アルテミスIII、月着陸の「リハーサル」を2027年に地球軌道で実施へ

科学・宇宙
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NASAが、有人月面着陸の「予行演習」を2027年に行うと発表しました。ミッション名はアルテミスIII。宇宙飛行士がオリオン宇宙船で地球のすぐ上の軌道へ上がり、別々に打ち上げられた2機の月着陸船——SpaceXのスターシップとブルーオリジンのブルームーン——と順番にランデブー・ドッキングして、本番で必要になる手順をひととおり確かめる計画です。月面に人が降り立つのは1972年のアポロ17号が最後なので、この演習は半世紀ぶりの月面帰還に向けた、具体的なマイルストーンということになります。

アルテミスIIIの新しい役割

アルテミスIIIというと、もともとは「有人月面着陸を果たすミッション」として知られていた名前です。ただNASAは2026年に計画を見直し、着陸の前に実施するデモミッション(実証飛行)としてアルテミスIIIを再設定しました。月面着陸の本番は、2028年に予定されているアルテミスIVが担います。

今回のアルテミスIIIは月へは行かず、舞台は地球低軌道です。飛行士はSLSロケットで打ち上げられるオリオン宇宙船に乗り込み、軌道上で待つ着陸船のテスト機とドッキングの練習をします。NASAはこれを月着陸の「ドレスリハーサル(本番さながらの通し稽古)」と位置づけていて、ここで得たデータを、月で行う無人の実証ミッションの結果と合わせて、有人着陸の安全確認に使う予定です。

3本のロケットによる連続打ち上げ

このミッションの見どころのひとつが、打ち上げの段取りです。NASAのSLS、SpaceXのスターシップ/スーパーヘビー、ブルーオリジンのニューグレンという、いずれも世界最大級のロケット3本を、短い期間に立て続けに打ち上げます。

順番はまずブルーオリジンから。ブルームーンのテスト機を先に打ち上げて「駐機軌道」に乗せ、最長30日間そこで待機させながらシステムの点検を進めます。続いてケネディ宇宙センターの39B発射台からSLSが飛行士を乗せたオリオンを打ち上げ、軌道上でブルームーンとランデブー・ドッキング。その試験が終わったあとにSpaceXがスターシップのテスト機を打ち上げ、今度はそちらとオリオンがドッキングする、という流れです。すべての試験を終えたら、オリオンは飛行士を乗せて地球に帰還します。

アルテミス計画の責任者ジェレミー・パーソンズ氏は、複数の発射台にまたがる打ち上げと地上・飛行の運用が絡み合うこのミッションを「入念に振り付けされたダンス」にたとえ、NASAがこれまで手がけた中でも特に複雑で野心的なミッションのひとつになると述べています。

ブルームーンでの機内確認

2機の着陸船のうち、飛行士が実際に中へ入るのはブルーオリジンのブルームーンだけです。テスト機といっても、将来の有人着陸機「マーク2」の設計をベースに、アビオニクス(電子機器)や飛行制御ソフトウェア、生命維持装置、クルーキャビンといった主要システムを実機と同じように積んでいます。ここで確かめた運用手順を、そのまま月への有人飛行に引き継げるようにするためです。

ドッキング後、最大2人の飛行士がオレンジ色のオリオン用与圧服を着てハッチを開け、ブルームーンの内部に入ります。船内には、計測器を仕込んだ月面用宇宙服の質量シミュレータ(重さや大きさを模した人形)も載せられていて、キャビン内の環境をリアルタイムで記録します。無人試験飛行のアルテミスIで、オリオンに乗ったマネキン「ムーニキン」と同じ役どころです。

スターシップとのドッキング試験

一方のSpaceXは、開発中の最新型スターシップ「バージョン3」をベースにしたテスト機を飛ばします。全長は約52メートル。オリオンとつながるためのドッキング機構を機首に追加していて、オリオンとは機首同士を突き合わせる形(ノーズ・トゥ・ノーズ)で結合します。側面のクルーキャビンの隣にドッキングするブルームーンとは、つなぎ方からして異なります。

ただし、こちらは飛行士が乗り移ることはありません。目的は、オリオンとスターシップを実際に結合させたときの機体の挙動や、制御・通信がどう働くかを確かめること。ドッキング中は、ブルームーンのときはオリオン側のソフトウェアが結合した機体全体を制御し、スターシップのときはスターシップ側が制御を受け持つ計画で、ハードとソフトの相互運用性も試されます。なお、ドッキング機構そのものの地上試験は、SpaceXが2023年に、ブルーオリジンが2026年前半にそれぞれ済ませています。

地球低軌道で行う理由

わざわざ月ではなく地球のそばで練習するのには利点があります。オリオンが円軌道を飛ぶことで、3本のロケットいずれも1回の打ち上げで目標高度に届き、月ミッションよりも打ち上げの機会(ウィンドウ)を多く確保できます。何かあってもやり直しがききやすい環境で、ランデブー・ドッキングの手順、地上局や管制センターのデータのやり取り、連続打ち上げの地上作業まで、本番と同じ役割分担で通しの練習ができるわけです。

本番の月ミッションでも、着陸船を先に軌道へ送っておき、あとから打ち上げたオリオンと合流する「デュアルローンチ」方式が使われる予定です。オリオンが追いかける側(チェイサー)、着陸船が目標側(ターゲット)という役割分担も月での本番と同じ構成なので、今回の演習がそのまま予習になります。

留意点

今回の内容は、あくまで2026年7月時点でNASAが公表した計画です。実施は2027年、着陸本番のアルテミスIVは2028年と案内されていますが、アルテミス計画はこれまでも機体の開発状況に合わせてスケジュールや構成が変わってきました。アルテミスIII自体、当初の「着陸ミッション」から今回の「軌道上デモ」へと役割が変わった経緯があります。着陸船のテスト機の設計も今後1年かけて煮詰めていく段階とされているので、日程や細部は今後動く可能性がある、という前提で見ておくのがよさそうです。

出典

この記事は、以下の情報をもとに書いています。

How NASA’s Artemis III Lander Test Will Pave Way for Moon Landings(NASA・2026年7月15日)

NASA’s Artemis III Lander Test Will be a “Dress Rehearsal” for Returning to the Moon!(Universe Today・2026年7月19日)

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