地球から80光年ほど離れたところに、死んだ星のすぐそばを回る木星級の巨大惑星がある。星の光の半分以上をさえぎりながら、たった34時間で一周してしまう。本来なら、その星が最期に大きくふくらんだときに焼き尽くされていたはずの場所だ。なのに、この惑星は生き延びていた。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がその大気を初めて調べ、どうやって今の場所にたどり着いたのかが見えてきた、という研究が発表された。
木星級なのに星の7倍という奇妙な組み合わせ
主役はWD 1856 bという惑星。2020年に、NASAのTESSと退役したスピッツァー宇宙望遠鏡の観測から見つかった。大きさは木星ほどで、質量は木星の4〜11倍と見積もられている、れっきとしたガス惑星だ。
変わっているのは、この惑星が回っている相手だ。中心にあるのは白色矮星(はくしょくわいせい)——太陽のような星が一生の最後に燃えつき、外側を吹き飛ばして残った、地球ほどの大きさの高密度な芯である。惑星のほうが星より7倍も大きいという、ふつうとは逆転した組み合わせになっている。
そして軌道がとにかく近い。惑星と星の距離は、地球と太陽の間の50分の1しかない。34時間で一周してしまうほどのすぐ近くを回っている。
ここに謎があった。白色矮星になる前、この星は赤色巨星として今の100倍以上にふくらむ時期を通っている。もし惑星が最初からこんな近くにいたなら、そのとき確実に飲み込まれていたはずだ。それなのに、無傷で残って星のそばを回っている。どうやって生き延びたのか——それが2020年からの宿題だった。
予想より240度も高い温度
研究チームはJWSTを使い、この惑星の大気・温度・質量を測った。惑星が星の手前を横切るとき、星の光が惑星の大気を通り抜けて色(波長ごとの強さ)が変わる。その変化を読み取ると、大気に何が含まれているかがわかる。惑星が星の光をさえぎる割合は56%にのぼり、これは記録的な大きさだった。
大気からは、メタンとみられる炭化水素と、小さなもやの粒子の兆候が読み取れた。死んだ星の手前を横切る惑星で大気がとらえられたのは、これが初めてだという。もやとメタンのせいで、この惑星は土星の衛星タイタンに似た色合いをしていると考えられている。

いちばん意外だったのは温度だ。白色矮星の弱い光で温められるだけなら、この惑星は160ケルビン(およそマイナス110度)ほどのはずだった。ところが実際に測ると390〜412ケルビン、およそ400ケルビン(127度)もあった。星の光だけでは説明のつかない、240度も高い温度である。つまりこの惑星は、過去のどこかで別の理由で温められた——そう考えるほかなかった。
冷え方をさかのぼって見えた移動の跡
手がかりになったのが、巨大惑星の冷え方だ。ガス惑星は決まったペースで少しずつ冷えていくので、今の温度と冷却モデルを突き合わせると、過去の温度をさかのぼって推定できる。
その計算から浮かび上がったのは、次のような筋書きだった。惑星はもともと星から十分に離れた軌道にいて、星が赤色巨星として荒れくるう時期を安全な距離でやり過ごした。飲み込まれずにすんだのは、そのときまだ遠くにいたからだ。そして星が白色矮星になってから30〜55億年ほど経ったあと、内側へ移動してきた。白色矮星の強い重力とやりとりするうちに大きく温められ、それ以来ずっと冷えつづけている——今の高い温度は、その加熱の名残というわけだ。
赤色巨星のときは遠くにいて無事、白色矮星になってからじわじわ近づいた。この順番なら、飲み込まれずに星のすぐそばへたどり着けた理由も、予想より高い温度も、両方うまく説明がつく。
50億年後の太陽系を映す鏡
この話が引きつけるのは、遠い星の物語にとどまらないからだ。WD 1856 bの主星と同じように、太陽もおよそ50億年後には赤色巨星にふくらみ、やがて白色矮星になる。水星や金星といった内側の惑星は、そのとき飲み込まれると考えられている。
では木星や土星のような外側の巨大惑星はどうなるのか。WD 1856 bは、星が死んだあとも巨大惑星が生き残り、しかも軌道を大きく変えて星のそばまで移動しうることを示している。惑星が星の一生の最終段階まで生き残れるとわかったことで、宇宙のどこに・いつ惑星が存在しうるのか、その幅が広がった。太陽系の遠い未来をのぞく手がかりでもある。
解釈上の留意点
この研究はNature誌に掲載された査読済みの論文だが、移動のシナリオそのものはまだ確定した結論ではない。2020年にWD 1856 bを発見したチームの一人であるイアン・クロスフィールド氏(カンザス大学、今回の研究には不参加)は、現在の軌道への移動という結論について、興味深いものの、確かなことを言うにはさらなる研究が必要だとコメントしている。大気にメタンがある事自体は驚きではないが、その量が予想より多かった点も指摘されている。
研究チーム自身も、より詳しい大気の化学組成を調べるため、JWSTで追加の観測をすでに進めているという。今回見えてきた筋書きが今後の観測でどう補強される(あるいは修正される)かは、これから確かめられていく段階だ。
出典
Ryan J. MacDonald et al., “Aerosols and hydrocarbons in the atmosphere of a white dwarf planet,” Nature (2026). DOI: 10.1038/s41586-026-10514-7


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