【カンブリア紀の生物】レアンコイリア – 「目のない泥食い」とされていた、鞭をもつ捕食者

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名前レアンコイリア(Leanchoilia)。属名はカナダ太平洋鉄道にあった駅「レアンコイル」にちなむ。模式種の種小名スペルラタ(superlata)はラテン語で「誇張された」の意味
分類節足動物門 メガケイラ類(大付属肢節足動物) レアンコイリア科
時代カンブリア紀(バージェス頁岩の種は約5億500万年前、中国・澄江の種は約5億1800万年前)
発見地カナダ・ブリティッシュコロンビア州(バージェス頁岩)、アメリカ・ユタ州、中国・雲南省(澄江)
全長最大で約12cm(鞭を除く)。研究に使われた標本の多くは2.4〜7cm
記載1912年、チャールズ・ウォルコット

レアンコイリアは、カンブリア紀の海にいた節足動物です。頭の前に「大付属肢」とよばれる一対の腕をもち、その先から3本ずつ、合わせて6本の長い鞭が伸びています。1980年代には「目がなく、泥や死骸を食べる動物」と解釈されていましたが、その後の再研究で目が見つかり、現在は獲物を追う捕食者と考えられています。

姿と体のつくり

体は、一枚の盾でおおわれた頭部と、11の節からなる胴、そして槍の穂先のような形をした尾節に分かれます。頭の盾の先端は、上向きに反った短い角のように突き出しています。胴の各節は左右に板状に張り出し、その縁にはのこぎりの歯のような細かいぎざぎざが並びます。尾節の縁には剛毛が生えていました。殻は三葉虫のように鉱物で固められてはおらず、やわらかい外骨格だけでできています。

最大の特徴である大付属肢は、根元の柄と、その先の爪の部分からなります。爪の部分の3つの要素からそれぞれ長いとげが伸び、その先が細かい環節に分かれた鞭になっています。鞭は周囲を探る感覚器官として働いたと考えられています。いちばん先端には、内側に曲がった4本のかぎ状のとげをもつ小さな要素がついていて、鞭で探り当てたものをここでつかむことができました。感覚器官とつかむ道具が、一本の腕にまとまっていたことになります。

大付属肢より後ろの脚は、どれも同じつくりをしています。1本の脚が根元で二又に分かれ、内側は節のある脚、外側は縁に剛毛の並んだ櫂(かい)のような板になっています。脚の付け根の内側には頑丈なとげの束があり、左右の付け根ではさんで食べ物を砕くことができました。

暮らしと同じ海の生き物

レアンコイリアは、海底近くを泳ぎ、海底の上も移動する動物でした。櫂のような外側の枝は、後ろへ戻すときには抵抗を減らすように折れ、水をかくときには固定される関節のしくみをもっていて、泳ぎに適していたことが2012年の研究で示されています。

化石は、バージェス頁岩のなかでも産出する場所によって数に大きな差があります。有名なウォルコット採石場では群集全体の0.1%ほどしかいませんが、同じ尾根にあるレイモンド採石場では1200点を超える標本が見つかっています。ロイヤル・オンタリオ博物館は1975年以降の調査で、レアンコイリア属の標本を1500点以上集めました。

同じ海には、アノマロカリス、マルレラ、三葉虫のオレノイデス、海底の泥に巣穴を掘るオットイアなどがいました。オットイアはレアンコイリアと同じ岩板の上に並んで見つかることが多い動物です。中国ではレアンコイリアがオットイアのような蠕虫を食べていたとする説も出されましたが、バージェス頁岩の両者は体の大きさがほぼ同じで、捕食者と獲物の関係ではなく、似た獲物をねらう捕食者どうしだったとみられています。

