恐竜は「大きくなりすぎる」と後ろ足で立てなくなっていた

古生物学
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首の長い巨大恐竜、竜脚類(りゅうきゃくるい)。ふだんは4本足で歩く姿でおなじみですが、そのうちの何種かは後ろ足だけで立ち上がれた——という話が、コンピューターを使った解析から出てきました。しかもおもしろいのは、立てるかどうかが体の大きさで変わっていたらしいこと。小柄なうちは楽に立てたのに、成長して巨大になるほど、二本足で立つのが難しくなっていったようなのです。

後ろ足で立つ竜脚類という問い

竜脚類は、ブラキオサウルスやディプロドクスに代表される、長い首と太い四本の脚を持つ植物食恐竜のグループです。多くは体重が数十トンにもなり、地上を歩いた動物としては最大級でした。その巨体を4本の柱のような脚で支えて暮らしていた、というのが基本的なイメージです。

ところが以前から、「彼らは後ろ足だけで立ち上がれたのではないか」という見方がありました。首を高く伸ばして、他の恐竜が届かない高い木の葉を食べるため。あるいは、体を大きく見せて捕食者を追い払うため。理由はいくつも考えられますが、いまは同じ姿勢をとる生きた竜脚類がいないので、骨だけを手がかりに推し量るしかありません。今回の研究は、その姿勢の「無理のなさ」を、力学の計算で確かめようとしたものです。

大腿骨にかかる負荷を計算する

ブラジルの研究チームが使ったのは、有限要素解析(ゆうげんようそかいせき、FEA)という手法です。橋や建物の設計で、どこにどれくらい力がかかって、どこが壊れやすいかを調べるのに使われる計算方法で、対象を細かな要素に分けて一つずつ力のかかり方を求めていきます。これを恐竜の大腿骨(だいたいこつ=ふとももの骨)の3Dモデルにあてはめ、後ろ足で立ったときに骨がどれだけの負荷に耐えるかを見積もりました。

調べたのは、系統も大きさもばらばらな竜脚類7種。体重30トン近くに達する大型のギラファティタンやドレッドノータスから、比較的小柄な種まで幅広くそろえてあります。それぞれについて、体重を支える負荷と、筋肉が生み出す力の2つの面から、二本足で立った状況を計算にかけました。

小さいほうが立ちやすいという結果

出てきた答えははっきりしていました。二足立ちの姿勢で骨にかかる平均的な負荷が最も小さかったのは、南米の2種——アルゼンチンのネウケンサウルスと、ブラジルのウベラバチタンでした。数値でいうと、骨の内部にかかる応力(力の強さ)はネウケンサウルスで1.09、ウベラバチタンで1.20(単位はMPa)。ほかの種はいずれも1.9を超え、大型のギラファティタンにいたっては2.51と、南米の2種のおよそ2倍の負荷がかかっていました。

この2種はどちらも現代のゾウくらいの大きさで、竜脚類としては小柄な部類に入ります。研究チームは、その小さめの体に対して大腿骨ががっしりと頑丈で、しかも筋肉のつき方も立つのに都合がよかったことが、負荷の小ささにつながったとみています。つまり、巨大さでは劣るこの2種のほうが、後ろ足で立つことにかけては向いていた、というわけです。

成長すると立てなくなる

さらに興味深いのは、同じ種でも成長段階で事情が変わりそうな点です。解析に使われたウベラバチタンの標本は、じつはまだ大きくなりきっていない若い個体のものでした。ウベラバチタンは成体になると全長26mに達すると見積もられていて、ブラジルで見つかった恐竜としては最大級です。

若く小柄なうちは楽に立てても、成長して巨体になれば、その分だけ後ろ足にのしかかる負担は増していきます。研究チームは、大人になったウベラバチタンは、ほかの巨大な竜脚類と同じように、後ろ足で立ち続けるのは難しくなっていただろうと考えています。子どものころは立てたのに、大きくなると立ちにくくなる——体が育つほど不利になるというのは、少し意外な逆転です。

立ち上がることの意味

立てる種と立ちにくい種がいた、そして同じ種でも若いうちだけ立てた。この違いは、暮らしぶりの違いにもつながっていたのかもしれません。楽に立ち上がれる個体なら、高い木の葉に口を届かせたり、体を高く持ち上げて相手を威嚇したり、繁殖のときの行動に使ったりと、二足立ちを日々の生活の中で役立てられたはずです。骨の頑丈さという一点の違いが、その恐竜に何ができたのかを左右していた、と考えると、化石から読み取れることの奥行きを感じます。

解釈上の留意点

ひとつ気をつけたいのは、これがあくまで計算モデルによる推定だということです。今回の解析では、関節をおおう軟骨や、太い尾を地面につけて「三脚」のように体を支えるやり方は計算に含めていません。実際の竜脚類は尾を使ってもっと楽に立てた可能性もあり、その分を織り込めば結果は変わりうる、と研究チーム自身が断っています。

また、現生の竜脚類がいない以上、姿勢の復元は「化石の骨からこう推測できる」という範囲の話です。断定ではなく、「立ちやすかったとみられる」「難しくなっていっただろう」という慎重な言い方にとどまるのは、そのためです。それでも、なんとなく想像するしかなかった「恐竜が立ち上がれたか」という問いに、力学の物差しをあてて答えを出そうとした点に、この研究のおもしろさがあります。

出典・もっと知りたい人へ

元論文:Silva Junior et al. (2025) “Standing giants: a digital biomechanical model for bipedal postures in sauropod dinosaurs”, Palaeontology. DOI:10.1111/pala.70019

解説記事:South American long-necked dinosaur could easily stand on two legs, computational study finds(Phys.org)

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