マグネター誕生の瞬間を初めてとらえた——超新星の“さえずり”が明かした宇宙の謎

科学・宇宙
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宇宙でいちばん明るい部類の星の爆発を、いったい何が裏で動かしているのか——長年の謎に、はっきりした答えが出ました。約10億光年かなたの超新星から届いた奇妙な「さえずり」のような信号が、強烈な磁場を持つ中性子星「マグネター」が生まれる瞬間をとらえていた、という報告です。マグネターの誕生を直接見たのは、これが初めてとされています。

つまり、これまで「理屈のうえではいるはず」と考えられてきた爆発の“エンジン”を、はじめて観測でつかまえた、という話です。

超新星の中でも飛び抜けて明るい爆発

太陽よりずっと重い星は、一生の最後に超新星爆発を起こします。中心の芯が自らの重みで一気につぶれ、外側の層を宇宙空間へ吹き飛ばす。これが超新星です。

そのなかに、ふつうの超新星より10倍以上も明るく輝くものがあります。「超高輝度超新星(ちょうこうきどちょうしんせい)」と呼ばれる、飛び抜けた爆発です。2000年代初めに見つかって以来、天文学者を悩ませてきました。というのも、芯がつぶれて外層が吹き飛んだあと、ふつうならだんだん暗くなっていくはずなのに、これらは長いあいだ強烈に光り続けるからです。爆発のエネルギーだけでは説明がつかない。何か別の“燃料”が中にあるとしか思えない、という状況でした。

2010年に立てられた仮説

この謎に一つの答えを出したのが、2010年に発表された理論です。カリフォルニア大学バークレー校の理論天体物理学者ダン・ケイセン氏が、共同研究者とともに提案しました(同じ考えは別のグループからも独立して出ています)。

その中身はこうです。重い星がつぶれるとき、芯はブラックホールになる一歩手前で踏みとどまり、ぎゅっと圧縮された中性子星になることがある。もとの星が強い磁場を持っていれば、つぶれる過程でその磁場がさらに桁違いに増幅され、ふつうの中性子星の100〜1000倍という猛烈な磁場を持つ天体が生まれる。これがマグネターです。直径はわずか16kmほど、小さな街がすっぽり収まるサイズなのに、生まれたては1秒間に1000回以上という信じがたい速さで自転します。

この高速で回るマグネターが、まわりに残った爆発のかけらへエネルギーを注ぎ込み続ける。だから超新星は長いあいだ明るく光れる——。理屈としては通っていました。ただ、決定的な問題が一つ残っていました。厚い爆発のかけらに包まれて、肝心のマグネターそのものを直接“見た”人は、これまで誰もいなかったのです。

ふつうと違う光り方をした超新星

今回の主役は、2024年12月に見つかった「SN 2024afav」という超高輝度超新星です。地球から約10億光年。世界27台の望遠鏡をつないだラス・カンブレス天文台のネットワークが、200日以上にわたって明るさを追い続けました。

解析にあたったのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の大学院生ジョセフ・ファラー氏らのチームです。追跡を続けるうちに、この超新星がふつうと違う光り方をしていることに気づきます。爆発から50日ほどでピークを迎えたあと、なめらかに暗くなっていくのではなく、明るさが波打ちながら下がっていったのです。しかもその波のリズムが、だんだん速くなっていく。山が4回。この、周期がしだいに縮んでいく揺れを、彼らは音がだんだん高くなる鳥のさえずりになぞらえて「チャープ(chirp)」と呼びました。

これまでの超高輝度超新星でも、暗くなる途中に山が1〜2回できることは知られていました。でも、4回も連なり、しかも周期がきれいに縮んでいくものは、誰も見たことがありませんでした。

アインシュタインの理論で解けた仕組み

この不思議なチャープを、チームは一般相対性理論で説明しました。超新星の物質の一部がマグネターに向かって落ち戻り、そのまわりに物質の円盤(降着円盤=こうちゃくえんばん)ができる。まわりの物質が均等にそろっているわけではないので、この円盤は中性子星の自転軸に対して少し傾いた状態になります。

ここで効いてくるのが、一般相対性理論の予言する現象です。回転する重い天体は、まわりの時空を少し引きずって回します。すると、傾いた円盤は独楽(こま)のようにゆらゆらと首を振り始める。この“首振り”はレンズ・サーリング効果と呼ばれます。ゆれる円盤がマグネターの光を周期的にさえぎったり反射したりして、システム全体が回転する灯台のように点滅する。そして円盤がマグネターへ近づいていくほど首振りは速くなるので、明るさの揺れもだんだん速くなる——これがチャープの正体だった、というわけです。

ファラー氏は、磁場による首振りなど別の可能性も試したものの、時空の引きずりで説明するモデルだけがタイミングとぴったり合った、と述べています。研究チームによれば、超新星の仕組みを説明するのに一般相対性理論が必要になったのは、これが初めてだといいます。

観測データからは、この中性子星の性質も見積もられました。自転の周期は4.2ミリ秒(1秒に約238回転)、磁場の強さは地球の約300兆倍。どちらも、まさにマグネターと呼ぶにふさわしい極端な値でした。つまりチャープは、生まれたてのマグネターが「自分はここにいる」と光で知らせる合図だった、ということになります。

これから確かめられていくこと

この発見は、2010年の仮説を16年越しに裏づけるものになりました。研究に関わっていない専門家からは、これが最も説得力のあるチャープの例だと評価する一方で、決定的な証拠と言い切るにはもう数例ほど似た観測がほしい、という慎重な声も上がっています。チャープを示した超新星は、まだこの1例だけだからです。

その“数例”は、案外早くそろうかもしれません。史上最も広く夜空を見渡す観測を始めようとしているベラ・C・ルービン天文台が本格稼働すれば、同じようにチャープを示す超新星が何十個と見つかると期待されています。

もう一つ、勇み足を避けるための注意もあります。今回の結果は「すべての超高輝度超新星がマグネターで光っている」ことまでは意味しません。爆発の衝撃波が周囲の物質にぶつかって一時的に明るくなる、という別の仕組みもありえます。ただ、少なくともその一部がマグネターで説明できることははっきりした、というのが今回の到達点です。

出典

研究論文(査読済み、Nature 掲載):Lense–Thirring precessing magnetar engine drives a superluminous supernova(Nature)

大学発表:Astronomers capture birth of a magnetar(UC Berkeley News)

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