「目のない泥食い」から「目のある捕食者」へ

1912年にレアンコイリアを記載したウォルコットは、この動物に目があると書きました。1935年に再検討したレイモンドも同じ立場でした。ところが、その後の研究で目の存在は疑問視されるようになり、1983年にブルートンとウィッティントンが発表した詳細な再記載では、レアンコイリアは「目をもたない動物」と結論されました。この解釈にもとづいて、暮らしぶりも、鞭で海底を探りながら泥や死骸を食べる動物として描かれました。

見方が変わりはじめたのは2002年です。バターフィールドは、レアンコイリアの腸の両側に並ぶ構造が、リン酸塩に置き換わって立体的に保存された消化腺であることを示しました。バターフィールドはこの消化腺と腸の内容物から、レアンコイリアが食べていたのは泥ではなく動物質のもので、捕食者か腐肉食者だったと論じました。

2007年には、ガルシア=ベリドとコリンズが、ロイヤル・オンタリオ博物館の1500点を超える標本を調べ直し、頭の盾の下に隠れていた目を確認しました。2012年にはハウグらが、目に短い柄があることから複眼だったと判断し、あわせて体の軸が従来の復元より細いこと、脚の付け根に食べ物を砕くとげがあること、大付属肢の先端が実際にものをつかめる構造であることを示しました。この研究は、レアンコイリアを「活発に獲物を追う、身軽な捕食者」と結論し、腐肉食や泥食いという従来の解釈を否定しています。

目の数については、研究によって数え方が異なります。2007年の研究は左右に2つずつ、計4つの目としました。2012年の研究は、同じ側の2つはつながった1つの目で、左右に1つずつ、それぞれが2つのふくらみに分かれていると解釈しています。ロイヤル・オンタリオ博物館の現在の解説は、短い柄のついた大きな側眼が1対と、きのこ形の小さな中央の目が1対としています。いずれの解釈でも、レアンコイリアに目があったこと、そして捕食者だったことは共通しています。

クモやサソリとの関係

大付属肢は、クモやサソリ、カブトガニなど鋏角類(きょうかくるい)が口の前にもつ「鋏角」と同じ起源の器官だとする説があります。どちらも頭のいちばん前の付属肢で、ものをつかむ形をしているためです。2014年には、中国・澄江のレアンコイリア・イレケブロサの幼生が報告され、鋏角類の系統に連なる約5億2000万年前の幼生として発表されました。

2026年4月には、アメリカ・ユタ州の約5億年前の地層から、はっきりした鋏角をもつ最古の節足動物メガケリケラクスが『ネイチャー』誌で報告されました。この研究の系統解析は、レアンコイリアを含むメガケイラ類を「おそらく」広い意味での鋏角類の系統に含まれるとしています。メガケイラ類をもっと原始的な位置に置く解析もあり、位置づけはまだ確定していません。

出典

Royal Ontario Museum「The Burgess Shale」Leanchoilia superlata

Haug, J.T., Briggs, D.E.G. & Haug, C. (2012) Morphology and function in the Cambrian Burgess Shale megacheiran arthropod Leanchoilia superlata and the application of a descriptive matrix. BMC Evolutionary Biology 12, 162.

García-Bellido, D.C. & Collins, D. (2007) Reassessment of the genus Leanchoilia (Arthropoda, Arachnomorpha) from the Middle Cambrian Burgess Shale, British Columbia, Canada. Palaeontology 50, 693–709.

Bruton, D.L. & Whittington, H.B. (1983) Emeraldella and Leanchoilia, two arthropods from the Burgess Shale, Middle Cambrian, British Columbia. Philosophical Transactions of the Royal Society of London B 300, 553–582.

Butterfield, N.J. (2002) Leanchoilia guts and the interpretation of three-dimensional structures in Burgess Shale-type fossils. Paleobiology 28, 155–171.

Liu, Y. et al. (2014) A 520 million-year-old chelicerate larva. Nature Communications 5, 4440.

Lerosey-Aubril, R. & Ortega-Hernández, J. (2026) A chelicera-bearing arthropod reveals the Cambrian origin of chelicerates. Nature 652, 931–937.

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