15万円のジャンク品から復活した、50万円クラスのシネマカメラ

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映画やCMの撮影に使われるシネマカメラは、レンズを付けない本体だけで数十万円から数百万円します。そのうちの一台、REDの「KOMODO(コモド)」の故障品を700ポンド(約15万円)で買い、自分の手で直してしまった人がいます。交換した部品はゼロ。やったことは、分解してガラス板を1枚外し、洗って乾かして戻しただけでした。

この一部始終を記録したのが、映像機材を扱うYouTubeチャンネル「ALT CINE」です。技術系ブログのHackadayが2026年7月25日に取り上げました。

シネマカメラ「RED KOMODO」の立ち位置

REDは2005年創業のアメリカのシネマカメラメーカーです。ハリウッド作品の撮影に数多く使われてきた実績があり、アカデミー賞(技術部門)も受賞しています。2024年4月にはニコンが100%子会社化し、いまは日本の会社の傘下にあります。

KOMODOは、そのRED製品のなかでいちばん手が届きやすい位置にある機種です。2020年に登場した6K対応のカメラで、1辺10センチほどの立方体に近い箱型のボディに、重さは約950グラム。Super35サイズのCMOSセンサー(一般的な一眼カメラのAPS-Cに近い大きさ)を積み、グローバルシャッター(画面全体を一度に読み出す方式で、速く動くものが歪まない)を備えています。

価格は年々下がっていて、2025年3月にはメーカー希望価格が本体2,995ドル(約49万円)まで引き下げられました。発売当初は6,000ドル近くしたので、半額以下です。それでも「ちゃんと動く個体」を中古で探すとなれば、数十万円は覚悟することになります。

700ポンドで手に入れた故障品

ALT CINEが買ったのは、そのKOMODOの故障品でした。値段は700ポンド。動く個体の相場から見れば、明らかに安い部類です。

届いた実物の第一印象は悪くありませんでした。外装にはほとんど使用感がなく、ファームウェアに記録された稼働時間はわずか3時間。ほぼ新品同然の扱われ方をしてきた個体だとわかります。

ところが映像を確認すると、イメージセンサー(光を受けて映像に変える部品)そのものが傷んでいるように見えました。カメラの心臓部であり、ここが本当に壊れていれば、修理費は本体価格に迫ります。

センサー破損という最初の見立て

ここで手を止めずに調べたのが分かれ目でした。似た症状の事例をあたっていくと、傷んでいるのはセンサー本体ではなく、その手前に置かれたガラスの層が剥がれているだけかもしれない、という見込みが出てきます。

デジタルカメラのセンサーの前には、たいていガラス製のフィルターが1枚入っています。細かい模様を撮ったときに出るモアレ(実際にはない縞模様が浮かんで見える現象)を抑えたり、赤外線をカットしたりするための部品です。壊れているのがこのフィルターだけなら、話はぐっと小さくなります。

分解して判明した原因

KOMODOは中身がいくつかのまとまり(モジュール)に分かれた構造をしていて、分解そのものは難しくありませんでした。センサーを収めたブロックを取り出して机の上で観察すると、原因はすぐに見えてきます。

前の持ち主が、センサーを清掃しようとして液体を使いすぎたようでした。その液がフィルターの裏側、つまりフィルターとセンサーのあいだに回り込んだまま乾き、跡が残っていた。つまり「センサーが壊れている」ように見えていたものの正体は、清掃液の拭き残しだったわけです。

あとは単純でした。フィルターを外し、きちんと洗って乾かし、元どおりに組み直す。それだけで、カメラは完全に動く状態へ戻りました。

公式修理サービスの見積もり

REDの修理サービスに出した場合の見積もりは、ガラスフィルターの交換で695ドル(約11万円)、センサーごと交換すると1,395ドル(約23万円)だったとされています。

フィルター交換の695ドルは、700ポンドで買った本体代とほぼ同じ額です。今回のように「洗えば直る」とわかっていれば、その差は小さくありません。実際にかかった費用は、ほぼゼロでした。

とはいえ、この見積もり自体が法外というわけでもありません。50万円近いカメラを11万円で直せるなら、メーカー修理としては妥当な水準です。そもそも修理を受け付けない、あるいはユニットごと交換する道しか用意していないメーカーも珍しくないことを考えれば、金額の選択肢が残っているだけ恵まれた部類に入ります。

ガラスが救えない場合の代替ルート

動画では、フィルターのガラスが洗っても直らないほど傷んでいた場合の手も紹介されています。REDの旧シリーズ「DSMC2」向けのフィルターを、KOMODOに移植するという方法です。

DSMC2はKOMODOより前の世代のカメラで、フィルターをユーザー自身で交換できる仕組みになっていました。撮影の狙いに応じて種類を差し替える使い方が想定されていたぶん、単体の部品として手に入りやすい。それをKOMODOに流用しようという発想です。ただしメーカーが想定した使い方ではないので、確実に成功する手段として紹介されているわけではありません。

同じことを試すときの注意点

捨てるしかなさそうだった高価な機材が戻ってきた事例ではありますが、誰が同じことをしても同じ結果になるとは限りません。

まず、今回は運の要素が大きい。故障の中身が拭き残しで済んだからこそ、洗って終わりました。センサー本体にキズが入っていれば、話はまったく違っていたはずです。ジャンク品を買う時点では、どちらなのかは開けてみるまでわかりません。

作業そのものにも相応の慣れが要ります。センサーを露出させる工程は、ホコリが1粒入るだけで以後の映像すべてに写り込みます。静電気にも弱く、フィルターのような光学部品は指紋ひとつで性能が落ちます。作業環境と手順を整えられる人でなければ、直すつもりで壊す側に回りかねません。

それと、自分で開けた時点でメーカー保証は基本的に切れます。中古のジャンク品ならもともと保証はありませんが、いま動いている機材で同じことを試すのは、まったく別の判断になります。

使った工具や実際の分解の様子は、動画本編で確認できます。英語ですが手元がしっかり映っているので、流れは追えます。

なお、記事中の円換算は2026年7月時点のレート(1ポンド約218円、1ドル約164円)による概算です。

出典

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