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ビッグバンから数十万年後、宇宙を満たしていた水素は冷えて中性の原子になり、光を通しにくい霧のような状態が続きました。「暗黒時代」と呼ばれるこの時期は、最初の星や銀河が放つ強い紫外線が水素を再び電離することで終わります。宇宙の再電離と呼ばれる、宇宙が最後に経た大きな相転移です。起きたこと自体は確かですが、どの天体がどれだけ貢献したのか、とくに銀河の中で生まれた電離光がどうやって外へ逃げ出したのかは、まだ決まっていません。ミシガン大学の Cody Carr らは、近くにある6つの小さな銀河を年齢順に並べて、その逃げ道が開いて閉じる様子を追いました。論文は2026年10月15日に Nature Astronomy に載っています。
超新星が通り道を開ける、という通説
水素を電離できるのは、波長912オングストロームより短いライマン連続光と呼ばれる紫外線です。初期宇宙には紫外線で明るい小型の星形成銀河がたくさんあり、そこで生まれる大質量星のライマン連続光だけで宇宙を再電離できた可能性があります。ただし、銀河の中には中性水素も塵もたっぷりあって、電離光はふつう銀河の外へ出る前に吸収されてしまいます。
そこで長く言われてきたのが、超新星の爆発とそれが駆動する銀河風が、銀河のガスに密度の低い通り道を切り開き、電離光がそこから漏れ出す、という筋書きです。もっともらしい話ですが、放射、恒星風、超新星のそれぞれがどの程度効いているのかは、はっきりしていませんでした。

年齢の違う6つの銀河を並べる
研究グループは、再電離期の銀河とよく似た性質を持つ近傍の小型の星形成銀河のうち、ほかの性質はそろっていて、爆発的な星形成が始まってからの年齢だけが違う6つを選びました。遠い初期宇宙の銀河を直接調べる代わりに、近くの似た銀河を時間の順に並べて、一つの銀河の成長を追うように見る、というやり方です。
それぞれの銀河について、中分解能のスペクトルから個々の輝線・吸収線を読み、温度も電離の度合いも異なるガスが混ざった多相の銀河風が立ち上がる様子を直接たどりました。同時に、ライマン連続光がどれだけ銀河の外へ逃げているか、逃げ出し率も測っています。Universe Today によれば、スペクトルはハッブル宇宙望遠鏡によるものです。
逃げ道は早く開いて、超新星が閉じた
結果は、ライマン連続光の逃げ出しが星形成の開始から300万年たたないうちに頂点を迎える、というものでした。この時期の銀河では、強い放射と大質量星の強い恒星風が支配的で、速い銀河風はまだ吹いていません。放射と恒星風が、最も重い星のごく初期の少数の超新星に助けられながら、星間物質の最初の層を押し出し、ガスの塊化と強い電離の効果もあって、塵も中性ガスも少ない低密度の通り道ができます。電離光が逃げるには最適な条件です。
ところが300万年を過ぎた銀河では、話が変わります。より速くて吸収線の幅の広い銀河風が検出され、風の中の塵も増えていました。超新星の数が増えると、爆発は確かに濃い雲を壊して通り道を掘りますが、同時に大量の中性ガスを風に積み込み、塵を作り、風を横方向にも広げます。その結果、電離光を遮る覆いはかえって増え、逃げ出し率は平均して下がっていきました。星形成が始まってから最初のおよそ1,000万年のうちに、超新星が駆動する風が立ち上がり、質量を積み込むことで、逃げ道はふさがれていくと研究グループは結論づけています。
論文の責任著者でジョンズ・ホプキンス大学の Stephan McCandliss は、超新星からのエネルギーの注入が周囲をかき混ぜ、電離光の逃げ出しを抑える中性ガスと塵の覆いを、減らすどころか増やしていたようだと話しています。

最初の300万年が勝負だった
超新星が通り道を開けるという通説は、間違いではないが、時期を限れば、という話になります。助けになったのはごく初期の少数の爆発で、本格的に爆発が続く段階になると、超新星はむしろ逃げ道を閉じる側に回っていました。再電離を担った電離光の多くは、超新星がまだほとんど起きていない、星形成の最初の数百万年のあいだに銀河を出ていたことになります。
この結果は、初期宇宙の銀河をシミュレーションで再現するときに、超新星だけでなく、放射と恒星風による早い段階のフィードバックを組み込む必要があることを示しています。調べたのは近傍の6つの銀河で、初期宇宙の銀河そのものではありません。それでも、年齢順に並べた銀河の中で逃げ道が開いて閉じる順番が見えたことは、宇宙の霧が晴れた仕組みを考えるうえで、超新星の役割を置き直す材料になります。
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出典
- Cody Carr, Renyue Cen, Stephan McCandliss, Jack Ford et al., “Lyman continuum escape during the onset of galactic winds in compact starbursts”, Nature Astronomy(2026年10月15日):https://doi.org/10.1038/s41550-026-02999-z
- プレプリント(査読前の版):arXiv:2510.21197:https://arxiv.org/abs/2510.21197
- Universe Today “Supernova Explosions First Aided, Then Later Impeded, the Epoch of Reionization”(2026年10月22日、Evan Gough):https://www.universetoday.com/articles/supernova-explosions-first-aided-then-later-impeded-the-epoch-of-reionization


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