2億6,000万年前、地磁気は100万年に11回も反転していた。中国南部の地層に残る地球史でも最高級の不安定と、同じころの大量絶滅

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地球の磁場の北と南は、ときどき入れ替わります。地磁気の逆転と呼ばれるこの現象は、過去8,300万年のあいだに183回起きていて、平均すると45万年に1回ほどです。この逆転の回数が多い時期と生き物の大量絶滅が重なるのではないか、という考えは古くからあり、証明されないまま消えもせずに残ってきました。中国科学院地質・地球物理研究所の Min Zhang らの研究グループが、約2億6,000万年前の地層から、地球史でも最高級に地磁気が不安定だった時期を見つけ、それが同じころの絶滅と時間的に重なることを報告しました。論文は2026年10月15日に National Science Review に載っています。

岩に残った磁石の向き

地磁気の逆転は、地球の中心にある液体の鉄の流れが乱れることで起きると考えられています。鉄の流れは核とマントルの境目を通る熱の流れに左右されるので、逆転の頻度は地球の深部で何が起きていたかを映す鏡になります。ただし、いつ逆転したか、どれだけの時間をかけて入れ替わったかを岩から読み取るのは簡単ではありません。長く安定した時期と、短いあいだに何度も逆転する時期が入り混じり、一回一回の逆転そのものも乱雑な出来事だからです。

手がかりになるのは、堆積岩や火山岩の中の磁性鉱物です。岩ができるとき、鉱物の粒はそのときの磁場の向きに沿って固まります。地層を下から上へ順に調べれば、磁場の向きが時代とともにどう変わったかの記録が読めます。これを磁気層序と呼びます。

研究グループは、中国南部の鳳山と呼ばれる地層の断面で、375万年分の磁気層序を高い時間分解能で取りました。対象は、ペルム紀の中ごろにあたるグアダルピアン世から、その次のローピンジアン世への移り変わりで、約2億6,250万年前から2億5,875万年前の区間です。この境目では、末グアダルピアン絶滅と呼ばれる生き物の大量死が起きています。

2億6,000万年前、地磁気は100万年に11回も反転していた。中国南部の地層に残る地球史でも最高級の不安定と、同じころの大量絶滅

100万年に11回

結果は極端でした。この375万年の区間には、磁場の向きが一定だった帯が29あり、つまり磁場はそのあいだに何度も向きを変えていました。頻度にすると100万年あたり11回です。平均的な45万年に1回と比べれば5倍ほどで、研究グループは地球の歴史の中でも最も高い部類の記録だとしています。

地磁気の逆転は、核の中の発電機、つまり地球ダイナモが不安定になっていることの表れです。これほど頻繁に向きを変えていたなら、地球の深部でただごとではない何かが起きていたことになります。研究グループは、この不安定さが地球深部のさまざまな過程と結びついていた可能性を挙げ、それが地表の環境と生き物の大きな変化と同じ時期に重なることは興味深い、と書いています。

実際、このころの地球では、ほかにも大きな出来事が重なっています。巨大火成岩岩石区と呼ばれる、現代には例の無い規模の火山活動が起き、大気の組成を変えました。海水面も変動し、超大陸パンゲアが形を変えつつありました。そこに地磁気の極端な不安定が加わり、約2億6,100万年前の末グアダルピアン絶滅が起きています。

磁場が弱まると、何が起きるか

磁場の不安定が生き物にどう届くのか。研究グループが示す筋道はこうです。逆転の前後や逆転が頻発する時期には、地球の磁場が弱まります。磁場は、銀河から降り注ぐ宇宙線や太陽風の粒子を地球からそらす盾の役をしているので、盾が弱まれば上層大気に届く粒子が増えます。それが大気の電離を進め、オゾンの破壊や大気中の酸素の損失を促し、地表に届く紫外線を強めたかもしれない、というものです。

ただし、ここから先は仮説です。研究グループ自身が、時間的な相関はあっても因果関係は証明されていない、と論文の中ではっきり書いています。磁場の不安定は、火山活動などほかの地球規模の要因と合わさって、ペルム紀後期の気候と生物の激変に影響したかもしれない、というのが彼らの言い回しです。

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相関は残り、因果は宿題のまま

地磁気の逆転と絶滅を結びつける考えは、多くの研究者が疑いの目で見てきました。逆転のたびに生き物が大量に死んでいるわけではなく、最近の逆転と絶滅は対応していないからです。今回の研究が示したのも、特定の1回の逆転ではなく、逆転が異常に頻発した数百万年の時期が、絶滅や火山活動と重なるという相関です。

それでも、逆転の頻度という具体的な数字を、絶滅の時期に重ねて置いたことには意味があります。地球の深部で起きたことが、地表の生き物の運命にどこまで関わるのか。この古い問いに答えるには、ほかの地層でも同じ時期の磁気の記録を集め、磁場の弱まりが大気と生き物に与える影響を定量的に見積もる必要があります。今回の結果は、その宿題の輪郭をはっきりさせたものです。

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