屋根いっぱいにソーラーパネルを敷ければ電気はたくさん作れます。でも、置ける場所が限られていて、しかも欲しいのが「電気」ではなく「暖かさ」だったら? そんなときは、光を電気に変えるより、光の熱をそのまま空気に移してしまうほうが理にかなっている、という発想があります。それを自作パネル5種で実際に比べた人がいます。
太陽電池が取りこぼす熱
いまの太陽電池(PV)は、当たった光のエネルギーのうち電気にできるのはおよそ2〜3割にとどまります。残りの多くは熱として逃げていきます。広い屋根や土地があるなら、変換効率が多少低くても枚数でカバーできます。けれど、狭い面積で家をあたためたいような場面では、同じ光からもっと多くのエネルギーを取り出せる方法のほうが向いています。
そこで出てくるのが「太陽熱で空気をあたためる」パネルです。仕組みはシンプルで、日光で熱くなった面に空気を通し、あたたまった空気を部屋へ送るだけ。電気を経由しないぶん、光の熱を素直に暖房へ回せます。
空気を直接あたためる仕組み
今回パネルを作って実測したのは〔Greenhill Forge〕という作り手です。基本の構造はどれも共通で、浅い箱の内側を黒くし、上面以外の背面と側面を断熱材で包みます。太陽に向けて傾けた箱の中で、日光を吸った黒い面に沿って空気が流れ、あたたまって出ていく——これが1枚のパネルです。大きさはどれも約2平方メートルで揃えてあります。

ここで効いてくるのが、透明な覆い(グレージング)です。パネルの上面をポリカーボネートの板で覆うと、内側にこもった熱が逃げにくくなり、いわば小さな温室のように働きます。5枚のうち1枚を「覆いなし」の基準(コントロール)にして、覆いの効果そのものを測れるようにしているのがうまいところです。
5種類のパネルと構成の違い
覆いの有無に加えて、熱を受け止める集熱面の作りと、そこへの空気の通し方を変えています。大きく分けると、黒い波板(波打った鉄板)の表側や裏側に空気を流すタイプと、黒い網(スクリーン)を何層か重ねて、その隙間に空気を通すタイプです。整理すると次のようになります。
| 構成 | 覆い(グレージング) | 集熱面 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 基準パネル | なし | 黒い波板 | 覆いの効果を測るための基準 |
| 波板タイプ(複数) | ポリカーボネート | 黒い波板 | 空気の流し方を変えて比較 |
| 網タイプ | ポリカーボネート | 黒い網を数層 | 層の隙間に空気を通す |

効率の測定には、以前の別プロジェクトで使っていた熱電対(温度を測るセンサー)のセットを流用しています。同じ日差しの下に全パネルを並べ、どれがいちばん熱を集められるかを比べました。
意外な勝者は「網」
結果は本人も驚いたそうで、いちばんよく熱を集めたのは、黒い網を重ねたタイプでした。がっちりした波板よりも、細かい網の層のほうが空気とふれる面が増え、流れの邪魔も少ないため、というのが一般的な説明です。じつはこの「網タイプが強い」という傾向は、DIYで太陽熱集熱器を作ってきた人たちの間では以前から知られていて、作りやすさと安さも相まって定番のひとつになっています。今回の結果も、その流れに沿ったものと言えます。
1枚あたり約100ドルという手頃さ
見どころは性能だけではありません。1枚あたりのコストはおよそ100ドル(日本円ではざっと1万数千円)で、市販の太陽熱パネルよりずっと安く自作できます。燃料も系統電力も使わずに部屋をあたためられる装置がこの値段で組めるなら、試してみる価値は十分にあります。
この結果をどう受け止めるか
ただし、鵜呑みにするのは禁物です。作り手自身が何度も断っているとおり、この種のパネルは物理的な構成のわずかな違いに非常に敏感で、今回の比較も「これで決着」と言えるほど厳密な試験ではありません。網の重ね方や空気の流路が少し変わるだけで順位は入れ替わりうる、という前提で見ておくのがよさそうです。
もうひとつ、パネル単体の集熱効率が高いことと、家全体の暖房として得かどうかは別の話です。あたためた空気を必要な場所まで運ぶ途中で熱は逃げますし、そもそも暖房が欲しい季節や地域によっては、太陽光発電とヒートポンプを組み合わせたほうが総合的に有利になる場合もあります。夜間や曇りの日には熱が得られない、という空気集熱ならではの弱点もあります。あくまで「狭い面積で、日中に、直接あたたかい空気が欲しい」用途で光る手法、という距離感でとらえておくとちょうどよいはずです。
とはいえ、身近な材料で作れて、実際に測って比べてみると意外な構成が勝つ——という一連の流れは、見ていて素直に面白いものです。自分の環境ならどう作るか、と考える出発点として、よくできた題材だと思います。
製作と実測の様子は〔Greenhill Forge〕の動画で公開されており、今回の紹介元はHackaday の記事です。オリジナルの検証はこちらの動画で確認できます。


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