電子工作の定番センサー、製品に入れるなら避けろ——名指しされた7つ

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Arduino や Raspberry Pi の入門キットを開けると、たいてい同じ顔ぶれが入っている。青い基板の温湿度センサー DHT11、目玉が2つ並んだような超音波距離センサー HC-SR04、白いドームをかぶった人感センサー HC-SR501。どれも数百円で買えて、配線例もサンプルコードもネットに山ほど転がっている。

この定番7種類が「製品に使ってはいけない部品」として名指しされた。製品化を支援する技術者ジョン・ティール氏が公開した動画の内容で、Hackaday が2026年8月2日にまとめている。

先に、いちばん大事な線引きを置いておく。これは「趣味の電子工作で使うな」という話ではない。狙われているのは、量産して売る製品にそのまま組み込むことだ。学ぶために使うぶんには、これらの部品はむしろよくできている。

試作と量産のあいだにある段差

机の上で1台動けばいい試作と、数千台つくって売る製品とでは、部品に求めるものがまったく違う。試作なら「今日買えて、今日動く」で十分だが、量産では話が変わる。半年後も同じ部品が同じ品質で買えるか。1台目と1000台目で同じ値が出るか。壊れ方が予測できるか。仕向け先の法規制を通るか。感電や火災につながる設計になっていないか。

おもしろいのは、7つの部品が引っかかった理由が、それぞれ別の場所にあることだ。通信方式、電源電圧、消費電力、校正の手間、生産終了、環境規制、そして安全設計。ひとつずつ見ていくと、部品選びで見るべき観点がひととおり出そろう。

温湿度センサーDHT11/DHT22の弱点

まず槍玉に挙がったのが、温湿度センサーの DHT11 と、その上位版にあたる DHT22 だ。この2つは1本の信号線でデータをやりとりするのだが、その手順がメーカー独自のもので、I2C や SPI といった業界標準の通信方式ではない。マイコンを載せ替えるたびに、その専用のやりとりを書き直すはめになる。

精度も心もとない。さらに厄介なのが供給面で、信用できるデータシートと安定した入手経路がそろわない。設計に組み込んだあとで「同じ型番なのに前と挙動が違う」が起きやすい部品、ということになる。

代わりに勧められているのは、Sensirion の SHT40/SHT41、Bosch の BME280、Texas Instruments の HDC3020 あたり。いずれも I2C で読めて、メーカーのデータシートがあり、流通も安定している。SHT40 は湿度の典型誤差が25〜75%RHの範囲で±1.8%、温度が0〜75℃で±0.2℃と公表されている。

なお元記事では BMP180 も代替候補に並んでいるが、これは気圧と温度を測る部品で、湿度は測れない。温湿度センサーの置き換えにはならないので、そのつもりで読み替えたほうがいい。

超音波距離センサーHC-SR04の適用範囲

2つ目は超音波距離センサーの HC-SR04。音を出して跳ね返りが戻るまでの時間から距離を割り出す、あの部品だ。試作には十分使えるが、製品向きではないとされた。

理由のひとつは電源電圧で、5V専用のモジュールであること。いまどきのマイコンは3.3Vで動くものが多いので、あいだに電圧を変換する回路が要る。

もうひとつが温度補正の欠落だ。音の速さは気温で変わる。0℃でおよそ331m/s、20℃でおよそ343m/sと、1℃あたり0.6m/s前後の割合で増えていく。距離は「音速×時間」で出しているので、音速が3〜4%ずれれば距離の読みもそのままずれる。気温が一定の室内なら問題にならないが、屋外や温度変化のある場所に置いた瞬間、精度が崩れる。

代替として挙がっているのが、STマイクロエレクトロニクスの VL53 シリーズだ。ただしこちらは音ではなく赤外レーザーの往復時間で測る方式なので、単なる差し替えにはならない。透明なガラスや光を吸う黒い面は苦手で、逆に強い外光の下では距離が出にくい場面もある。用途が単純なら、赤外線の反射を見る安価な部品でも間に合う。

