チョルノービリから飛んだ核燃料の粒は、40年たっても結晶のままだった。髪の毛より細い6粒を2,000方向からX線で回した

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1986年4月、ウクライナのチョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所4号炉の爆発と火災で、炉心の核燃料が細かい粒になって周囲にまき散らされました。「ホットパーティクル」と呼ばれる、強い放射能を持つ微粒子です。あれから40年。粒は風雨にさらされ、土に埋まり、アスファルトの上に残ってきました。その間に、燃料そのものはどう変わったのでしょうか。

ドイツのハノーファー大学とヘルムホルツ・ドレスデン・ロッセンドルフ研究センター(HZDR)のチームが、立入禁止区域で集めた6粒の内部の結晶構造を1粒ずつ調べ、Journal of Hazardous Materials に報告しました。論文は2026年2月に公開され、3月号に収められています。結果を一言でいうと、燃料の結晶は想定よりずっと壊れていませんでした。

髪の毛より細い6粒

調べた粒は6個。大きさは8〜50マイクロメートルで、いちばん大きいものでも髪の毛の太さに届きません。2粒は原子炉から約3キロの町プリピャチのアスファルトから、4粒は約5キロの村コパチの農地の土から見つけたものです。1粒ずつ取り出してタングステンの細い電極の先に載せ、フランス・グルノーブルにある欧州放射光施設(ESRF)へ運びました。

そこで使ったのが、X線回折という方法です。結晶に X 線を当てると、原子の並び方に応じて決まった方向にだけ強く反射が返ってきます。その反射の向きと強さを集めれば、中の原子がどう並んでいるか、つまり結晶の構造が分かります。HZDR の結晶学者 Christoph Hennig さんの説明によると、X 線のビームを髪の毛ほどの太さ、100マイクロメートルまで絞り、粒をビームの中でぐるりと回しながら2,000の角度から測って、反射を取りこぼさないようにしたそうです。

爆発と火災が、粒を3種類に分けていた

6粒は、事故のときに何が起きたかによって3つのグループに分かれていました。ハノーファー大学の物理学者 Tobias Weissenborn さんの分け方では、1つめは化学的にも物理的にも元の核燃料、二酸化ウランにまだよく似ている粒です。2つめは、炉心の熱で燃料が溶けて、燃料を包んでいたジルコニウムの被覆と一部または全部が融け合った粒です。3つめは、中性子の速さを調える黒鉛が10日間燃え続けた火災の中でできた粒で、ウランがさらに酸化して別の化合物に変わっています。

どのグループかで化学組成が違い、組成が違えばその後の崩れ方も違ってくるはずです。ところが X 線回折の結果は、3種類のどれでも、燃料の骨格をなす結晶の格子がほぼ保たれていることを示しました。酸化の進み方には粒ごとに差があって、ほとんど酸化していない粒も2つありましたが、同じコパチの土から出た2粒でも片方は強く酸化し、片方はほとんど手つかずでした。同じ土に40年埋まっていたのに違うということは、酸化が進んだのは埋まっている間の風化ではなく、事故のときの火災の中だった、と研究者たちは読んでいます。

「閉じ込めている」が意味すること

結晶が壊れていないことは、放射性物質の行き先と直接つながります。燃料の中でウランが核分裂してできたセシウムやストロンチウムなどの放射性物質は、結晶の格子の中に収まっています。格子が崩れれば、そこから土や水に溶け出していきます。格子が保たれているなら、溶け出す速さは想定より遅い、ということになります。論文はこの粒を、放射性物質を長く閉じ込め続ける「持続的な貯蔵庫」と表現しています。どの相(結晶の種類)がどれだけあるかが分かったことで、粒が放射性物質を放す速さを見積もる手がかりも得られました。

ただし、それは「安全になった」という意味ではありません。放射性物質はどこへも行っておらず、粒の中に残っています。風や動物や土の動きで舞い上がった粒を吸い込めば、体への害は大きいままです。研究者たちはこの結果が、立入禁止区域の制限を緩める根拠にはならないと断っています。

6粒で言えること、言えないこと

この研究の限界は、研究者自身がはっきり書いています。調べたのは2か所から集めた6粒で、Weissenborn さんの言い方では、粒は1つ1つ違う構造を持っていて、その6粒を調べたにすぎません。汚染された地域全体でどうなっているかを言うには、もっと多くの場所から、もっと多くの粒を、長い時間をかけて調べる必要があります。

仮にいつか平均的な像が描けたとしても、地域の健康リスクについて一般的なことは言えない、とも Weissenborn さんは話しています。粒の崩れ方がおおむねそろっていたとしても、必ず例外があって、より頑丈な粒が後になってから放射性物質を放し始めるからです。チームは次に、事故の残留物の中にある、ウランより重い元素(超ウラン元素)の相を調べる実験に取りかかっています。

40年前の火災の中で姿を決められた粒が、その後の40年ではほとんど変わっていなかった。6粒から読み取れたのは、そういうことです。研究にはドイツ連邦教育研究省の資金が入っています。

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