銀河どうしがぶつかって合体するのは、宇宙ではめずらしくない。ただ、その多くは2つの銀河が1組になるパターンで、3つ、4つとなるとぐっと数が減る。ところが今回報告されたのは、太陽の1000億倍規模の巨大銀河が6つ、一度にひとつへとまとまりつつある、という系だ。中国科学院のZ.L. Wenさんらのチームが、arXivに投稿したプレプリント(査読前の論文)で記述した。
6つの巨大銀河がまとまる合体系
舞台になっているのは、WHY J0501(正式名はWHY J050106.2+013714)と呼ばれる銀河団だ。赤方偏移(z)は0.151。宇宙全体の歴史から見ればかなり手前で、ざっくり20億光年ほど先という「近傍宇宙」にあたる。遠い昔の宇宙の話ではなく、比較的近くで起きている現象だという点は押さえておきたい。
その中心に、6つの大きな銀河が身を寄せ合うように集まり、互いに引き裂き合いながらひとつの巨大な銀河へと融合しつつある。こうして銀河団の真ん中にできあがる、飛び抜けて明るく大きな銀河を「ブライテスト・クラスター銀河(BCG=銀河団の中でいちばん明るい銀河)」と呼ぶ。銀河団の中心にある“ボス”のような存在で、まわりの銀河を次々に取り込んで育つと考えられている。今回の系は、そのBCGがまさに生まれつつある現場をとらえたもの、というわけだ。

この系が最初に見つかった経緯
じつは、この銀河団そのものは新発見ではない。2018年に、2MASS(2ミクロン全天サーベイ)やWISE、SuperCOSMOSといった全天をくまなく観測するサーベイによって、すでに存在は知られていた。ただ、その中心に6つもの銀河が寄り集まって合体している、と見抜いたのは今回が初めてだ。
その手がかりは、DESI(暗黒エネルギー分光装置)レガシー・サーベイのデータの中に埋もれていた。アリゾナとチリにあるメイヨール、ボック、ブランコの各望遠鏡の観測から、研究チームは6つの巨大な銀河がひとかたまりになって合体していく様子を分解して見せた。さらにその周囲には、差し渡し310キロパーセク——およそ100万光年に広がる、ぼんやりとした光の“もや”があることもわかった。「銀河間光」と呼ばれるこの光は、合体の激しい動きによって、もとの銀河から引きはがされた星々が放つものだ。天の川銀河の円盤の直径がおよそ10万光年なので、その10倍ほどの範囲に、はぐれた星の霧が広がっている計算になる。
数字で実感する合体のスケール
「6つの銀河」と聞いても、正直そこまでの迫力は感じないかもしれない。ところが、一つひとつの銀河の大きさを知ると印象が変わる。6つのうち5つは、それぞれ太陽の1000億倍を超える質量を持つ。星の数にして、およそ1000億個。これは天の川銀河に匹敵する規模の銀河だ。その天の川級の巨大銀河が5つ、そこにもうひとまわり小さい6つ目が加わって、まとめて一気にぶつかり合っている。
合体しきったあとの銀河は、星の総質量が太陽の約1.16兆倍になると見積もられている。天の川銀河が抱える星をぜんぶ集めた質量の、ざっと20倍近い。これは、これまでの銀河団のスケール則(大きさや質量の間に成り立つ経験的な関係)が予想する値より、2.6標準偏差ほど高い。統計的に見ても「かなり外れた大きさ」ということだ。完成すれば、人類が知る中でも最大級の銀河のひとつになる。ただし、その合体が完了するまでには、およそ8億年から19億年という時間がかかると見込まれている。
もうひとつ、この系のまれさを物語る数字がある。研究チームはDESIのデータから近傍の銀河団を52,803個も調べ上げたが、そのうち4つを超える銀河が合体しているのは、このWHY J0501ただ1つだった。4つの銀河が合体する「四重合体」でさえ12例しか見つかっておらず、2つが合体する「二重合体」は同じサンプルの中に2,233例もある。つまり、6つが一度に合わさるという今回の系は、5万を超える銀河団の中でも文字どおり例外的な存在だといえる。
X線がとらえた乱れた力学
この論文が力を入れているのが、系がまだ「落ち着いていない(unrelaxed)」ことを実際のデータで示した点だ。落ち着いていない、というのは控えめな言い方で、実際には6つの巨大銀河がぶつかる合流点で、星がすさまじい勢いで四方に飛ばされているような激しい状態を指す。
その証拠づかみに使われたのが、比較的新しいアインシュタイン・プローブ(Einstein Probe)に搭載された追観測用X線望遠鏡「FXT(Follow-up X-ray Telescope)」だ。銀河団の中は、目には見えない超高温のプラズマ(電離したガス)で満たされている。FXTの観測からは、そのプラズマが大きく「スロッシング」——洗面器の水が揺れるように、あちこちで波打って動いている様子が見えてきた。加えて、衝突によってできたとみられるプラズマの“尾”も見つかった。ガスがこれだけ揺れているということは、この銀河団がまだ激しく動いている、力学的に若い状態だという裏づけになる。実際、論文でもX線の温度は約2.8keV、全体の明るさ(X線光度)はおよそ9.4×10⁴³エルグ毎秒と測定され、乱れた銀河団の特徴とよく合っている。
この観測が持つ意味
宇宙で最大級の銀河が、どうやってあれほど巨大に育つのか。その答えの有力候補が「何度もの合体」だ。今回のように極端な例——5万分の1という希少な現場——をていねいに調べることは、そのしくみを解き明かす近道になる。
しかも銀河の合体は、宇宙の時間スケールで見ればまばたきほどの短い期間で進む。だからこそ、進行中の現場を押さえられれば、それが変化していく様子を追いかけられる。天の川銀河もいずれ、お隣のアンドロメダ銀河などと合体すると考えられている。私たち自身がその渦中に入る前に、外側から一部始終を眺められる例が見つかったこと——それがこの観測のありがたさだといえる。
解釈上の留意点
この研究はarXivに公開されたプレプリントで、まだ査読を経ていない。数値や結論は、今後の検証で調整される可能性がある。また合体の完了までにかかる時間(8億〜19億年)や最終的な質量は、あくまでモデルにもとづく見積もりで、確定した値ではない。とはいえ、複数の望遠鏡と新しいX線ミッションのデータを組み合わせて、まれな系を多面的に描き出した観測であることは間違いない。
出典
Z. L. Wen ほか「A rare sextuple-merging brightest cluster galaxy system in a disturbed galaxy cluster observed with the Einstein Probe Follow-up X-ray Telescope」(arXivプレプリント、査読前)
https://arxiv.org/abs/2606.17700
解説記事(Universe Today、2026年7月3日付、Andy Tomaswick)
Astronomers Spot an Extremely Rare Galaxy Mega-Merger


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