【白亜紀の生物】トリケラトプス – 別の恐竜トロサウルスは、年老いた姿なのか

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名前トリケラトプス(Triceratops、「3本の角のある顔」)
分類鳥盤類 角竜類 ケラトプス科 カスモサウルス亜科
時代白亜紀末(マーストリヒチアン後期、約6800万〜6600万年前)
発見地北アメリカ西部(アメリカのモンタナ・ワイオミング・サウスダコタ・ノースダコタ・コロラド各州、カナダのサスカチュワン・アルバータ州)
全長約8〜9m
頭骨の長さフリルを含めて2.5m前後(最大級の標本で約2.6m)
体重推定6〜9t(大型の個体は10tを超えたとする推定もある)

トリケラトプスは、白亜紀のいちばん最後の時代に北アメリカにいた、大型の角竜(つのりゅう)のなかまです。目の上に伸びる2本の長い角、鼻先の短い角、そして後頭部から張り出す骨の襟(えり)状の板「フリル」を持ち、頭だけで小型車ほどの長さがありました。恐竜時代の最後の100万年あまりを代表する草食恐竜で、化石は北アメリカ西部の同じ時代の地層で最も多く見つかる恐竜のひとつです。近縁のトロサウルスが実は年老いたトリケラトプスなのではないか、という説が2010年に出され、いまも決着していません。

姿と暮らし

4本の脚で歩く、がっしりした体つきの恐竜です。前脚は後脚よりやや短く、頭を低く保つ姿勢に向いていました。尾は短めで、ゾウのように太い脚で体を支えています。頭骨は現生・化石を含めた陸上動物のなかでも最大級で、その3分の1ほどをフリルが占めます。フリルは1枚の骨の板で、同じケラトプス科の多くの恐竜に見られる大きな穴(開口部)を持たないのが特徴です。角のうち目の上の2本は長さ1mに達し、鼻先の角はそれより短く太い形をしていました。角の骨の芯(つの芯)の表面には血管の通った跡が残っており、生きていたときにはウシの角と同じように、その上をさらに角質の鞘(さや)が覆って、化石より長く尖っていたと考えられています。

食べていたのは植物です。口の先はオウムのくちばしのように尖った骨でできていて、その奥の歯は、あごの左右それぞれに縦の列が何十本も並び、1列ごとに数本の歯が積み重なった「歯の束」になっていました。使っている歯の下には次の歯が控え、すり減ると順に押し上げられる仕組みで、口の中に控える歯を合わせると数百本に達します。上下の歯はかみ合わせると刃物が交差するように動き、繊維の硬い植物を切り刻むことができました。当時の北アメリカ西部の平野にはすでに広葉樹やヤシが広がり、シダやソテツ、ヌマスギやメタセコイアの林がありました。頭の位置の低さから、地面に近い低木やシダを主に食べていたと見られています。イネ科の草原はまだありません。

暮らしていた土地は、現在のモンタナ州からダコタ両州にかけて広がるヘルクリーク層に代表される、川と森と湿地の低地でした。同じ地層からはティラノサウルス、アンキロサウルス、パキケファロサウルス、エドモントサウルスなどが見つかっています。トリケラトプスの腰の骨にティラノサウルスの歯形が残った標本があり、ティラノサウルスに襲われる側だったことが分かっています。多くの角竜が何十頭分もの骨がまとまった「ボーンベッド」で見つかるのに対し、トリケラトプスは1頭ずつ単独で見つかることが多く、大きな群れを作らなかったとする見方があります。ただし2009年には、モンタナ州で幼体3頭がまとまって埋まっていた例が報告されており、若いうちは小さな群れで暮らしていた可能性が検討されています。

角とフリルの使い方

角とフリルが何のためにあったのかは、長く議論されてきました。肉食恐竜への防御、同じ種の中での争い、相手への見せびらかし(ディスプレイ)、体温の調節など、さまざまな説があります。2009年に発表された研究は、このうち「同じ種の中で角を突き合わせて争った」という説を、けがの跡の分布から検証しました。トリケラトプスと、鼻に大きな角を持ち目の上の角が小さいセントロサウルスの頭骨を比べたところ、鼻・ほお・フリルのうち、目の後ろからフリルの下側を作る鱗状骨(りんじょうこつ)だけに、トリケラトプスの側でけがの跡が有意に多く残っていました。2頭が頭を下げて角を突き合わせたとき、相手の長い目の上の角が当たるのがちょうどこの場所です。この結果は、トリケラトプスが角を武器として使い、フリルがその際の盾になっていたという見方と合っています。見せびらかしの役割を否定するものではなく、現在は「争いにも使い、見せる役割も持っていた」と考えられています。

