インドの「空飛ぶタクシー」に一歩、eVTOL実証機Sylla 1.0が飛行試験を終える

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インドのスタートアップが、小型車ほどの重さがある電動の機体を、滑走路なしで真上に浮かせて飛ばした——という話です。バンガロールのSarla Aviation(サーラ・アビエーション)が、本番機を半分に縮めてつくった実証機「Sylla 1.0(シラ1.0)」の飛行試験を一通り終えたと発表しました。同社は、この重量級の電動機で垂直に離陸したのはインド国内で初めてだと主張しています。

「空飛ぶタクシー」に向けた半スケール実証機

Sylla 1.0は、乗客を乗せる機体そのものではありません。将来つくりたい本番の「空飛ぶタクシー」に向けて、設計や部品の組み合わせが実際に成り立つかを確かめるための試験機です。本番機を半分の大きさに縮めた「半スケール」で、翼幅は約7.5メートル。重さは700キロ級で、小型の乗用車1台ぶんくらいにあたります。

eVTOL(イーブイトール)は「電動で垂直に離着陸する航空機」の略で、ヘリコプターのように真上へ上がれるので滑走路がいりません。都市の渋滞の上を飛び越えて短い距離を移動する乗り物として、世界中で開発が進んでいます。Sarlaもその一社で、会社名はインド初の女性パイロット、サーラ・タクラルにちなんでいます。

6か月におよぶ飛行試験の中身

今回終えたのは、この機体を実際に飛ばしながら各部の働きを確かめる一連の試験です。会社の説明では、約6か月かけて500回を超えるテストを行い、飛行時間は18時間を超えたとのこと。電動の推進系、バッテリーの構成、機体を支える構造や着陸脚、そしてそれらを束ねる制御ソフトウェアを、ばらばらにではなく「ひとつの機体としてまとまって動くか」という視点で見ていったといいます。

この機体は、図面から実際に空へ上がるまでを1年足らずで駆け抜けました。予算は1300万ドル未満(日本円でおよそ20億円ほど)で、世界のeVTOL開発と比べても速く安く進めたことを同社は強調しています。

翼に推進器を分散させる設計

Sylla 1.0の特徴のひとつが「分散推進」です。ヘリコプターのように大きなローター(回転翼)を1か所に置くのではなく、小さな推進器を翼にいくつも並べて力を分散させる方式をいいます。一部が止まっても他でカバーしやすく、騒音や効率の面でも利点があるとされ、いま世界のeVTOL開発で主流になりつつある考え方です。

電気の流し方にも特徴があります。機体は400ボルトの電動系(モーターへ電気を送る仕組み一式)で動いており、電圧を高めにとることで、大きな機体を動かすのに必要な電力を効率よく流せるようにしています。

同社が主張する国内初の数々

Sarlaは、今回のSyllaでインドの電動航空にとっての「初」がいくつも達成されたとしています。700キロ級の電動機を自国でつくって垂直離陸させたこと、400ボルトの電動系で飛ばしたこと、翼に推進器を分散させる方式を実証したこと、そして耐空性(安全に飛べるかの基準)に沿った地上試験を一通りこなしたこと——これらをそれぞれ国内初だと説明しています。

ただし、これらはあくまで同社自身の発表にもとづく主張です。インドではeVTOLの開発企業が増えており、たとえば別の会社ePlaneは先月、自社機がインド初の実物大eVTOL試作機だと述べています。「何が初か」は数え方や条件のとり方で変わるので、鵜呑みにせず「同社はこう言っている」という距離感で受け止めておくのがよさそうです。

次の課題は巡航飛行への遷移

今回のSylla 1.0で確かめられたのは、垂直に上がってその場に留まる「ホバリング」までの段階です。空飛ぶタクシーを成り立たせるには、この浮いた状態から、翼で機体を支えながら前へ進む「巡航」へなめらかに切り替える必要があります。ヘリコプターのように浮くモードから飛行機のように飛ぶモードへ移る、この乗り換えがいちばんの難所とされています。

Sarlaはすでに次の実証機「Sylla 2.0」の開発に入っており、まさにこのホバリングから巡航への遷移に挑むとしています。ここを越えられるかどうかが、人を乗せられる機体をつくれるかの分かれ目になります。

量産機「Shunya」という最終目標

これらの実証を積み重ねた先にあるのが、本番の量産機「Shunya(シューニャ)」です。パイロット1人と乗客6人(座席の配置しだいで4人)を運ぶ想定で、翼には7基の推進器を備える設計。バッテリーに加えて燃料タンクも積むハイブリッド構成で、最大でおよそ800キロの航続を目指すといいます。空港と市街地の間をつなぐような移動を、渋滞に邪魔されずにこなすのが狙いです。

とはいえ、実際に人を乗せて商業運航にこぎつけるには、機体の完成だけでなく、当局の認可や離着陸場所の確保といった課題も残ります。eVTOL業界では、資金の潤沢な海外の大手ですら認証のスケジュールが当初予定より遅れがちで、こうした計画は長い目で見ておくのが無難です。

受け止め方の留意点

整理すると、今回のニュースは「乗れる空飛ぶタクシーができた」ではなく、「その手前の実証機が、飛ばしながら各部の成り立ちを確かめる段階を終えた」という話です。半スケールの試験機がホバリングまでを実証した、というのが正確なところ。派手な一発の飛行ではなく、500回を超える地道な試験を重ねたという進め方は、堅実な検証だと受け取れます。次のSylla 2.0で巡航への遷移を見せられるかが、続いて注目すべきところになりそうです。

出典

India’s largest eVTOL demonstrator completes flight tests to propel its homegrown air taxi ambitions(New Atlas)

Sylla Flight Test Campaign(Sarla Aviation 公式発表)

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