【白亜紀の生物】イグアノドン – 鼻の角は親指だった。描き直され続けた初期の恐竜

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【白亜紀の生物】イグアノドン - 鼻の角は親指だった。描き直され続けた初期の恐竜
名前イグアノドン(Iguanodon)。「イグアナの歯」の意味。代表種のイグアノドン・ベルニサルテンシス(Iguanodon bernissartensis)の種小名は、ベルギーの町ベルニサールにちなむ
分類鳥盤類 鳥脚類 イグアノドン類
時代白亜紀前期(イグアノドン・ベルニサルテンシスで約1億2600万〜1億2200万年前)
発見地ベルギー、イギリス、ドイツ、スペイン
全長成体で約9〜11m
体重約8トンとする推定(ベルギー王立自然科学研究所)。推定は研究によって幅がある

イグアノドンは、白亜紀前期のヨーロッパにいた大型の植物食恐竜です。1825年に学名が付けられ、恐竜としてはメガロサウルスに次いで2番目に命名された属にあたります。手の親指が円錐形の大きなスパイクになっていて、この骨は最初、鼻の上に生えた角だと考えられていました。

姿と暮らし

イグアノドンは、太い後ろ脚と、それより短いががっしりした前脚をもつ恐竜です。頭は前後に長く、口先は歯のないくちばしになっていて、その奥の頬には、すり減りながら生え替わる歯がびっしり並んでいました。くちばしで葉や枝をちぎり、奥の歯ですりつぶして食べたと考えられています。最初に見つかった化石はこの歯で、形が現生のイグアナの歯を大きくしたものに似ていたことから、属名が付きました。

手は5本指で、指ごとに形が違います。真ん中の3本は太く短く、先が蹄のようになっていて、地面について体重を支えることができました。親指は、角質のさやに覆われた円錐形のスパイクです。小指はほかの指と向きが違い、物をつかむのに使えたと考えられています。親指のスパイクの使い道は決着しておらず、捕食者やライバルから身を守る武器だったとする説と、葉をしごき取ったり種子を割ったりする道具だったとする説があります。

イグアノドンの姿がくわしく分かっているのは、ベルギーの炭鉱から大量の全身骨格が出ているためです。1878年3月、ベルニサールの炭鉱で、地下322mの坑道を掘っていた鉱夫が骨に行き当たりました。粘土がたまった地層のくぼみから、3年ほどの発掘で約30体の骨格が掘り出され、およそ600個のブロックに分けてブリュッセルへ運ばれました。関節がつながったまま見つかった大型恐竜の全身骨格は、これが最初です。同じ場所からは、一回り小さい別の鳥脚類マンテリサウルスも見つかっています。当時のこのあたりは川や湿地の広がる低地で、イグアノドンはシダや針葉樹の茂る水辺で暮らしていました。

鼻の角が親指になり、カンガルーの姿勢が四つ足に戻るまで

イグアノドンの研究は、イギリスで見つかった数本の歯から始まりました。1822年、サセックス州で化石の歯が見つかります。見つけたのは医師ギデオン・マンテルの妻メアリー・アンだと伝えられていますが、記録によって話は少しずつ違います。フランスの解剖学者ジョルジュ・キュヴィエは、最初は魚の歯ではないかと考え、のちに内部のつくりから、植物を食べる新しい爬虫類の歯かもしれないと述べました。マンテルは1825年、この歯の持ち主をイグアノドンと名付けて報告します。手がかりが歯だけだったため、当時は全長18mを超える動物と見積もられていました。

1834年、ケント州メードストン近くの石灰岩の採石場で、発破で割れた岩の中から、一体分のまとまった骨が見つかりました。採石場の持ち主ウィリアム・ハーディング・ベンステッドが破片をつなぎ合わせ、マンテルはこれをイグアノドンのものと判断しました。この標本には円錐形の骨が1つ含まれていて、マンテルはそれを鼻の上の角と考え、角のある四足の動物としてスケッチを描きました。鼻に角をもつ現生のサイイグアナから着想したとも言われます。

この姿は、1853年にロンドンのクリスタル・パレスの庭園に作られた実物大の恐竜像にも引き継がれました。解剖学者リチャード・オーウェンが監修したイグアノドンの像は、鼻に角をのせ、サイのように四本の脚で立つ重い動物として作られています。

この角が親指だと分かったのは、ベルニサールの骨格が掘り出されてからです。何十体もの骨格で、円錐形の骨はどれも手の先にありました。ところが、ここで復元は別の方向に振れます。ブリュッセルで骨格の組み立てを指揮したルイ・ドロは、背骨のつくりが二足歩行の動物に似ているとして、上体を起こし、尾を地面について立つカンガルーのような姿勢で骨格を組み上げました。最初の1体は1882年に組み上がり、1883年5月に一般に公開されます。この直立した姿は、その後およそ100年、イグアノドンの標準の姿として図鑑や博物館に広まりました。

見直しは1980年に来ました。イギリスの古生物学者デイヴィッド・ノーマンがベルニサールの骨格を調べ直し、イグアノドンは動くとき背骨をほぼ水平に保っていたと結論しました。現在は、主に四本の脚で歩き、ときに後ろ脚だけで走ることもあったという見方が一般的です。ただ、二足でどの程度動いたかについては、今も議論があります。ブリュッセルの骨格は、壊れやすくて組み直せないため、ドロの直立した姿勢のまま展示されています。

名前の土台も入れ替わりました。マンテルが報告した歯にもとづく種イグアノドン・アングリクスは、歯だけでは種を区別できないとして、学名の基準として使えなくなりました。国際動物命名規約委員会は2000年、ベルニサールの全身骨格をもつイグアノドン・ベルニサルテンシスを、イグアノドン属の基準となる種に定めています。イグアノドンという名前は、現在はイギリスの歯ではなく、ベルギーの骨格にもとづいています。

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出典

Mantell, G. A. (1825). Notice on the Iguanodon, a newly discovered fossil reptile, from the sandstone of Tilgate forest, in Sussex. Philosophical Transactions of the Royal Society of London 115, 179–186. https://doi.org/10.1098/rstl.1825.0010

Natural History Museum. The discovery of Iguanodon. https://www.nhm.ac.uk/discover/the-discovery-of-iguanodon.html

Royal Belgian Institute of Natural Sciences. The Bernissart Iguanodons at a glance. https://www.naturalsciences.be/en/discover-join/discover/the-bernissart-iguanodons-at-a-glance

Royal Belgian Institute of Natural Sciences. Iguanodon bernissartensis (IRSNB R51). https://collections.naturalsciences.be/ssh-paleontology/masterpieces/bernissart

Norman, D. B. (1980). On the ornithischian dinosaur Iguanodon bernissartensis from the Lower Cretaceous of Bernissart (Belgium). Mémoires de l’Institut Royal des Sciences Naturelles de Belgique 178, 1–103. https://biblio.naturalsciences.be/rbins-publications/memoirs-of-the-royal-belgian-institute-of-natural-sciences-first-series/178-1980/vol-178-013074p-text.pdf/at_download/file

International Commission on Zoological Nomenclature (2000). Opinion 1947. Iguanodon Mantell, 1825 (Reptilia, Ornithischia): Iguanodon bernissartensis Boulenger in Beneden, 1881 designated as the type species, and a lectotype designated. Bulletin of Zoological Nomenclature 57, 61–62.

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