データセンターの建設に住民が反対する話は、もう珍しくない。電気代が上がる、水を使う、うるさい。理由はだいたいそのどれかだ。ところが今週、米ミシガン州の小さなタウンシップで開かれた説明会は、少し様子が違った。住民が問い詰めていたのは、電気や水の量ではなく、「その計算機で何を計算するのか」だった。
3時間の説明会が終わって、残ったもの
9月9日の夜、ミシガン州イプシランティ・タウンシップ(デトロイトの西、アナーバーの隣)で、ミシガン大学が住民説明会を開いた。議題は、大学がロスアラモス国立研究所と組んで建てようとしている12億ドル規模の高性能計算施設である。大学側は「研究用の計算センター」と呼び、住民側は「データセンター」と呼んでいる。
この会は、もともと住民の怒りをやわらげるために開かれたものだった。テック系メディアの404 Mediaが説明会の映像をもとに伝えたところによると、結果は逆で、3時間かけて不信をいっそう深めて終わっている。大学の教員代表が用意した声明を読み上げるあいだ、会場からは野次と笑い声が飛び続けた。
最後に発言したタウンシップ長のブレンダ・スタンボ氏の言葉が、その夜を要約している。「嘘から始まった」「ロスアラモスが来るというので、家を売って出ていく人がいる。それは事実だ」。
何が建つのか
まず、計画の中身を整理しておく。建設予定地は、タウンシップ東部のテキスタイル・ロード沿い、ヒューロン川に面した144エーカー(約58ヘクタール)の土地で、大学が2025年に買い足したものだ。大学は今年8月11日に、ここを正式に候補地として発表した。
施設の主役はロスアラモス側の連邦施設で、床面積は22万〜24万平方フィート(約2万〜2万2千m²)。その隣に、大学の教員や学生が使う約5万平方フィートの非機密研究棟が併設される。総事業費は12億ドル。ミシガン州は2024年末に、土地整備などの費用として1億ドルの補助金を承認している。
ロスアラモス国立研究所は、第二次大戦中のマンハッタン計画で原子爆弾を開発した研究所として知られ、いまも米エネルギー省の国家核安全保障局(NNSA)のもとで核兵器関連の研究を担っている。同時に、気候、材料、感染症、電力網といった分野の研究もしており、大学との共同研究は以前からあった。
タウンシップの理事会は今年3月、核研究に使われる施設の建設に反対する決議を全会一致で可決している。地元選出の連邦下院議員も、8月の候補地発表のあと、大学は住民の声を聞いていないと批判した。つまり9月9日の説明会は、反対がすでに固まったあとで、大学がようやく住民の前に出てきた場だった。
大きさで答えた大学、用途を問うた住民
説明会で大学側が力を入れたのは、この施設が商業用データセンターとは違う、という点だった。プロジェクトの主任技術者スティーブン・チェッチョ氏は、隣のセイライン・タウンシップで進んでいるOpenAIの「The Barn」(560億ドル、1.4ギガワット)と並べたスライドを示し、今回の計画は「商業データセンターよりはるかに小さい」と説明した。The Barnの20分の1、という比較である。
これに対して、全米各地のデータセンターで働いてきたというアンディという住民が立ち上がった。「The Barnと比べて20分の1だというのは都合がいい。あれは例外的な規模で、普通のデータセンターではない。米国の平均的なデータセンターと比べたら、あなたたちが建てようとしているものは最上位の部類だ」。さらに、どれだけ金をかけた施設でもうるさく、排気があり、発電機がある、住宅や学校の隣に置くものではない、と続けた。
大学側は一晩を通して「データセンター」という言葉を避け、「科学計算センター」と呼んだ。チェッチョ氏は「商業活動ではなく、ロスアラモスも大学も非営利で、科学研究のために使う」と述べている。
だが住民が知りたかったのは、その「科学研究」に何が含まれるかだった。この夜、ロスアラモスの担当者は会場に来ていない。代わりに所長トム・メイソン氏の名前で、住民あての書簡が届けられ、読み上げられた。
書簡はまず、この施設は研究用の計算施設であって軍事施設でも兵器製造施設でもない、プルトニウムや核物質を製造・使用・保管することはない、と強調している。用途の例として挙げられたのは、山火事のモデル化、感染症の追跡、北極海氷の研究、電力網の強化、脳腫瘍手術の改善、創薬などだ。そのうえで、こう書いている。
「ロスアラモスの国家安全保障の使命の一部として、この施設で行われる計算研究の一部は、核の近代化に関係する可能性がある」。既存の核備蓄の安全性・信頼性を、核実験をせずに評価するためのモデリングとシミュレーションであり、兵器の製造や組み立て、試験ではない、というのが研究所の説明である。
電気や水の話なら、数字を出して交渉できる。だが「計算の中身の一部は核兵器に関わる」となると、数字で折り合える種類の問題ではなくなる。会場の反応がそれを示していた。予定地から2マイルほどのところに住み、大学に10年勤めたというジェニファー・バーンサイド氏は、「外部の力が地域に入ってきて、同じルールで動いていない」「私たちはこのデータセンターを望んでいないし、押しつけられるべきでもない」と述べた。ミシガン大学の卒業生でもあるシャリナ・ニコール・ランキン氏の言葉は、そのまま404 Mediaの記事の見出しになった。「ここは私たちの家だ。来てほしくないと、はっきり言った。私たちは、あなたたちを招いていない」。
チェッチョ氏は核兵器についての質問に対し、核兵器のない世界に住みたいと思っている、と前置きしたうえで、国家安全保障を担う機関の一つとしてロスアラモスがあり、その使命に加われることを誇りに思う、と答えている。
次の場が、まだ決まらない
説明会のあとに残ったのは、日程のずれだった。大学は10月1日に2回目の説明会を開くと約束した。一方、タウンシップの顧問弁護士ダグラス・ウィンターズ氏は、それには出ないとして、「9月15日の理事会に来ればいい」と404 Mediaに語っている。住民の前に出てくるのは大学なのか、大学が呼ぶ場に住民が行くのか。その順番をめぐっても、両者はまだ噛み合っていない。
なお、ウィンターズ氏がこの施設を「高価値の標的」と呼んだことについて、ロスアラモスの書簡は、研究所も大学も州も連邦も、そのような分類はしていないと反論している。ウィンターズ氏は「ロスアラモスという名前と12億ドル分の計算機を置いて、標的にならないと言うほうがおかしい」と返した。この点も、平行線のままだ。

データセンターと地域の対立はこれまで、電力・水・騒音・税金という「量」の話として語られてきた。イプシランティ・タウンシップの件が別なのは、対立の芯が「何のための計算か」という「質」の話になっている点だ。大学は規模の小ささで答え、住民は用途を問うた。同じ部屋にいて、違う質問に答えていた。9月15日か、10月1日か。どちらの日にも、この記事の続きが起きるはずだ。
出典:404 Media「‘We Did Not Invite You.’ Citizens Rage at Town Hall Over Proposed Nuclear AI Data Center」(2026年9月11日、Matthew Gault)/ロスアラモス国立研究所「住民への書簡」(ミシガン大学研究部門サイト掲載)/Michigan Advance「University of Michigan selects site for Los Alamos computing center」(2026年8月12日)


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