200万年前の南アフリカに大人のホモ・エレクトスがいた。ドリモレンの新しい頭骨片 DNH 127 と、10倍以上多かった隣人パラントロプス

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南アフリカのヨハネスブルグ近郊には「人類のゆりかご」と呼ばれる一帯があり、初期の人類の化石が集中して出ています。その一つ、ドリモレン主採石場は1992年に見つかり、2019年まで発掘が続きましたが、出てきた化石の多くは正式に記載されないまま、ほとんど知られていませんでした。オーストラリアのラ・トローブ大学の Jesse M. Martin らは、そのうち18点を調べて報告しました。中に、約200万年前の大人のホモ・エレクトスの頭骨片が1点含まれています。論文は2026年9月25日に Annals of Human Biology に載り、ラ・トローブ大学が10月7日に発表しました。

子どもの骨だけでは決めきれなかった

ホモ・エレクトスは、長い脚と短い腕を持ち、地上での生活に適応した最初の人類と考えられている種です。研究者のあいだで、私たちと同じホモ属に入ることにおおむね異論がなく、私たちの直接の祖先である可能性が高い種でもあります。

この種がいつ現れたかについて、ドリモレンは重要な場所でした。2020年に、同じ Martin らが約200万年前の頭骨片 DNH 134 をホモ・エレクトスとして記載し、それまでジョージアのドマニシの約180万年前の化石が最古とされていたこの種の出現を、約20万年さかのぼらせたからです。ただし DNH 134 は2〜4歳の子どもの骨でした。大人の姿が分からないため、種の同定には不確かさが残っていました。

今回記載された DNH 127 は、頭骨の底にあたる側頭骨の一部と、それにつながる骨の断片で、右側の3つの骨の一部を残しています。研究グループはこれを大人のホモ・エレクトスとし、約200万年前という年代とあわせて、この種が200万年前の南アフリカにいたことの裏づけが強まったとしています。大人のホモ・エレクトスの化石としては、ドマニシより約20万年古いことになります。

200万年前の南アフリカに大人のホモ・エレクトスがいた。ドリモレンの新しい頭骨片 DNH 127 と、10倍以上多かった隣人パラントロプス

隣人は10倍以上いた

18点のうち、ホモ・エレクトスは DNH 127 の1点だけです。14点は、同じ時代に同じ場所に住んでいた別の人類、パラントロプス・ロブストゥスのものでした。パラントロプスは頑丈な顎と大きな奥歯を持ち、硬くて繊維の多い食べ物をすりつぶして食べていた仲間です。

ドリモレンの約200万年前の化石を、近くのスワルトクランス洞窟から出た約180万年前のパラントロプスと比べると、この20万年のあいだに奥歯はさらに大きくなり、咀嚼に使う筋肉も強くなっていました。同じ時代にホモ・エレクトスは脳を大きくし、奥歯を小さくしていた、つまり正反対の方向に進んでいたことになります。Martin は、ホモ・エレクトスの変化は肉を多く食べるようになったためかもしれないとし、パラントロプスの脳はチンパンジーよりわずかに大きい程度のまま、臼と杵のような巨大な奥歯を発達させたと説明しています。新しい化石の顎には、これまで知られていなかった特徴と、個体ごとのばらつきも見つかりました。

そして数です。Martin によれば、200万年前のドリモレンでは、パラントロプスがホモ・エレクトスを10対1以上で上回っていました。最終的に生き残り、私たちにつながったのはホモ・エレクトスの系統ですが、この時点では、私たちの祖先のほうが「生き残りそうにない少数派」に見えたはずだ、と Martin は話しています。ドリモレンのパラントロプスは独自の亜種として扱う提案がすでにあり、今回の化石はその分類を支えるものでもあります。

200万年前の南アフリカに大人のホモ・エレクトスがいた。ドリモレンの新しい頭骨片 DNH 127 と、10倍以上多かった隣人パラントロプス

「窓」ではなく「針の穴」から見ている

人類の化石はとても少なく、化石どうしの違いが大きすぎて、そのあいだを推測で埋めるしかないのがふつうです。ドリモレンのように同じ場所から多くの化石が出る遺跡は、20万年という短い期間に起きた小さな進化の変化を追える、めずらしい例になります。

ただし今回の化石は小さな断片で、研究グループもホモ・エレクトスとパラントロプスの存在を確かめるにはさらに調査が要ると書いています。Martin は IFLScience の取材で、ホモ・エレクトスの起源をめぐって南アフリカと東アフリカが競ってきたことに触れつつ、最古の化石には祖先的な特徴があるはずなのにまだ見つかっていないので、この種はおそらく別の場所で進化して南アフリカに先に到達したのだろう、と話しています。西アフリカや中央アフリカではほとんど探索が行われておらず、時間の窓はあっても地理的な広がりは「針の穴」から覗いているようなものだ、というのが Martin の言い方です。200万年前の南アフリカに大人のホモ・エレクトスがいたことは固まりつつありますが、その前にどこにいたのかは、まだ空白のままです。

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