バイソンと間違われた最初の化石

最初に記載された化石は、コロラド州のデンバー近郊で見つかった、目の上の角の芯2本と頭骨の一部でした。1887年、化石戦争で知られる古生物学者オスニエル・チャールズ・マーシュは、これを新しい時代の大型バイソンの角と判断し、「ビソン・アルティコルニス」と名づけました。恐竜にこれほど長い角を持つものがいるとは考えられていなかったためです。その2年後の1889年、ワイオミング州で見つかった、角のそろった頭骨がマーシュの手元に届きます。彼はこれを新属トリケラトプスとして記載し、デンバーの角も同じなかまだと訂正しました。種の名前「ホリドゥス(horridus、ざらざらした)」は、この頭骨の表面が荒れていたことに由来します。現在では、この荒れた表面は年をとった個体に見られる特徴と分かっています。

トリケラトプスには2種が認められています。ヘルクリーク層の下のほうから出る「トリケラトプス・ホリドゥス」と、上のほうから出る「トリケラトプス・プロルスス」です。2014年に発表された研究は、モンタナ州のヘルクリーク層から採集された50体を超える頭骨を、見つかった高さ(地層の上下)ごとに整理し、下から上へ向かって鼻の角が長く、目の上の角が短く、くちばしが縦に伸びていく変化が連続していることを示しました。ホリドゥスが100万〜200万年ほどのあいだにプロルススへ姿を変えていった、種の枝分かれではなく一直線の変化だった可能性が高いとされています。

トロサウルスは年老いたトリケラトプスなのか

トリケラトプスを記載した2年後の1891年、マーシュは同じワイオミング州の地層から、もう1種類の角竜を記載しました。3本の角の並びはトリケラトプスとよく似ていますが、フリルはより長く平たく、左右に大きな穴が1つずつ開いています。マーシュはこの穴にちなみ、「穴の開いたトカゲ」を意味するトロサウルスと名づけました。トロサウルスの化石はトリケラトプスと同じ地層から出るものの、数は圧倒的に少なく、見つかるのは決まって大きな頭骨ばかりです。100年以上、両者は別の属として扱われてきました。

この扱いに疑問を投げかけたのが、モンタナ州立大学ロッキー博物館のジョン・スカネラとジャック・ホーナーです。2人は2010年、学術誌「ジャーナル・オブ・バーテブレート・パレオントロジー」に、トロサウルスはトリケラトプスの成長の最終段階であるとする論文を発表しました。根拠になったのは、同大学が10年をかけてヘルクリーク層で集めた大量の標本です。集まった化石の4割がトリケラトプスで、頭骨がフットボールほどしかない幼体から小型車ほどの成体まで、あらゆる成長段階がそろっていました。そこからは、トリケラトプスの頭が成長につれて大きく形を変えることが分かっていました。幼体では目の上の角が後ろ向きに曲がり、成長とともにまっすぐになり、成体では前向きに曲がります。フリルの縁に並ぶ三角形の飾りの骨も、はじめは尖っていますが、大人になると平たくなってフリルと一体化します。

スカネラとホーナーは、この変化がさらに先まで続くと考えました。大きなトリケラトプスのフリルには、トロサウルスの穴とちょうど同じ位置に、骨が薄くなっている部分があります。また、トロサウルスの頭骨を顕微鏡で調べると、骨の組織は最大のトリケラトプスよりもさらに組み替えが進んでおり、より年をとった個体であることを示していました。トロサウルスに幼体がまったく見つからないことも、これが独立した種ではなく老齢の姿だからだと説明できます。1905年に記載されたネドケラトプスという、フリルに小さな穴を持つ1体だけの角竜も、2人は穴が開き始めた途中段階のトリケラトプスだと解釈しました。

