部屋の明かりで自分を消毒する綿布。2つの色素を重ねて染めた布を病院の12部屋に48時間置いたら、普通の綿より微生物が75%少なかった

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病院の布を、部屋の照明だけで消毒し続ける。そんな綿布を、スペインのバレンシア工科大学(UPV)のチームが作り、実際の病室で試しました。2つの色素を重ねて染めた綿布は、白色光を当てると細菌や真菌、ウイルスを不活性化し、12人の患者の病室に48時間置いたところ、光の当たる場所では普通の綿布より微生物が75%少なくなっていました。論文は2026年8月10日に ACS Applied Materials & Interfaces に掲載され、大学の発表は10月8日です。筆頭著者は Inés Martínez-González さんで、著者は12人、病院側の責任者は Inmaculada Andreu さんです。

光で働く色素を、綿に固定する

光を当てると活性酸素を作り、まわりの微生物を傷める色素があります。光増感色素と呼ばれ、医療の分野では光線力学療法に使われてきました。布に染み込ませれば光で自分を消毒する布になるはずですが、これまでに作られたものは青色光や紫外線といった特別な光が必要で、病院の照明では働きませんでした。

UPV のチームが選んだのは、青い色素のメチレンブルーと、赤い色素のローズベンガルの2つです。片方は陽イオン、もう片方は陰イオンという電気的に反対の性質を持っていて、2つを重ねると吸収する光の波長が広がり、白色光の多くの成分を使えるようになります。問題は、どちらも綿の繊維にそのままでは定着しないことでした。チームは綿の上にキトサン(カニやエビの殻に由来する高分子)の層を挟んで色素を順番に乗せ、シアノグアニジンという化合物で固定する多層の仕上げ加工を組みました。繊維そのものを傷めず、2つの色素がそれぞれ独立に光に応答する状態を保てたそうです。

実験室では、20分から3時間

できた布に白色光を当てると、大腸菌は60分、腸球菌の一種 Enterococcus faecalis は20分で検出できなくなりました。真菌のカンジダは3時間で約6桁(100万分の1)に、アデノウイルスの一種は60分で約6桁減りました。細菌だけでなく真菌とウイルスにも効く「広い守備範囲」が、2つの色素を組み合わせた利点です。

繰り返し洗っても効き目が残ることも確かめています。20回の洗濯のあとでも、抗菌性能の基準値を上回っていました。製造の工程は、繊維業界で普通に使われている仕上げ加工に組み込める形だと、チームは書いています。

病室に48時間置いてみた

この研究の読みどころは、実験室の数字で終わらせず、病院に持ち込んだところです。チームはバレンシアのラ・フェ大学病院で、12人の患者の病室に布を置きました。場所は2か所で、光がよく当たるベッドの手すりと、光の当たりにくいマットレスの上です。それぞれの横には、何も加工していない普通の綿布を比較用に置き、48時間後に付着した微生物を数えました。

光の当たる手すりでは、加工した布に付いた微生物は普通の綿布より75%少なく、グラム陽性菌では77.5%の減少でした。光の当たりにくいマットレスでは、減少は25%にとどまっています。効き目が照明に左右されることを、病室の中で確かめた結果です。病院の布にこの加工を使うなら、光の当たる場所で効く、という使いどころがはっきりしました。

耐性菌を生まない消毒

抗生物質や消毒薬を使い続けると、それに耐える菌が選び出されてきます。光で作る活性酸素は、菌の膜やタンパク質を手当たり次第に酸化するので、特定の標的に効く薬のような形での耐性が生まれにくい、と考えられています。著者らもこの布を「耐性を生まない自己消毒」と位置づけていて、病院の中で微生物が居座り続けるのを減らす一つの手段になる、と見ています。

ただし、確かめられたのは48時間、12部屋での付着数の差です。この布を使うと院内感染が減るのか、患者の予後が変わるのかは、別の試験で調べなければ分かりません。暗い場所では効き目が落ちることも、使い方を決める上で忘れてはいけない点です。それでも、特別な照明を足さずに、今ある病室の明かりで働く布ができたことは、消毒の考え方を少し変えるかもしれません。研究の資金はスペイン科学・イノベーション・大学省、欧州委員会、バレンシア州政府などから出ています。

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