系外惑星を探す衛星TESSが、これまで一度も使っていなかった方法で木星のような惑星をとらえました。使ったのは、アインシュタインの一般相対性理論から出てくる「重力マイクロレンズ」という現象です。TESSは本来こういう惑星を見つけるようには作られていないので、研究チーム自身も驚いた、という発見でした。

TESSの通常のやり方
TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)は、星の明るさをずっと見張って、惑星が星の手前を横切った瞬間に星がわずかに暗くなるのをとらえる衛星です。この「横切りによる減光」を使う方法をトランジット法と呼びます。今わかっている6000個あまりの系外惑星のうち、およそ4分の3はこのトランジット法で見つかっています。TESSも、地球からおよそ150光年以内という比較的近い範囲の星を、この方法で調べてきました。
ただしトランジット法には得意・不得意があります。星のすぐそばを回る惑星は横切る回数が多くて見つけやすい一方で、木星のように星から遠く離れて回る惑星は、めったに手前を横切らないので、この方法ではほぼ見つかりません。
重力マイクロレンズという別の手
今回TESSが使ったのは、まったく別の原理です。重い天体のそばを光が通ると、その重力で空間が曲がり、光の進む道もわずかに曲げられます。これは一般相対性理論が予言した効果で、重力レンズと呼ばれます。
その小さな版が重力マイクロレンズです。手前の星(レンズ役)が、たまたまずっと遠くの星の前をほぼ横切るように動くと、手前の星の重力が遠くの星の光を曲げて集め、遠くの星が一時的に明るく見えます。虫めがねで光を集めるのに似た効果です。そして、もし手前の星が惑星を連れていれば、その惑星もごく短い時間だけ同じレンズの役目を果たし、明るさの変化に短い「くずれ」を加えます。この明るさの変化の形をていねいに読み解くと、惑星の存在や、惑星と主星の重さの比がわかります。

見つかった惑星の姿
この方法でとらえられたのが、Gaia23bra bと名づけられた惑星です。重さは木星のおよそ1.63倍で、木星より一回り重い「超木星」に分類されます。回っている相手は、太陽の約80%の重さのオレンジ色をした恒星(オレンジ矮星)。惑星と主星の間隔は、ちょうど木星が太陽から離れている距離と同じくらいです。
そしてこの星系は、地球からおよそ4万光年の彼方にあります。TESSがトランジット法で扱う150光年程度の範囲をはるかに超えた距離です。太陽系のような配置で遠くを回るこの惑星は、TESSが本来使うトランジット法ではまず検出できません。つまり、TESSが得意な方法では絶対に届かなかった惑星を、別の原理でたまたまとらえた、というわけです。
2台の望遠鏡の連携
この発見は、TESS一台の手柄ではありません。最初に手がかりをつかんだのは、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の位置天文衛星Gaiaでした。2023年、Gaiaの警報システムが、明るくなった星を一つ拾い上げます。これが重力マイクロレンズの始まりでした。
ただ、Gaiaはひとつの星をひんぱんには見に行かないので、観測の間隔がまばらでした。そのため、明るさの変化に隠れていた惑星のサインまでは読み取れませんでした。そこで研究チームは、同じ時期に同じ空の領域を見張っていたTESSの過去データをさかのぼって調べます。すると、TESSが同じ現象を、はるかに細かい時間間隔でとらえていたことがわかりました。TESSは拡張ミッション2で200秒ごとという密な観測ができるようになっていて、その細かさが、明るさの変化にまじった惑星由来の特徴をはっきり浮かび上がらせたのです。
広い空をゆっくり見渡すGaiaが「どこを見ればいいか」を教え、細かく見張るTESSが「そこに何があるか」を示す。片方だけでは届かなかったものが、二台の得意を組み合わせてはじめて見えた、という発見でした。
アーカイブに眠るものと今後の観測
この結果には続きがあります。TESSがこの手の惑星を一つ見つけられたということは、過去8年ぶんのTESSの観測データの中に、まだ気づかれていない同じような惑星が眠っている可能性がある、ということです。これまで誰も、TESSのデータを重力マイクロレンズの目で見返そうとは考えていませんでした。Gaia23bra bは、その最初の一例になりました。
研究チームはこの発見を、これから始まる大きな観測計画の先ぶれとも位置づけています。NASAは重力マイクロレンズを主要な武器の一つにするナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡の打ち上げを2026年8月末に予定しており、銀河系の中心方向をびっしり見張って、この方法で1000個規模の惑星を見つけることを目指しています。
ここでTESSの立ち位置が効いてきます。重力マイクロレンズを狙う観測の多くは、星がぎっしり詰まった銀河系の中心(バルジ)に向けられてきました。一方TESSは全天を見渡すので、中心から離れた銀河面のような、これまであまり探されてこなかった場所も「ついでに」カバーしています。星が密集した銀河の中心は超新星爆発による放射が強く、星どうしの重力のぶつかり合いで惑星系がかき乱されることもあります。TESSが見ているのは、それより穏やかな領域です。惑星が生まれる環境が場所によってどう変わるのか、これまで手薄だった角度から調べる入り口になるかもしれません。
解釈上の留意点
この研究は査読を経て、2026年7月1日にThe Astrophysical Journal Lettersに掲載されました。論文の筆頭著者はニューメキシコ大学の博士課程学生マロリー・ハリス氏です。
いくつか押さえておきたい点があります。まず、4万光年という距離のため、この惑星を直接くわしく観測できるわけではありません。重さや軌道の距離はわかっても、大きさや大気を細かく調べるのは今の技術では難しい対象です。また、重力マイクロレンズは手前の星と遠くの星がたまたま重なった一度きりの出来事で、同じ現象をもう一度観測して確かめ直すことはできません。得られた値は、その一回の明るさの変化を丁寧にモデル化して導き出したものです。「TESSのアーカイブに他の惑星が眠っているかもしれない」という部分も、今後データを見返して検証していく段階の見通しであって、すでに大量に見つかっているという話ではありません。
出典
NASA Science: NASA’s TESS Mission Finds Planetary System in New Way
University of New Mexico Newsroom: NASA’s TESS Mission finds planetary system in a new way
Universe Today: Bending Spacetime Reveals New Planet Hidden in Archived TESS Data


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