この研究が報じられると、一般向けの見出しには「トリケラトプスは存在しなかった」という言葉が並びました。実際には逆で、学名の規則では先に付けられた名前が優先されるため、2つが同じ属なら消えるのは1889年のトリケラトプスではなく、1891年のトロサウルスの側です。誤解は広く出回り、研究者が訂正を続けることになりました。

専門家の受け止め方は分かれました。2012年、イェール大学のニコラス・ロングリッチとダニエル・フィールドは、両属の頭骨35体について、頭骨の骨どうしの癒合(ゆごう、つなぎ目がふさがること)の度合いなどから成熟度を判定し、トロサウルスとされる標本の中に成長途中の個体があること、逆にトリケラトプスとされる標本の中に骨の癒合が完了した完全な成体があること、そして両者のあいだの形を持つ中間の標本が見つからないことを挙げて、2属は別物だと反論しました。2013年には、頭骨の形を座標として数学的に比べる手法を使った別のグループが、トロサウルスはフリルの有無にかかわらずトリケラトプスとは形の分布が明確に分かれ、成長にともなう形の変わり方も異なると報告しています。一方、スカネラとホーナーの側も2011年に反論を発表し、ネドケラトプスが途中段階であるとの主張を維持しました。

現在の見方

2020年代に入っても、この問題に決着はついていません。多くの研究者は現在もトロサウルスを独立した属として扱っており、図鑑や博物館の表示でもトロサウルスの名前は残っています。ただし「同じ属である」という説が完全に否定されたわけでもなく、ヘルクリーク層の中でトロサウルスが下のほう(トリケラトプス・ホリドゥスの層)に偏って見つかることから、初期のトリケラトプスの老齢個体だけがトロサウルスの姿になり、後のプロルススは短いフリルのまま大人になったのではないか、という折衷案も提案されています。決め手になるのは、穴が開き始めた途中段階のフリルを持つ、疑いの余地のない標本が見つかるかどうかです。

この論争が残したものは、トロサウルスの運命だけではありません。恐竜は成長の途中で、別の属だと誤認されるほど頭の形を変えることがあり、化石を新種として記載する前に、それが既知の種の子どもや老人ではないかを確かめる必要がある、という考え方が広く共有されるようになりました。パキケファロサウルスの幼体が別属として記載されていた例や、ティラノサウルスの幼体をめぐる「ナノティラヌス」論争も、同じ視点から見直されています。トリケラトプスは、標本の数が桁違いに多いからこそ、この問題を正面から議論できる、数少ない恐竜です。

出典

Scannella, J. B. & Horner, J. R. (2010). Torosaurus Marsh, 1891, is Triceratops Marsh, 1889 (Ceratopsidae: Chasmosaurinae): synonymy through ontogeny. Journal of Vertebrate Paleontology, 30(4), 1157–1168. https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02724634.2010.483632

Longrich, N. R. & Field, D. J. (2012). Torosaurus Is Not Triceratops: Ontogeny in Chasmosaurine Ceratopsids as a Case Study in Dinosaur Taxonomy. PLOS ONE, 7(2), e32623. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0032623

Maiorino, L., Farke, A. A., Kotsakis, T. & Piras, P. (2013). Is Torosaurus Triceratops? Geometric Morphometric Evidence of Late Maastrichtian Ceratopsid Dinosaurs. PLOS ONE, 8(11), e81608. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0081608

Scannella, J. B., Fowler, D. W., Goodwin, M. B. & Horner, J. R. (2014). Evolutionary trends in Triceratops from the Hell Creek Formation, Montana. PNAS, 111(28), 10245–10250. https://doi.org/10.1073/pnas.1313334111

Horner, J. R. & Goodwin, M. B. (2006). Major cranial changes during Triceratops ontogeny. Proceedings of the Royal Society B, 273, 2757–2761. https://doi.org/10.1098/rspb.2006.3643

Farke, A. A., Wolff, E. D. S. & Tanke, D. H. (2009). Evidence of Combat in Triceratops. PLOS ONE, 4(1), e4252. https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0004252

Montana State University / ScienceDaily (2010). Triceratops and Torosaurus were same dinosaur at different stages. https://www.sciencedaily.com/releases/2010/07/100714131244.htm

Melbourne Museum. All about Horridus(トリケラトプス・ホリドゥスの全身骨格標本). https://museumsvictoria.com.au/melbournemuseum/whats-on/triceratops-fate-of-the-dinosaurs/all-about-horridus/

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