【第四紀の生物】メタセコイア – 化石として名前が付いたあとで、生きた木が中国の山村で見つかった

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【第四紀の生物】メタセコイア - 化石として名前が付いたあとで、生きた木が中国の山村で見つかった
名前メタセコイア(Metasequoia)。セコイア(Sequoia)に、ギリシャ語で「後の」「変わった」を表す接頭辞メタ(meta-)を付けた名。和名はアケボノスギ
分類裸子植物 針葉樹 ヒノキ科 メタセコイア属。現生はメタセコイア(Metasequoia glyptostroboides)1種だけ
時代白亜紀後期から現在。日本では更新世の前期まで化石が出る
発見地化石は北半球の各地。北極圏のカナダ・アクセルハイバーグ島やエルズミーア島からも出る。日本では各地の新第三系〜第四系(大阪層群など)。野生の木は中国の湖北省利川市・重慶市石柱・湖南省の谷あいにだけ残る
高さ野生の大木で約45m、幹の直径は最大約2.5m。谷によっては高さ50m前後の木がある
葉長さ3〜8cmの小枝に、平たい線形の葉が約50枚、向かい合って並ぶ。小枝そのものも幹から向かい合って出る。秋に赤褐色になり、小枝ごと落ちる
球果長さ最大約2.5cm。木質の鱗片20〜30枚が、向かい合う対を互い違いに重ねて並ぶ
野生の木の数2002〜2003年の調査で5,393本。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「絶滅危惧(EN)」

メタセコイアは、ヒノキ科の落葉する針葉樹です。白亜紀から北半球に広く森をつくり、日本でも更新世の前期まで生えていました。1941年、日本の三木茂がまず化石の植物として名前を付け、その数年後に、中国の山村で同じ仲間の木が生きているのが確認されました。

姿と暮らし

メタセコイアは、まっすぐな幹が空へ伸び、枝が円錐形に広がる高木です。葉は針葉樹としては柔らかく平たく、羽根のように小枝の両側へ並びます。葉も小枝も向かい合ってつくのが、この仲間の見分けどころです。春に明るい緑の葉を出し、秋には赤褐色に色づいて、葉が付いたまま小枝ごと落ちます。針葉樹で冬に葉を落とすものは、カラマツやヌマスギなど少数です。

球果は親指の先ほどの大きさで、柄の先に下向きにぶら下がります。木質の鱗片は、向かい合う2枚の対が、一段ごとに向きを90度変えて重なっています。

野生の木は、中国中部の湖北省・重慶市・湖南省の境に近い、標高750〜1500mほどの谷に残っています。

化石は、白亜紀後期の地層から現れ、新生代の前半には北半球のあちこちに広がりました。カナダの北極圏、北緯80度を超えるエルズミーア島やアクセルハイバーグ島には、約5000万年前の森が残っています。そこではメタセコイアの幹や切り株、葉や球果が、石にならずに立体のまま埋もれ、植物の繊維のセルロースまで残っています。いまは氷と岩の島ですが、当時の北極圏は、メタセコイアが茂るほど暖かかったことになります。5600万年前の急な温暖化の時代の森にも、メタセコイアの巨木が立っていました。

その後、地球が寒冷化と乾燥化に向かうにつれ、メタセコイアの分布は縮んでいきます。日本ではしばらく生き残り、大阪・京都・奈良に広がる大阪層群では、更新世の海成粘土層「Ma2」より下の地層から、葉や球果、種子の化石が出ます。それより上の地層からは出ず、日本のメタセコイアは更新世の前期のうちに姿を消しました。

化石の名前が先で、生きた木はあとから見つかった

メタセコイアの名前は、生きた木ではなく化石に付けられたものです。古植物学者の三木茂(1901〜1974)は、日本各地の新第三紀〜第四紀の粘土や亜炭の地層から植物化石を集めていました。その中に、それまでヌマスギ属(Taxodium)やセコイア属(Sequoia)とされてきた化石とは違うものがありました。葉と小枝が向かい合ってつき、球果の鱗片も向かい合って並んでいたのです。