人感センサーHC-SR501のばらつきと消費電力

3つ目は白いドーム状のレンズでおなじみ、焦電型赤外線センサー HC-SR501。人が動いたときに出る赤外線の変化をとらえる部品で、これも試作なら問題ないという扱いだ。

製品に入れられない理由は2つある。個体ごとの動作のばらつきが大きいことと、待機時にも電気を食うこと。電池で何か月も動かしたい機器では、この待機電力が効いてくる。

代わりに名前が挙がるのは、パナソニックの EKMC/EKMB シリーズと、STマイクロの STHS34PF80。とくに後者は毛色が違っておもしろい。従来の焦電型が「動いている物」しか検知できないのに対し、STHS34PF80 は熱そのものを測るため、じっと座っている人も検知できる。フレネルレンズが不要でレンズなしで4mまで届き、視野は80度、動作電流は10µAとされている。

ガスセンサーMQシリーズの校正コスト

4つ目はガスセンサーの MQ シリーズ。金属のメッシュに覆われた円筒形の部品で、MQ-2、MQ-135 といった型番で売られている。

この方式は、内部のヒーターでセンサー材料を200〜300℃まで熱し、そこにガスが触れたときの電気抵抗の変化を読む。だから常に温め続ける必要がある。MQ-2 のデータシートによれば、ヒーターの抵抗は33Ω、加熱にかかる電力は800mW未満。電池駆動の機器とは相性が悪い数字だ。

手間もかかる。同じデータシートには、初回の慣らし運転として24時間以上の通電が要ると書かれている。さらに、値を意味のある濃度に換算するには、既知の濃度の基準ガス(データシートでは1000ppmのLPGまたはイソブタンが推奨されている)を当てて校正する作業が必要になる。これを出荷する製品1台ごとにやるのは現実的ではない。

ガス検知が安全にかかわる用途なら、素性の明らかなメーカーの、データシートがあって工場で校正済みのセンサーを使うべき、というのが元記事の立場だ。

姿勢センサーMPU-6050の生産終了

5つ目は意外な名前かもしれない。加速度と角速度をまとめて測る MPU-6050 は、GY-521 という青い小基板に載って、倒立振子やドローンの姿勢制御に10年以上使われてきた。動作そのものに文句はない。

問題は、部品がもう作られていないことだ。TDK の製品ページを見ると、MPU-6050 のステータスは「Obsolete」——生産終了と明記されている。推奨代替品として ICM-42670-P が示されているが、互換性は保証しないとの注記つきだ。

モジュールはいまも普通に売られているが、単体チップの流通は互換品や刻印し直した品が中心になっている。新しく設計を起こすなら、現行生産の部品から選ぶべき、という話になる。元記事では Bosch の BMI270 と TDK の ICM-42688 が挙がっている。値は張るが仕様は上、という位置づけだ。

もっと一般化すると、「NRND(新規設計非推奨)」の表示がある部品は避けろ、ということになる。センサー以外でも同じで、たとえばオーディオ用の UDA1334A というICは、NXP がとうに製造をやめているのに、いまだにあちこちの作例で見かける。

CdSセルとカドミウム規制

6つ目は CdS セル。硫化カドミウムを使った、明るさで抵抗値が変わる部品で、丸い頭に波形の模様が入った、あの部品だ。自動点灯の常夜灯などで長く使われてきた。

ここだけは、性能ではなく法規制が理由になっている。名前のとおりカドミウムを含むため、EU の RoHS 指令に引っかかる。この指令は、電気・電子機器に含められる有害物質の量に上限を設けるもので、カドミウムはその対象だ。

過去には適用除外の規定もあった。ただし「プロ用音響機器のアナログ・フォトカプラに使うフォトレジスタ」という非常に狭い条件つきで、しかも最後まで残っていたカテゴリー11ぶんも2024年7月21日に失効している。いま新しく設計するなら、除外にすがれる場面はほぼない。

もっとも、性能面でも CdS セルが優れているわけではない。代替として Vishay の VEML7700、TI の OPT3001、Lite-On の LTR-303 が挙げられている。いずれも I2C で明るさをルクスで読めて、機能もずっと豊富だ。ちなみに TI は現在、OPT3001 の上位互換として OPT3004 を案内している。

