Kindleのような読書体験を、大手の囲い込みなしで――そんな発想で作られたオープンソースの電子書籍リーダー「Open Book Touch」が、クラウドファンディングサイトの Crowd Supply に登場しました。価格は149ドルから。公開からわずか数日で、目標金額の6割を超える支援が集まっています。
作っているのは Oddly Specific Objects の Joey Castillo 氏。「読書のためのオープンソース端末が社会には必要だ」という一文をきっかけに、6年かけてここまで仕上げてきた個人発のプロジェクトです。

どんな端末なのか
本体は4.26インチの電子ペーパー(e-paper)タッチスクリーンを1枚だけ備えた、ボタンのないシンプルな作りです。前面に物理ボタンは一切なく、ページ送りも設定もすべて画面のタッチ操作でおこないます。解像度は480×800。フロントライトには暖色5個・寒色5個のLEDが仕込まれていて、明るさだけでなく色温度も指でスワイプして調整できます。暗い場所でも読めて、寝る前は暖色寄りに、といった使い分けができるわけです。
中身はデュアルコアの ESP32-S3 マイコンで、Wi-Fi と Bluetooth に対応。フラッシュメモリは16MB、作業用メモリは8MB積んでいます。本を入れておくのは microSD カードで、バッテリーはユーザーが自分で交換できるLiPo電池。厚みは1cmを切り、重さは85gほどと、ポケットにそのまま滑り込む軽さです。
読めるファイルは EPUB とテキスト(TXT)。microSD カードにファイルを入れておけば本棚に並びます。囲い込みの象徴でもあるDRM(コピー制御)には非対応で、アカウント登録も不要、勝手にどこかへ通信することもない、という割り切った設計になっています。Wi-Fi 経由でブラウザから蔵書を管理するウェブ画面も用意されています。
「大手に縛られない道具」という切り口
この端末のいちばんの特徴は、ハードもソフトも丸ごとオープンソースな点です。ファームウェアは MIT ライセンスで公開され、ハードウェアの設計データも出荷時にあわせて公開される予定。つまり、中身をのぞいたり、自分で改造したり、あるいはゼロから同じものを作ったりできます。物理ボタンが欲しければ自分で足す、画面が小さいと思えば別サイズのパネルを探して移植する――そういう「気に入らなければ自分で直せる」余地が最初から確保されているのが、市販の電子書籍リーダーとの大きな違いです。
読書まわりの作り込みも、単に「文字が出るだけ」では終わっていません。行を均等に揃える組版エンジンを積み、英語・スペイン語・フランス語・イタリア語のハイフネーション辞書で単語を適切な位置で区切ります。本文用のフォントは Lucida Bright と Lucida Sans を丁寧にビットマップ化したもので、太字や斜体も一文字ずつ描き起こされています。表紙をサムネイルで並べる本棚UIや、単語の意味を引く辞書機能、気になったページに折り目を付ける機能なども入っていて、今どきの電子書籍リーダーらしい使い心地を目指しています。
ちなみに、電子ペーパー付きの開発ボードとして Arduino や CircuitPython で自作の何かを動かす、という遊び方もできます。
価格と入手できる時期
基本モデルが149ドルで、本体・フロントライト・交換式バッテリー・3Dプリント製ケースが一式そろいます。上位版として、より上質な素材・仕上げのケースをまとった249ドルの「Author’s Edition」も用意されていますが、こちらのケースの具体的な仕様はまだ明かされていません。中身の電子部品は両モデルで同じです。
送料はアメリカ国内が無料、それ以外の地域は12ドル(このほか輸入にかかる税・関税は別途)。発送は2027年4月ごろを見込んでいる、とアナウンスされています。製造は NextPCB のプログラムを通じておこない、心臓部の電子ペーパーパネルは Good Display 製、発送は Crowd Supply の物流パートナーである Mouser 経由になります。
留意点
いくつか押さえておきたい点があります。
まず、これはまだ資金調達中のプロジェクトで、製品はこれから作られる段階です。発送予定は2027年4月ごろとされていますが、クラウドファンディングである以上あくまで見込みで、遅れや品質面のトラブルが起きる可能性もゼロではありません。支援するなら「出荷日を当てにして買う」のではなく、「プロジェクトを応援するつもりで出す」くらいの気持ちが安心です。
また、DRM非対応というのは自由でもあり制約でもあります。AmazonやAdobeのDRMが付いた本、図書館から借りたDRM付きの電子書籍などは、そのままでは読めません。読むにはDRMを外す必要があり、これはグレーな領域に踏み込む話になります。手持ちの蔵書がDRM付きばかりだと、思ったほど手軽に使えない可能性があります。
画面サイズも4.26インチと小さめなので、文庫本的な文章を読むには快適でも、マンガや大きめのPDFを見開きで、といった用途には向きません。コメント欄でも、より安い既存端末にコミュニティ製ファームウェアを入れれば近いことができる、という声は出ています。何を重視するかで評価は分かれそうです。
とはいえ、「読書という一つのことだけを、自分の手でコントロールできる形でやる」という方向にここまで振り切った端末は、そう多くありません。自作やオープンハードウェアが好きな人にとっては、値段以上に刺さる一台になりそうです。今後の展開も追っていきたいところです。


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