ニュースレター配信サービスのSubstackが、投稿の文章がどれくらいAIで書かれたものかを割合で示す判定機能を、自社のアプリに組み込んだ。読者がメニューからボタンを一つ押せば、いま読んでいる記事について「どこまでが人の手によるものか」という数字が返ってくる。導入からおよそ1週間、書き手の側からは「魔女狩り」という言葉が出はじめている。

Substackが組み込んだ判定機能
機能が公開されたのは2026年7月21日。SubstackのCEOクリス・ベスト氏が「Against Claudefishing」と題した投稿で発表した。提携先は、AIが書いた文章の検出を手がける米Pangram(パングラム)だ。
タイトルにある「Claudefishing」は造語で、AnthropicのAI「Claude」の名前を、他人になりすまして相手を釣る「catfishing(キャットフィッシング)」に掛けている。ベスト氏の説明では、問題はAIを使うこと自体でも、出てきた文章の質でもない。読者が「誰かが考えて書いたもの」だと思って時間を注いだのに、その向こうに人がいなかった——という期待と実態のズレを指している。
使い方はごく単純だ。Web版のリーダーかiOSアプリで、記事やノート(短文投稿)、コメント、返信の右上にある三点メニューから「Scan for AI text」を選ぶ。するとPangramの判定が呼び出され、そのテキストのうちどれだけが人の手で書かれ、どれだけがAIの助けを借りたものかが割合で表示される。対象になるのは100語を超える英文で、7月21日以降に公開されたものにかぎられる。過去の記事はさかのぼって判定されない。判定が出るのは読者が求めたときだけで、すべての記事に自動でラベルが付くわけでもない。
Androidアプリは後日対応の予定。動画・音声の投稿、独自ドメインの単独サイトで読んだ場合、メールで届いた記事は、いまのところ対象外になっている。
発表直後に噴き出した反発
導入から1週間後の7月28日、テクノロジーメディアの404 Mediaが、Substackで書いている人たちの反応をまとめて報じた。記事のなかで複数の書き手が使っていた言葉が「魔女狩り」だ。
反発の中身は、大きく二つに分かれている。
ひとつは、実際にAIを使って書いている側からのもの。小規模なニュースレターを運営するマック・コリアー氏は、「AIを使ったことを謝るつもりはない」と投稿した。20年間AIなしで書いてきたし、その気になれば戻れる。ただ戻れば本数は落ち、構成も甘くなり、編集者が要る文章になる——だから使っている、という自己評価つきの主張だ。
もうひとつは、AIをまったく使っていない側からのもの。ゴーストライターでライティング講師のアリス・レミー氏は、この種の検出ツールの精度はひどく当てにならないとしたうえで、誤った告発が一度あるだけで書き手の評判は取り返しのつかないところまで傷つく、と動画で述べている。使っている人も使っていない人も、それぞれ別の理由で不満を抱えている構図だ。
大学教授で『Slow AI』の著者でもあるサム・イリングワース氏は、自身のSubstackに「SubstackのAI検出と魔女狩りの再来」という趣旨のタイトルで長文を投稿した。人間が書いたかどうかを機械に判定させる、という構図そのものへの違和感が出発点になっている。404 Mediaの取材には、検出ツールは英語が母語でない書き手や神経多様性のある書き手に誤った判定を出しやすいうえ、疑いから話が始まるので対話の余地がなくなる、と答えた。そのうえで、書き手が自分の制作過程を説明できる新機能のほうは評価しており、点数を付けるよりそちらを伸ばすべきだという立場をとっている。
Substackの広報担当者は同じ取材に対し、今回の機能は透明性を高めて読者に判断材料を渡すためのもので、AIを使った文章を禁止したり罰したりするものではない、と答えている。プラットフォーム上のおすすめ表示にも影響しないという。
食い違う精度の主張
議論が集まっているのは、結局のところ「Pangramの判定はどれくらい当たるのか」という一点だ。ここで出てくる数字が、提供する側と批判する側でかみ合っていない。
Pangram側の説明はこうだ。同社CEOのマックス・スペロ氏は404 Mediaに対し、誤検知率——人が書いた文章をAIだと判定してしまう割合——を1万件に1件程度(0.01%)と見積もっていると答えている。これは最新モデルについての数字で、あくまで提供元の自称である点は押さえておきたい。誤りを減らす作業は続けている、とも説明している。
まったくの手前味噌というわけでもない。シカゴ大学ベッカー・フリードマン研究所の2025年の作業論文では、2020年より前に書かれた人間の文章1992本とAIの文章1992本を4つの検出ツールにかけ、Pangramの誤検知率0.001、検出漏れ0.01という結果が出ている。ただしこの論文自体が、短い文章では両方の誤りが増えると断っている。Substackの判定対象は100語超と、この試験に使われた文章よりだいぶ短い。