三木は1941年、この植物を新しい属としてメタセコイアと名付け、化石種の Metasequoia disticha と M. japonica を発表しました。論文は日本の植物学の英文誌『Japanese Journal of Botany』に載りました。このとき、メタセコイアはすでに絶滅した植物と考えられていました。

同じころ、中国では別の出来事が進んでいました。1943年7月、林学者の王戦(ワン・ジャン)が、湖北省の磨刀渓(現在の利川市謀道)という山村で、村人が神木としてまつっていた大きな針葉樹から標本を採りました。王は新種だと考えましたが、どの仲間か決められず、1944年に標本の一つが植物学者の鄭万鈞(チェン・ワンジュン)に渡ります。鄭は1946年に学生の薛紀如(シュエ・ジールー)を送って追加の標本を集め、植物学者の胡先驌(フー・シェンシュー)がそれを三木の化石のメタセコイアと同じ属と見抜きました。胡は1946年12月、メタセコイアが生きていたことを発表し、1948年5月、胡と鄭が現生種 Metasequoia glyptostroboides として記載しました。

この木の発見を1941年とする文献もありますが、2024年に中国の研究者がまとめた発見史では、1941年には標本が採られておらず、最初の標本は1943年の王戦のものとしています。最初に見つかった磨刀渓の木は、2003年の時点で高さ35m、幹の直径2.4m、樹齢は約400年とされています。

生きたメタセコイアの知らせは、すぐに世界へ広がりました。アメリカのハーバード大学アーノルド樹木園の園長エルマー・メリルが1947年に種子集めの資金を送り、1948年1月と2月、湖北省で採られた種子が樹木園に届きます。種子は少なくとも600の小袋に分けられ、世界の植物園や大学に配られました。1990年代に新しい種子が採られるまで、中国の外で育つメタセコイアは、ほぼすべてがこの1948年の種子から育ったものです。

日本には1950年、アメリカから100本の苗木が届きました。三木は「メタセコイア保存会」をつくり、苗木を全国の研究機関や自治体に配り、挿し木で増やした苗をさらに広めました。1954年だけで4,426本を発送しています。いま日本の公園や並木道、学校で見られるメタセコイアの多くは、このとき広まった木の子孫です。一方、中国の野生の木は、2002〜2003年の調査で5,393本と、20年前より約7%減っていました。化石から名前が付いた木は、世界中に植えられながら、ふるさとの谷では絶滅危惧種になっています。

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出典

塚腰実(2016)「メタセコイアの発見と普及―三木 茂博士の発見から75年―」『化石』100, 1–2. 日本古生物学会. https://www.palaeo-soc-japan.jp/publications/100_TsukagoshiFP.pdf

Miki, S. (1941). On the change of flora in Eastern Asia since Tertiary Period (I). The clay or lignite beds flora in Japan with special reference to the Pinus trifolia beds in Central Hondo. Japanese Journal of Botany 11, 237–303.

Hu, H. H. & Cheng, W. C. (1948). On the New Family Metasequoiaceae and on Metasequoia glyptostroboides, a living species of the genus Metasequoia found in Szechuan and Hupeh. Bulletin of the Fan Memorial Institute of Biology, New Series 1, 153–161.

Qian, H., Shao, G. & Liu, Q. (2024). The history of discovering Metasequoia glyptostroboides. Biodiversity Science 32, 24378. https://doi.org/10.17520/biods.2024378

Arnold Arboretum of Harvard University, Expeditions: Metasequoia Collection. https://arboretum.harvard.edu/expeditions/metasequoia-collection

Yang, H. & Leng, Q. (2018). Old Molecules, New Climate: Metasequoia’s Secrets. Arnoldia 76(2). https://arboretum.harvard.edu/stories/old-molecules-new-climate-metasequoias-secrets

Royal Botanic Garden Edinburgh, Threatened Conifers of the World: Metasequoia glyptostroboides. https://threatenedconifers.rbge.org.uk/conifers/metasequoia-glyptostroboides

The Gymnosperm Database: Metasequoia glyptostroboides. https://www.conifers.org/cu/Metasequoia.php

京都府レッドデータブック2015「メタセコイヤ化石産地(深草)」. https://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/geo/db/soi0005.html

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