この記事には広告(Amazon アソシエイトのリンク)を含みます。
カリフォルニア州の海岸沿いに育つコースト・レッドウッド(セコイア、学名 Sequoia sempervirens)は、高さ100メートルを超える世界でいちばん背の高い木です。その森は、陸上の生態系の中でも面積あたりに蓄えている炭素がとくに多い場所として知られています。この木は、海からの霧と穏やかな気温に恵まれた土地で進化してきました。だから、夏の猛暑がこの木の光合成にどう効くかを調べた研究は、これまでありませんでした。
カリフォルニア大学デービス校の Lily Klinek さんたち7人のチームが、その最初の研究を2026年9月22日に Journal of Geophysical Research: Biogeosciences に発表しました。結論を先に言うと、暑い日のレッドウッドの葉は気温より最大10℃も熱くなっていて、水を十分に与えても、温度が上がるだけで光合成の能力が落ちていました。
霧の森に、37℃を超える日が増えた
レッドウッドが生えるのは、カリフォルニア州の中部から北部の海岸沿いです。夏でも海から霧が流れ込み、気温は穏やかで、葉は霧から水分を受け取ることができます。ところが近年、この地域でも気温の上昇がはっきりしてきて、37℃を超える極端に暑い日が増えています。暑さは霧も追い払うので、水の供給と気温の両方から木を追い込みます。生育地はこの数十年で目に見えて縮んでいます。
チームが調べたのは、州北部メンドシーノ郡のレッドウッドの森です。2年にわたり、月に1回より細かい頻度で葉の生理の状態を測り続けました。測ったのは、葉そのものの温度と、葉がどれだけ効率よく光を使えているかです。光合成の効率は、葉に当てた光のうち、光合成に使われずに熱として捨てられる分の割合などから読み取ることができます。

葉は気温より10℃熱かった
暑い時期の測定で目立ったのは、葉の温度と気温の差です。日が当たる葉は、周囲の空気より一貫して熱く、差は最大で10℃に達していました。木の葉は普通、表面にある気孔という小さな穴から水を蒸発させて自分を冷やしています。その葉が気温より10℃も熱いということは、冷やす仕組みが追いついていない、つまり葉が強いストレスを受けている状態です。
なぜ冷やせなかったのか。考えられるのは、暑くて乾いた空気の中で水を失うのを防ぐために、葉が気孔を閉じたことです。気孔を閉じれば水は守れますが、蒸発による冷却は止まり、同時に光合成の材料である二酸化炭素も取り込めなくなります。夏に葉と気温の差が大きくなった時期には、光を熱として捨てる割合が増え、光合成の効率が下がっていました。ここまでは、乾燥に強い木が暑さに耐えるときに見られる、ある意味で予想どおりの反応です。
気孔を開けていても、光合成は落ちた
この研究の要点は、その先にあります。気孔を閉じたから光合成が落ちた、というだけなら、水さえあれば回復するはずです。それを確かめるため、チームは2024年の生育期に4回、森から枝を持ち帰り、水に挿した状態で温度を段階的に変えながら光合成の能力を測りました。枝をアルミ箔で20分ほど覆って暗くし、それから光を当てて、葉が出せる最大の光合成の速さを見る方法です。
結果は、どの回も同じ形でした。30℃を超えると光合成は落ちていき、しかもそのとき、葉の内部の二酸化炭素の濃度は高いままでした。気孔は開いていて、材料の二酸化炭素は十分にあるのに、光合成が進まない。つまり熱は、気孔を閉じさせて間接的に光合成を妨げるだけでなく、光合成を行う仕組みそのものに直接の上限を課していたのです。Klinek さんは Science News の取材に、30℃から40℃に上がると光合成の速さがおよそ半分に落ちたと話しています。

研究に加わっていない英エクセター大学の生態学者 Lucy Rowland さんも Live Science に、気孔が閉じることだけが光合成の低下の原因ではない、とこの結果を読んでいます。
炭素の貯蔵庫としての先行き
レッドウッドの森が蓄えている炭素の量は、この木が長い年月をかけて光合成で空気中の二酸化炭素を取り込み続けてきた結果です。暑い日に光合成が落ちるなら、気温が上がるほど、この森が炭素を固定する力は弱くなっていきます。論文は、干ばつと猛暑が重なる出来事が強まるにつれて、この象徴的な森の炭素を蓄える能力が下がっていくおそれがあると結んでいます。
ただし、分かっていないことも多く残っています。Klinek さんは、レッドウッドの光合成が止まる温度や、木そのものが枯れる温度の上限はまだ分からないと話しています。今回の調査地は霧の多い北部の森で、より乾いた中部や南部、内陸側の生育地では、同じ暑さがもっと厳しく効く可能性があります。チームはこの結果を、危険にさらされている地域を見つけ、森を守る手立てを考えるための出発点だと位置づけています。研究には米国科学財団とカリフォルニア州森林防火局の資金が入っています。
関連する商品
この記事に関連する本や商品は、Amazon で探せます。
上のリンクから購入されると、このブログに紹介料が入ることがあります。


コメント