批判側の代表格が、2026年5月30日にThe Atlantic誌が出した記事だ。記者のマッテオ・ウォン氏は、Pangramが人の評判やキャリアを終わらせかねない力を持ちつつあるのに、その判定は世間で思われている以上に間違えている、と書いた。AIだという告発が魔女狩りへ転がりかねない、という警告も添えている。この記事が出たのは、今回のSubstackの発表より2か月ほど前だ。
どちらの言い分にもそれなりの根拠があり、「AI検出はまるで当てにならない」とも「もう完成した技術だ」とも言い切れない、というのが実際のところだろう。
非英語話者への偏りをめぐる経緯
批判のなかでよく持ち出されるのが、「英語が母語でない書き手ほど誤判定されやすい」という指摘だ。これには出どころがある。
2023年、スタンフォード大学のグループが学術誌Patternsに報告した研究で、当時よく使われていた検出ツール7種類を、TOEFLの英作文91本と、米国の中学2年生が書いた作文88本にかけた。米国の生徒の作文はほぼ正確に「人間が書いた」と判定されたのに対し、TOEFLの作文は平均61.3%が「AIが書いた」と誤判定された。
原因は、当時のツールが「文章の予測しやすさ」を手がかりにしていたことにある。語彙や構文の幅が狭い文章は、次に来る単語が読みやすい。機械が書いた文章も同じ性質を持つので、両者の見分けがつかなくなる。実際この研究では、TOEFLの作文の語彙をAIに豊かに書き換えさせたところ、誤判定は61.3%から11.8%まで下がった。書いた人は同じなのに、言葉を選び直しただけで判定がひっくり返ったわけだ。
ただし、これは3年前のツール群についての結果でもある。その後の状況を見ておくと、2026年6月にブリュッセル自由大学のグループが査読誌に載せた研究では、Pangram・GPTZero・Turnitin・Copyleaksの4つを、4000語を超える論文160本(英語を母語としない大学院生が書いたもの、AIが書いたもの、両者の混在、AIの文章を人間らしく手直ししたものが各40本)にかけている。この試験でPangramは、人間が書いた文章を誤ってAIと判定した例がゼロだった。
とはいえ、この研究の著者たちも、検出ツールの結果を重い判断の唯一の証拠にすべきではない、と釘を刺している。長い学術論文での成績が、ニュースレターの短い記事にそのまま当てはまる保証もない。3年前に確認された弱点がいまも残っているとは言い切れず、きれいに消えたとも言い切れない。
検出漏れという別方向の課題
誤検知ばかりが話題になるが、間違いには逆方向もある。AIが書いた文章を「人間だ」と通してしまう検出漏れだ。
2026年6月にコーネル大学とマサチューセッツ工科大学の研究者が公開したプレプリント(査読前の論文)が、この方向を調べている。検出をすり抜けるよう手を加えたAI文章を用意してPangramにかけたところ、AIだと見抜けたのは24.1%にとどまった。
同じ論文の付録には、もうひとつ示唆的な結果がある。GPT-5.4が公開された直後、このモデルに書かせた論文要旨の66%が「完全に人間が書いた」と判定された。すり抜けを狙って手を加えたわけでもない、素の文章での話だ。ただしPangramが2026年5月に新しいモデルを出して以降、この数字は大きく改善している。
新しいAIが出るたびに、検出側が学習し直して追いかける。この繰り返しになっている以上、「誤検知率0.01%」のような数字は、ある時点で、ある条件のもとに測ったものでしかない。数字そのものが嘘というより、有効期限があると考えたほうが近い。
書き手に用意された選択肢
Substackも、判定を一方的に押し付ける形にはしていない。
公開前の下書きの段階で、書き手が自分でPangramにかけて結果を見られる。公開したあとで自分の投稿の判定を無効にすることもでき、切り替えは投稿ごとにできる。判定が間違っていると思えば、その場から報告を送る導線もある。さらに「How I make this(私の作り方)」という欄が新設され、AIをどう使っているか、あるいは使っていないかを自分の言葉で書いておける。読者が判定を呼び出したとき、この説明も一緒に表示される仕組みだ。
ただし、判定を無効にした投稿には、読者側に「AI detection unavailable(判定を利用できません)」と表示される。隠したのではないか、という別の疑いを呼ぶという指摘も出ている。イリングワース氏が評価していたのは、点数のほうではなく、この「How I make this」のほうだった。
Substackはこの機能を出発点と位置づけ、読者が自分のフィードにAIコンテンツをどこまで通すかを設定できるようにする案なども検討中だとして、利用者に意見を求めている。
今回の変化は、AI検出ツールが世に出たことではない。ツールは前からあったし、疑いを持った読者が外部のサイトに文章を貼り付けて調べることもできた。変わったのは、それが読み手のアプリの中に、ボタン一つの機能として据え付けられたことだ。呼び出す手間がほぼゼロになったぶん、出てきた数字がどういう性質のものかを知らないまま受け取る人も増える。反発の芯にあるのは、たぶんそこだ。
出典
Against Claudefishing(Chris Best/The Substack Post・2026年7月21日)
How can I detect AI on Substack?(Substackヘルプセンター)
Substackers Say New AI Detection Tool Is a ‘Witch Hunt’(404 Media・2026年7月28日)
GPT detectors are biased against non-native English writers(Patterns・2023年7月)
Artificial Writing and Automated Detection(シカゴ大学ベッカー・フリードマン研究所 作業論文・2025年)
America Has a Pangram Problem(The Atlantic・2026年5月30日/購読者向け)


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