「顔にT.レックスの歯が刺さったまま」——エドモントサウルスの頭骨が語る最期

古生物学
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モンタナ州で見つかったカモノハシ竜の頭骨に、折れたティラノサウルスの歯が一本、鼻先にめり込んだまま残っていた。噛んだ側と噛まれた側が同時にわかる化石はめったに見つからない。この一本の歯が、T.レックスがどんなふうに獲物に噛みついたのかを、直接のかたちで残していた。

化石に残された「犯人の歯」

主役はエドモントサウルス(カモノハシ竜=口先が平たいハドロサウルスのなかま)の頭骨で、標本番号は MOR 1627。2005年にモンタナ州東部のヘルクリーク層で掘り出され、いまはボーズマンにあるロッキー博物館(Museum of the Rockies)に収蔵されている。ほぼ完全な形で残っていて、鼻の骨(鼻骨)に、大型肉食恐竜の歯の先端が折れたまま突き刺さっていた。

恐竜の骨に噛み跡が残ることはよくある。ただ、どの肉食恐竜が噛んだのかは、跡だけでは特定しづらいことがほとんどだ。歯そのものが骨に食い込んで残るのは例外的で、この頭骨には刺さった歯のほかにも、多数(最大で23か所ほど)の噛み跡が確認されている。

歯の持ち主の特定

研究チームは、刺さっていた歯の先端を、ヘルクリーク層でこれまで見つかっている肉食恐竜の歯とひとつずつ比べていった。歯の長さや幅、そして縁のギザギザ(鋸歯〈きょし〉)の細かさや形をそろえた基準で測り、どの恐竜のものに一番近いかを絞り込んでいく。

その結果、この歯は中〜大型のティラノサウルス類のもので、なかでもティラノサウルス(T.レックス)に最もよく一致した。歯のカーブや断面の形から、上あごの中ほど〜奥のあたりに生えていた歯だろう、というところまで推定されている。

正面からの噛みつき

歯がどんな角度でどこまで入り込んでいるかは、地元の病院(ボーズマンの医療機関)でCTスキャンにかけて三次元で調べた。すると、歯は前のほうから鼻先に打ち込まれていて、エドモントサウルスと相手が正面から向き合ったときにできた傷であることがわかった。真横や後ろからではなく、顔と顔を突き合わせた格好だ。

もうひとつの手がかりが、傷のまわりに治りかけた形跡がまったくないこと。骨は生きているうちに傷つくと、その周囲に修復のための新しい骨(反応骨)ができる。それが見られないということは、この個体は歯が刺さったのとほぼ同じころに死んだ、ということになる。

想定される攻撃のシナリオ

治った跡がない、という事実は二通りに読める。噛まれたことが死因になった可能性と、すでに死んでいた個体に噛みついた(死体をあさった)可能性だ。研究チームは、大きな獲物を狙う現在の肉食動物の狩りと食べ方を照らし合わせながら、この化石が示す状況を検討した。

頭部への噛みつきは、暴れる大きな獲物を押さえ込んだり、素早くとどめを刺したりするときに、いまの肉食動物でもよく使われる。そこから浮かび上がるのは、あばれるエドモントサウルスを制圧しようとした噛みつき、あるいはとどめの一撃で、そのあと死体を食べた——という場面だ。あくまで一標本から読み取れる「もっとも近いシナリオ」ではあるものの、跡や足跡といった間接証拠ではなく、刺さった歯という直接の物証から、こう踏み込めたところがこの研究の見どころになっている。

解釈上の留意点

面白い化石だけに、話を盛りすぎないよう線を引いておきたい。まず、これは一体ぶんの標本から読み取った行動で、「T.レックスはいつもこう襲っていた」と一般化できるものではない。あくまで「こういう噛みつき方をした一例」だ。

狩りだったのか死体あさりだったのかも、完全には決着していない。噛まれた跡が治っていない以上、生きているところを襲った証拠にも、死んだあとに噛んだ証拠にもなりうる。歯の持ち主についても、ヘルクリーク層の肉食恐竜と比べた結果ティラノサウルスに最も近い、という同定であって、歯の形からの推定である点は押さえておきたい。研究は査読誌 PeerJ に掲載されている。

出典

論文:Wyenberg-Henzler TCA, Scannella JB. (2026) Behavioral implications of an embedded tyrannosaurid tooth and associated tooth marks on an articulated skull of Edmontosaurus from the Hell Creek Formation, Montana. PeerJ 14:e20796.(オープンアクセス。PMCの全文も参照可)

プレス:Montana State University/ScienceDaily This dinosaur fossil captures the final moments of a T. rex attack

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