体群がない」という性質は、資源をどう守るかに直結します。ある川のウナギを大事にしても、そこで育った個体が産む子は東アジア中に散らばっていく。逆に、どこか一か所で獲りすぎれば、その影響は全域に及ぶ。2012年に日本の呼びかけで始まり、現在は日本・中国・韓国・台湾が参加している協議で、養殖池に入れるシラスウナギの量に共通の上限を設けているのは、この構造があるためです。
資源の現状をめぐる評価の分かれ方
ここからは、少し込み入った話になります。
日本国内でのニホンウナギの漁獲量は、はっきり減っています。1915年から1943年までは3,000〜4,000トンで安定していましたが、1970年に3,000トンを割ってから減り続け、2024年は統計開始以来で最低の52トンでした。養殖の種苗になるシラスウナギの採捕量も、1966年以前は100トンを超えていたのが、2024年には5.2トンです。
これを受けて、ニホンウナギは2013年に環境省のレッドリストに、2014年にはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストに、それぞれ絶滅危惧IB類として掲載されました。IUCNは2020年に再評価を行いましたが、区分は変えていません。
ただし、この数字の読み方には注意点も指摘されています。漁獲量の減少には、資源そのものの減少だけでなく、漁をする人が減ったことも効いている。ウナギを主な対象とする湖沼漁業の管理主体は、1983年の231から2013年の69まで減りました。養殖側でも、経営体数は1973年の3,287から2023年の397へと大きく減り、養殖技術が進んで必要なシラスウナギの量そのものが減っています。統計の取り方が時代によって変わっている点もあります。
絶滅リスクの評価も、基準によって結論が分かれます。IUCNの評価基準のうち、絶滅確率を数量的に計算する基準Eを用いた分析では、ニホンウナギの絶滅確率は絶滅危惧種の閾値を下回るという結果が出ています。ゲノム解析から推定される有効集団サイズ(次世代の遺伝的多様性に実際に寄与する個体数)も、2019年以降はおよそ2万個体で安定して推移しているとされます。一方でIUCNの枠組みでは、基準A〜Eのうち最も高い絶滅危惧の区分が最終評価に採用されるため、基準Eがより低い区分を示しても最終評価には反映されません。
この評価の違いは、国際的な議論にも表れました。2025年、EUとパナマが、ニホンウナギを含むウナギ属の全種をワシントン条約(CITES)の附属書IIに掲載することを提案します。附属書IIは、輸出国の許可を受ければ商業取引ができる区分です。日本は、東アジアで地域的な資源管理を行っていること、類似性だけを根拠とした一括掲載は過剰規制であることなどを理由に反対しました。同年11月から12月にかけてウズベキスタンのサマルカンドで開かれた第20回締約国会議で採決が行われ、賛成35、反対100、棄権8で否決されています。ただし同じ会議で、ウナギ属の取引・保全・管理の強化を求める決議のほうは採択されました。
整理すると、こうなります。資源が低い水準にあり、持続的に利用するには保全と資源管理の取り組みが必要だという点では、評価は一致しています。分かれているのは「絶滅の危機にあると言えるかどうか」の判断のほうです。国際取引の規制は見送られましたが、それは資源が安泰だという意味ではありません。
卵から育てるという別の道
天然のシラスウナギに頼らずに済ませる、という方向の研究も長く続けられてきました。完全養殖です。
いま流通しているウナギのほとんどは養殖ものですが、その出発点は天然のシラスウナギです。河口で採ってきた稚魚を育てているので、天然資源に依存している構造は変わりません。これに対して完全養殖は、人工的に採った卵を孵化させ、シラスウナギまで育て、成魚にしてまた採卵する。このサイクルを飼育下だけで回します。
水産研究・教育機構が世界で初めてニホンウナギの完全養殖に成功したのは2010年でした。ただ、レプトケファルスからシラスウナギまで育てるのが難関で、長らくコストが見合いませんでした。水産庁によれば、完全養殖シラスウナギ1尾あたりの生産コストは2016年度に4万円。それが1,800円まで下がっています。
2026年5月20日、水産研究・教育機構とマリノフォーラム21、山田水産の3者が、完全養殖ウナギの蒲焼を試験販売すると発表しました。販売開始は5月29日。日本橋三越本店と築地の専門店、イオングループのECチャネルで扱われました。完全養殖ウナギの蒲焼が一般向けに売られたのは、これが世界で初めてです。山田水産は2024年以降、2年続けて年間1万尾以上の完全養殖シラスウナギの生産に成功しているといいます。
もっとも、これは数量を限った試験販売の段階です。コストも、天然のシラスウナギを使う従来の養殖と比べればまだ割高で、すぐに店頭の主役が入れ替わるという話ではありません。
それでも、この技術がここまで来た背景には、産卵場を突き止め、卵を採り、親ウナギの生理状態を調べてきた一連の研究があります。マリアナ沖で31個の卵を拾い上げた調査は、もともと「天然の親ウナギの状態をお手本にして人工種苗の技術を良くする」という目的も持っていました。生態の解明と養殖技術は、別々に進んできたわけではありません。
解釈上の留意点
ここまで書いてきたことの多くは、直接の観察ではなく、間接的な証拠を積み上げて組み立てられたものです。耳石の成分、安定同位体、遺伝子解析、海流のシミュレーション。産卵の瞬間も、日本沿岸からマリアナ沖までの回遊の全行程も、まだ誰も見届けていません。今後の調査で、細部が書き換わる可能性は十分にあります。
捕食魚から脱出する行動についても、水槽内でドンコという特定の捕食者を相手にした実験の結果です。自然の川や海で、他の捕食者に対してどれだけ通用するのかは、また別の問題になります。
資源評価についても、ニホンウナギは国際的な地域漁業管理機関などによる正式な資源評価が行われていない状態が続いています。減少の要因として海洋環境の変動、過剰な漁獲、生息環境の悪化などが挙げられていますが、それぞれがどの程度効いているのかの切り分けは、まだできていません。
分からないことが多い、というのは、この魚について書くときに必ず付いて回る条件です。それでも、90年ほど前には「どこで生まれるのかも分からない魚」だったものが、いまは卵の直径も、孵化する水温も、子が海流のどこを漂うかも数字で語れるようになりました。空白はまだ残っていますが、埋まった部分も確かにあります。
出典
この記事は、以下をもとに書きました。
令和7年度 国際漁業資源の現況「83 ニホンウナギ」(水産庁・水産研究・教育機構)
人類が初めて目にした天然ウナギ卵——ウナギ産卵場2000年の謎を解く(東京大学大気海洋研究所・塚本勝巳)
ウナギ稚魚の特殊な逃げ技:捕食魚の胃の中から消化管内を遡って脱出する(長崎大学・2024年9月10日)/原論文:Hasegawa et al., “How Japanese eels escape from the stomach of a predatory fish,” Current Biology, 2024年9月9日(論文ページ)
特殊な捕食回避能力の発達変化——ウナギ稚魚はいつ捕食魚の体内から脱出できるようになるのか(長崎大学)
ニホンウナギの産卵回遊——最適な移動経路を予測(海洋研究開発機構・2024年10月31日)
完全養殖ウナギ蒲焼の試験販売(水産研究・教育機構ほか・2026年5月20日)
ワシントン条約(CITES)第20回締約国会議の結果について(水産庁・2025年12月5日)
Tsukamoto, K. et al., “Oceanic spawning ecology of freshwater eels in the western North Pacific,” Nature Communications 2, 179 (2011)(DOI: 10.1038/ncomms1174)


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