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デニソワ人は、2010年にシベリアの洞窟で見つかった指の骨の DNA から存在が分かった古人類です。DNA では現生人類ともネアンデルタール人とも違うと分かったのに、骨格がほとんど無く、どんな顔をしていたのかは長いあいだ想像するしかありませんでした。中国科学院古脊椎動物・古人類研究所の Song Xing、Qiaomei Fu らは、中国北部の許家窯(きょかよう、Xujiayao)で1970年代に見つかった化石群を、古いタンパク質と骨の形の両面から調べ直し、デニソワ人の顔の特徴を一そろい書き出しました。論文は2026年10月21日に Nature に載っています。
名前の付いていた化石
許家窯の化石は、約19.9万〜13.8万年前の地層から、動物の骨や石器と一緒に出てきました。頭骨の破片、歯、あごなど20点がありますが、まとまった頭骨はありません。どの人類のものかは決まらないまま、ホモ・ジュルエンシス(Homo juluensis)という種の名前が付けられていました。
この化石が注目されるようになったのは、ハルビンで見つかっていた保存のよい頭骨が、歯石や骨に残ったタンパク質と DNA の分析でデニソワ人だと分かったことがきっかけです。それまで「デニソワ人の顔」と呼べるものはハルビンの頭骨1点しかなく、1点では個体差なのか種の特徴なのか区別がつきません。許家窯の20点は、その比較相手になりうる数でした。

アミノ酸1か所の違い
チームはまず、20点のうち2点から古いタンパク質を取り出しました。DNA は壊れやすく、温暖な地域の古い化石にはほとんど残りませんが、タンパク質は DNA より長く持ちます。得られたのは、化石に由来する18種類のタンパク質でした。
決め手になったのは、骨のコラーゲンを作る COL1A2 というタンパク質の996番目のアミノ酸です。デニソワ人ではここがアルギニンからリジンに変わっていて、現生人類にもネアンデルタール人にもない、デニソワ人だけの目印として知られています。許家窯の2点のタンパク質の断片には、この変化が繰り返し見つかりました。ハルビンの頭骨をデニソワ人と決めたのも同じ目印です。
クイーンズランド工科大学の古遺伝学者 Sally Wasef は Nature の取材に、DNA のほうが個体について多くの情報を与えるが、タンパク質の分析はその個体が誰と近いかを知るには十分に役に立つ、と話しています。
東アジアの「分類できなかった人類」が一つにまとまる
許家窯がデニソワ人だと分かると、形の比較ができるようになります。チームは許家窯とハルビンの特徴を、同じ時代の東アジアの化石と突き合わせました。遼寧省の金牛山、陝西省の大茘(だいれい)、安徽省の華龍洞の人骨です。いずれも「ホモ・エレクトスでも現生人類でもない」とされながら、分類が決まらないままになっていた化石でした。
結果は、これらがそろって同じ特徴群を共有している、というものでした。論文はこの全体をデニソワ系統に入れています。共通する顔の特徴は、低く平らな頭蓋で側面がほぼ平行であること、後ろへ曲がる巨大な眉の隆起、長方形に近い眼窩(がんか)、平らな頬骨のあたり、口元があまり前に出ないことです。
特徴の由来を見ると、デニソワ人は単純な「中間の人類」ではありません。頭蓋の骨が厚いところはホモ・エレクトス的で、側頭骨の上の縁が強く弓なりになるところは現生人類的です。内耳の構造や後頭部のくぼみは、後期のネアンデルタール人と共通しています。古い特徴と新しい特徴が一つの頭骨の中に同居していて、それがデニソワ人の顔の個性になっています。

広く、多様だった人びと
許家窯はシベリアのデニソワ洞窟から数千 km 離れていますし、華龍洞はさらに南の長江流域です。コペンハーゲン大学の古人類学者 Fabrice Demeter は Nature に対し、デニソワ人が広い範囲に住み、地域ごとに多様だったことを示す証拠がまた増えたと述べ、彼らがどんな姿でどこに住んでいたかを知るうえで大きな前進だと評価しています。このブログでも、デニソワ洞窟の周辺でデニソワ人が何万年も暮らしていた証拠を紹介しています(デニソワ人は、ひとつの洞窟のそばで何万年も暮らしていた)。
タンパク質で読めたのは2点だけで、残りの18点は形の比較で位置づけられています。今回の特徴のリストは、今後見つかる化石を「デニソワ人かどうか」で仕分ける基準として使われることになります。名前だけ付いて置かれていた化石が、顔の形を語り始めたという話です。
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出典
- Song Xing, Zhongyou Wu, Qingfeng Shao et al., Qiaomei Fu, “The proteome of Middle Pleistocene Xujiayao and common Denisovan morphology”, Nature(2026年10月21日):https://doi.org/10.1038/s41586-026-11132-z
- Nature News “This is what the mysterious Denisovans looked like”(2026年10月21日、Rachel Fieldhouse):https://www.nature.com/articles/d41586-026-03360-0


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