電流センサーACS712基板の安全設計

7つ目にして、元記事が最も危ないとするのが ACS712 の基板だ。ここは事情がすこし違っていて、ACS712 という IC 自体には問題がない。問題は、それを載せた安価な変換基板のほうにある。

家庭の100Vや200Vを測る用途で売られているにもかかわらず、そうした電圧を扱うのに必要な絶縁の設計がされていない。とくに指摘されているのが沿面距離の不足だ。沿面距離とは、基板の表面をたどったときの、電圧のかかる導体どうしの最短距離のこと。ここが近すぎると、湿気やほこりが積もったときに表面を伝って電気が流れ、測定側の低電圧回路にまで達する。人が触れる部分が感電の経路になりうる、ということだ。

同じ問題は、あちこちで売られている安価なリレー基板にもある。商用電源を機器に取り込むなら、そこだけは素性の怪しいモジュールで済ませない——という結論になる。

日本国内でのカドミウムの扱い

CdS セルの話は EU の規制が前提なので、日本で作る場合はどうなるのかを補っておく。

日本には、RoHS 指令のように特定物質の使用そのものを禁じる法律はない。近いものとして J-Moss(JIS C 0950)があるが、これは資源有効利用促進法にもとづく含有表示の規格で、基準値を超えて含む場合にマークで知らせる仕組みだ。使用を禁止するものではない。

しかも対象は、パソコン、ユニット形エアコン、テレビ受像機、電気冷蔵庫、電気洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機の7品目に限られている。対象物質は鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE の6つ。

つまり、国内向けに小さな IoT 機器を作って売るぶんには、CdS セルが法律で止められるわけではない。ただしその製品を EU に輸出した瞬間、RoHS 指令の話になる。最初から売る先を海外まで見ているなら、CdS を避けておくほうが後の手戻りが少ない。細かい適用範囲は製品や時期によって変わるので、実際に売るときは各法令の最新の条文にあたってほしい。

7つに共通する選定の物差し

7つの型番そのものより、使えるのはその裏側にある問いのほうだ。

信用できるデータシートがメーカーから出ているか。その部品はいま現に生産されているか、それとも NRND や生産終了の表示がついていないか。通信方式は標準的なものか、それともその部品専用の手順か。売る国の環境規制に通るか。商用電源を扱うなら、絶縁の設計がされているか。校正や慣らし運転が要るなら、その工程を出荷1台ごとに回せるか。

この6つを順に当てていくと、今回名指しされた7つはひととおり引っかかる。逆に言えば、この物差しさえ持っていれば、リストに載っていない部品でも自分で判断できる。名前を覚えるより、こちらのほうが長く使える。

解釈上の留意点

これはひとりの技術者が動画で述べた見解であって、業界の合意でも、どこかの規格でもない。「この7つは使ってはいけない」と決まっているわけではないので、そのつもりで受け取ったほうがいい。

許容できるかどうかは、作るものによっても変わる。室内で使うおもちゃと、人の安全にかかわる検知装置とでは、同じ部品でも判断が違って当然だ。逆にいえば、7つのうち何が自分の製品にとって致命的なのかは、自分で切り分ける必要がある。

部品のライフサイクル表示も動く情報だ。この記事で触れたステータスは2026年8月時点でメーカーのページを確認したものだが、設計に入れる前には必ず自分でメーカーの製品ページを見てほしい。数年前の記事や作例を根拠にすると、まさに MPU-6050 と同じ落とし穴を踏むことになる。

出典

The Seven Sensors And Breakout Boards To Avoid In A Product(Hackaday, 2026年8月2日)

John Teel 氏による元動画(YouTube)

MPU-6050 製品ページ(TDK Product Center・ステータスと推奨代替品)

SHT40 製品ページ(Sensirion)

STHS34PF80 製品ページ(STMicroelectronics)

OPT3001 製品ページ(Texas Instruments)

MQ-2 データシート(ヒーター電力・慣らし運転・校正条件)

J-Moss について(JEITA 電子情報技術産業協会)

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