太陽系にいちばん近い単独の星、その惑星4つが「生命に絶望的」な理由

科学・宇宙
スポンサーリンク

太陽系にいちばん近い「単独の」恒星、バーナード星。そのまわりを回る4つの惑星が、生命にとってかなり絶望的な環境らしい——そんな研究結果が発表されました。しかも面白いのは、惑星そのものを覗き込んだのではなく、恒星の成分から惑星の中身を推理したという点です。

ケンブリッジ大学の研究チームが、バーナード星の化学組成を手がかりに4惑星の姿を描き出し、その成果を天文学の専門誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に発表しました。

バーナード星と4つの惑星

バーナード星は、地球から6光年弱の距離にある赤色矮星(太陽より小さく暗い恒星)です。太陽系に最も近い恒星系はアルファ・ケンタウリですが、あちらは3つの星がセットになった連星系。単独の恒星としては、バーナード星が最も近いご近所さんになります。

この星のまわりでは、2024年から2025年にかけて4つの惑星が相次いで確認されました。どれも地球や金星より小さく、火星より大きいというサイズで、こういう「地球未満」の惑星(サブアース)は太陽系には存在しません。近くて、しかも太陽系にないタイプの惑星が4つも——となれば、当然「生命はいられるのか?」が気になります。

恒星の成分から惑星の中身を読む

とはいえ、これらの惑星は小さすぎて、表面や内部を直接観測することはできません。そこで研究チームが使ったのが、惑星ではなく親星のほうを調べるという手です。

恒星と惑星は、もともと同じガスと塵の円盤から生まれます。だから恒星の化学組成を細かく調べれば、そこから生まれた惑星がどんな材料でできているかを推定できる、という理屈です。バーナード星の光を分析したところ、この星は他の恒星と比べてマグネシウムが際立って多いことがわかりました。つまり、惑星たちもマグネシウムをたっぷり含んでいる可能性が高いのです。

水を蓄えにくい鉱物ペリクレース

マグネシウムが多いと、何がまずいのでしょうか。

地球の場合、マグネシウムは主にかんらん石(オリビン)という鉱物になります。かんらん石は地球の内部に水を蓄えるうえで大事な役割を果たしていて、いわば地下の貯水タンクのような存在です。ところがバーナード星の惑星では、マグネシウムが多すぎるせいで、ペリクレース(酸化マグネシウム、MgO)という別の鉱物が大量にできるとチームは推定しました。ペリクレースは地球にもありますが、地下数百kmまで潜らないと見つからない珍しい鉱物です。そしてこのペリクレースは、かんらん石ほど水をうまく蓄えられません。

つまり、惑星の材料の時点で「水を保持しにくい体質」だった、というわけです。

大気を保てない近さ

鉱物の話だけでも厳しいのに、追い打ちがあります。4つの惑星はどれも恒星のすぐそば、地球-太陽間の距離のわずか1〜4%のところを回っているのです。いちばん外側の惑星でさえ、水星が太陽を回る距離の10分の1しかありません。

これほど近いと、恒星からの放射やフレアを浴び続けることになります。惑星が小さくて重力も弱いため、大気はどんどん宇宙空間へ吹き飛ばされてしまいます。チームの見積もりでは、大気を保てたのは長くてもおよそ20億年。バーナード星の系はおよそ100億歳とみられるので、仮に大気があったとしても、はるか昔に失われている計算になります。

さらに、これだけ恒星に近いと潮汐固定という状態になります。月がいつも同じ面を地球に向けているのと同じで、惑星の片面はずっと昼、もう片面はずっと夜。水を蓄えにくく、大気もなく、昼側は放射にさらされっぱなし——生命にとって歓迎できる要素が見当たりません。

系を守る軌道の共鳴

研究からは、環境の厳しさとは別に興味深いこともわかっています。バーナード星の系のようにぎゅっと詰まった惑星系は、惑星どうしの重力の引っ張り合いで不安定になりがちで、衝突したり、恒星に落ちたり、系の外へ弾き飛ばされたりすることがあります。

ところがこの系では、内側3つの惑星の公転周期がきれいに9:12:16の比になっていました。これは軌道共鳴と呼ばれる状態で、木星の衛星イオ・エウロパ・ガニメデの軌道(1:2:4)を安定させているのと同じ仕組みです。この「軌道のハーモニー」が、バーナード星の惑星たちを重力の混乱から守っているのかもしれません。

今後の観測との接点

生命に向かない、という結論だけを見ると残念なニュースに思えますが、この研究の価値はむしろ手法のほうにあります。小さな惑星は直接調べるのが難しい。でも親星の組成なら測れる。この「恒星と惑星の組成を結びつける」考え方は、これから見つかる惑星の住みやすさを見積もるときの、有力な物差しになりそうです。

大きな惑星に比べて、地球より小さい惑星は見つけにくく、今回のようなサブアース惑星はまだほとんど知られていません。ESA(欧州宇宙機関)のPLATOのような次世代の惑星探査ミッションが動き出せば、この偏りは減り、小さくて岩石質の——地球に似たサイズの——惑星がどんどん見つかっていくはずです。そのとき今回の手法が活きてきます。

解釈上の留意点

この研究は査読を経てMNRAS誌に掲載されていますが、惑星の鉱物組成はあくまで恒星の化学組成からの推定で、惑星そのものを直接分析したわけではありません。ペリクレースに富むという話も、大気が失われたという話も、モデルにもとづく見積もりです。「生命がいないと確認された」のではなく、「生命に必要な条件がそろっている可能性は非常に低い」という結果だと受け取るのがよさそうです。

出典

ケンブリッジ大学プレスリリース:Astronomers find nearby planets to be small, strange, and utterly uninhabitable(2026年7月15日)

解説(Universe Today):Astronomers Determine that Exoplanets Around Barnard’s Star are Extremely Uninhabitable(2026年7月20日)

元論文:Xander Byrne ほか「The Barnard’s Star Planetary System: Stability, Composition, and Evolution of Four Sub-Earth Exoplanets」Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(2026年):DOI: 10.1093/mnras/stag1207

コメント

タイトルとURLをコピーしました